AI株一択にはしない…資産10億超投資家が教えるチャイナ・リスクでも日本株が買われる逆説

日経平均株価は史上最高値圏での推移を続けている。しかし、その足元は盤石とは言い難い。
米国のトランプ政権の動向に加え、急激に悪化した日中関係が市場に暗い影を落としているからだ。地政学的リスクが高まる中、多くの投資家が「次なる一手」に迷いが生じている。
独自の哲学で資産10億円を築いた投資家・株億太郎氏(@KabuokuTaro)は、この緊迫した局面をどう見ているのか。
世間で持て囃される「AIブーム」や「オルカン一辺倒」とは一線を画す、億り人の“真の戦略”に迫った。インタビュー連載全2回の第1回。
目次
AI全盛の今、ノートとペンで勝ちにいく理由
ーー今は「タイパ投資」やAIのアルゴ取引が主流です。そんな中、株億太郎さんはあえて日々の値動きをノートに残したり、毎日300銘柄のチャート確認をしたりしていると伺いました。
これ、一見非効率に見えるかもしれませんが、そこがまさに「勝機」なんですよ。
私の投資哲学の根幹は、焦らずにじっくりと割安な銘柄に賭けることです。市場には「変数(変えられるもの)」と「定数(動かせないもの)」があります。
例えば、昨今の日中関係の悪化や為替の大きな流れは、いち個人投資家がどうこうできるものではありません。
これらは「定数」として受け入れるしかない。一方で、自分がどの銘柄を選び、いつ資金を投じるかという行動は、自分の意思でコントロールできる「変数」です。
多くの投資家は、自分ではどうにもならない相場全体の浮き沈みや国際情勢のヘッドラインニュースに一喜一憂しすぎです。
私は、自分のコントロール下にある「今できること」だけに集中しています。そのために必要なのが、日々の定点観測と、アナログな作業による情報の定着なのです。
機会損失を恐れるほど、実はチャンスを逃してしまう
ーーしかし、市場には何千という銘柄があります。300銘柄のチェックといっても一部に過ぎません。機会損失を恐れて、もっと広範囲に網を張るべきだという意見もありますが。
すべてに対応しようとすること自体が、失敗のもとです。私のマイルールの一つに、「優良な無名株」を狙うというものがあります。
具体的にはPBRが0.3〜0.4倍といった、市場から完全に見過ごされているような銘柄です。これらは知名度が低く、出来高も少ない。ですが、自己資本比率が高く倒産リスクが低い企業であれば、値上がりを気長に待つことができます。
かつて2000年代初頭、ある小売企業の株価が暴落した際、チャート分析と事業内容の精査から「ここが底だ」と直感しました。世間が見向きもしない時に仕込んだ結果、株価は3倍に跳ね上がりました。
重要なのは、市場のノイズに振り回されず、自分の「型」に嵌まる重要ポイントだけを選別すること。柔軟な思考と冷静な判断は、手広さよりも深さから生まれるのです。