「PayPayのネーミングが許せない」…菊地成孔、お金の話題でかなり揉める「新札は値段以上の価値がある!」
サックス奏者、作曲家、文筆家、ラジオDJ、大学講師……と、ジャンルを超えて才能を発揮する菊地成孔氏が、今月から連載「お金についてすべて知ってる人へ」をスタートさせる。これまでも語ってきたように「株」「資産運用」など、まったくと言っていいほど経済行為に関心を寄せていなかった氏だけに、「新札」発行にあたって、“前の前の奥さん”と丁々発止のやり取りがあったようだ。
目次
あらゆる経済行為の中で「株」が一番わからない
今回から<お金>に関する連載を始めることになりました。「みんかぶ」さんは、恐らく(正解を誰からも聞いてないので)「みんなの株式」の略でしょうけれども、僕は61歳にもなって、そもそもお金全般のことが、本当に全く理解できていません。あらゆる経済行為の中で、一番わかっていないのが「株」のことでして、みんかぶ読者の皆さんからしたら、1番の馬鹿が連載を持っているようなものなのですが、1番の馬鹿というのは、落語の与太郎みたいなもんで、そこそこは面白いはずですので、ぜひ楽しんで頂ければ幸いです。
僕がどれぐらい株に疎いかというと、そこそこの触れ込みでマスメディアに紹介され、「ここ最近の新札の中でも、ちょっとは“強め”になるだろうな」と思われていた(株価予想が高かった?)、渋沢&津田&北里トリオ。なーんかもう、新札独特の、あの、ワクワクする感じというか、「これって1000円札だけで、今んとこ1150円ぐらいの価値あるよな。お店で出したり、友達に見せるだけで喜ばれてたし」と思わせるあの力が、びっくりするほど早く簡単に落ちてしまい、もう既に、旧札と新札が混じっていても、何も感じなくなっています。せっかく数字デカく書いたのに逆効果だったねー、驚くべき速さの株価の下落ですよー、これは。
紙幣には「株価」がついているのでは?
そんな僕が以前、新札について前の前の奥さんとしたやり取りがあります。
「前の、例の2000円札のがちょっとは価値あったんじゃないの? 表が紫式部で、裏が琉球というのも斬新。何せ今でもそこそこ喜ばれるんだから、2000円以上の記念切手とか、そういう効果まだまだあるよ。 あーっとつまり、前の2000円札のが、今の1000円札よりも株価が高いと言えるよね? え?え?紙幣に株価って付くのか? いや買えるもんはみんな株価つく気がするな。そしたら、前の2000円札を100枚買うとする。すると1枚に対して、そうだなあ、100円付いたとして10万の配当があるんだから、今すぐ銀行に行って、聖徳太子200枚を2000円札1000枚に換えて貰おう。そうすれば黙ってても10万の儲けだ。あ、手数料がかかるか!まあ、全部で1500円ぐらい?でも9万8500円の儲けだな、あれ〜この計算おかしいな、どっから間違ってる?」
「……最初から最後まで(腕組みをして憮然とする前の前の奥さん)」
「え? 手数料の見込みだけじゃなくて?もっと高いかね?」
「途中で計算が1桁違ってるし(憮然)」
「あちゃー。電卓使えばよかったね、ノートブックに付いてるよね確か」
「紙幣に株価はつかないよ。紙幣と紙幣は交換されるだけで、売買できないし(憮然)」
「ええええ?でも、90年代にロシアに行ったら、地下ルーブルを地上ルーブル使って買ったぞ!マジで!!同じ100ルーブルが地上のは80ルーブルぐらい地下のは150ルーブルぐらい買えるんだから!エリツィンが市場経済導入して、無茶苦茶になったんだよ」
公定歩合をずっと『皇帝撫愛』だと思ってた
「だからそれは無茶苦茶な状態のことでしょ。日本だって終戦直後に軍票が紙屑になったりしたし、ワイマール共和国で、貨幣価値が日単位で10分の1とか50分の1とかに下がったでしょ。あれ確か、地価を元手にした新札を発行して安定させたのよ、細かいこと忘れたけど!」
「それは貨幣価値の問題で、株価の問題じゃないよね」
「うっわー!だから!そっちが最初に『新札の株価』とか変なこと言い出すから!」
「いやでもさ、絶対に、新札には株式市場の高値がついてるよ」
「付いてないよ!そもそも経済法的に!」
「経済法って、独禁法のことじゃないの?」
「本当は詳しいじゃない経済に!」
「いや詳しくない。公定歩合をずっと『皇帝撫愛』だと思ってた」
「それは嘘よ! いくらなんでも!!」
「まあ、嘘っちゃあ嘘だけどさあっ!」
「なんで逆ギレここで!?」