「解散から総選挙までの期間、日本株は上昇する」は本当?「高市解散」は日本株最強の買いシグナルか「AIバブルはまだ始まったばかりだ」
本稿で紹介している個別銘柄:ファナック(6954)、安川電機(6506)
高市早苗内閣総理大臣は2026年1月19日に衆議院の解散を宣言した。 政局の流動化は、株式市場においてしばしば「不透明要因(Risk)」として忌避される。しかし、歴史を紐解けば、解散総選挙というイベントは、日本株にとって強力なカタリスト(相場の起爆剤)となり得ることが知られている。
では、この政治的な大波を、投資家はいかに乗りこなすべきか。
今回は、企業のファンダメンタルズ分析だけでなく、マクロ経済統計を駆使した“ミスプライシングの発掘”に定評のある、fundnoteのファンドマネージャー・神谷悠介氏に話を聞いた。
2026年の日本株市場を見通す上で、避けては通れない三つの巨大なテーマが存在する。 一つは、政治的な転換点となる「解散総選挙」。二つ目は、現在の株高を支える「AI相場の持続性」。そして三つ目が、デジタル空間から現実世界へと進出するAIの第2フェーズ、「フィジカルAI(ロボット)」である。
一見するとマクロ(政治・市況)とミクロ(技術テーマ)という無関係な事象に見えるが、神谷氏の視点を通し、「データ」を用いて深掘りすると、そこには明確な勝ち筋が浮かび上がる。今回は、政治と市場環境という「風」と、企業業績という「船」の双方をデータで読み解く、プロの投資戦略を紐解いていく。
目次
「解散総選挙」のアノマリーと外国人投資家の心理
まず、市場の関心事は、高市解散の行方とその後の株価推移にある。 一般的に、不透明さを嫌う株式市場において選挙はリスク要因と捉えられがちだが、過去の時系列データを紐解くと、全く逆の景色が見えてくる。
「解散から総選挙までの期間、日本株は上昇する」
これは日本株市場における、極めて確度の高いアノマリー(経験則)である。
例えば、2005年の「小泉郵政解散」では構造改革への期待から、解散(8月8日)から総選挙(9月11日)までの間に日経平均株価は約7.9%上昇した。また、2012年の「第2次安倍政権誕生」時も、解散から総選挙までの期間に株価は10.3%上昇し、その後長期的な上昇トレンドを形成した。
神谷氏は、今回の局面を次のように分析する。
「今回の高市さんの解散シナリオは、過去の例で言うと『小泉郵政解散』や『第2次安倍政権』の時の雰囲気に近いと考えています。前者では『郵政民営化』、『構造改革』を旗印に自民党内での郵政民営化反対派との対立構造を作ることで、政権基盤を強固なものとしました。また後者では、岸田、石破政権下で総債務の水準をターゲットに置き、石破・前首相からは「日本の財政状況はギリシャよりもよろしくない」との発言がなされるなど、財政規律重視の緊縮財政的運営がなされていましたが、高市政権では純債務対GDP比をターゲットに『責任ある積極財政』を掲げています」
神谷氏の分析によれば、解散から投開票日までの期間は、過去の例(+7〜10%)の半分程度の日経平均の上昇が見込まれる。そして何より重要なのは、選挙で勝利した後の展開だ。
「選挙後の半年間は、過去2回と同様に堅調な地合いが続くと想定します。小泉政権や第2次安倍政権の時と同様に、解散総選挙により政権基盤が強固になることが株価上昇につながると考えます。小泉郵政解散後の構造改革や、第二次安倍政権時の金融緩和、財政出動、成長戦略により株価と相関が高いGDPが引き上がるのではないかとの期待が醸成され、海外投資家の本腰を入れた買いが続くことが想定されます。現在の株価は、自民党の単独過半数は織り込んでいても、それ以上の議席獲得(260議席以上)や、その後の持続的な財政拡張政策まではまだ織り込んでいない可能性があります」
政治ニュースで「解散」の二文字が躍った時、それは「売り」ではなく、強力な「買い」シグナルである蓋然性が高いのである。
AIバブルは崩壊するのか? データが示す「まだ2合目」の真実
政治的な追い風に加え、もう一つ投資家が懸念しているのが「AIバブルの崩壊」である。NASDAQ100を中心にハイテク株は高騰を続けてきたが、そろそろ天井ではないかという警戒感も根強い。 しかし、神谷氏が提示したデータは、市場の常識を覆すものであった。
「よく『AIはバブルの可能性がある』と言われますが、過去のITバブル(ドットコムバブル)と比較すると、面白いことが分かります。NASDAQ100で、Windows 95が発売された1995年を起点としたチャートと、ChatGPTがリリースされた2022年を起点とした現在の動きを重ね合わせると、実はほぼ同じ軌道を描いているんです。」
当時のITバブルが弾けるまで株価は何倍にも膨れ上がったが、現在のAI相場はどうだろうか。

「ITバブルの時は、最終的に株価が8倍になりましたが、今のAI相場は起点から見てまだ2倍になったに過ぎません。過去のサイクルと照らし合わせると、まだ入口に入ったばかりでここからが本番と言えます。面白いことに、例えば2025年4月のトランプ関税ショックによる株価下落もこのチャートからは示唆されていたように見え、また25年11月上旬からの調整も示唆していたように見えます。これを基にすると、1月下旬あたりから再度上昇トレンドに入り、5月中旬くらいまでは持続的な上昇が続くと示唆されています。ちょうど企業の決算発表時期になり、AI関連の足元の状況を確認できるタイミングになることも注目されます」
つまり、マクロ環境としては「政治的な財政拡張期待」と「AI相場の持続的上昇」という二つの強力なエンジンが、2026年前半の日本株を押し上げる構図となっているのだ。