日本人の投資下手には理由があった!「貯金信仰」が生まれた3つの理由

日経平均株価が最高値を更新しても、「それでもやっぱり株は怖い」と考えてしまう日本人は少なくない。外資系金融機関勤務を経て、現在は会員制オンラインコミュニティ「Holland Village Members’ Club」を主宰する河村真木子氏が、日本人の奥底に潜む「貯金信仰」について解説する。全3回中の1回目。
※本稿は河村真木子著『自由にあきらめずに生きる 外資系金融ママがわが子へ伝えたい 人生とお金の本質』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から抜粋・再構成したものです。
第2回:大事なのは「自分のために生きること」しなくてもいい我慢はしなくてもいい
第3回:グローバル時代を生き抜くための金融リテラシーとは?バリキャリママが伝える「お金を増やすために大切なこと」とは
目次
貯金信仰が生まれてしまった3つの理由
「地道に貯金するのが一番」
「株は危ない」
「投資はギャンブルと同じ」
「不動産投資?ありえない」
「家は一生に一度、ローンで買うもの」
日本では長らく、こう教えられてきました。
貯金信仰が生まれたのには、お金をもらっても無駄遣いをせず、「ひたすら真面目に貯める」というのが正しいとされていた「貯金箱の呪い」以外にちゃんとした理由が3つあって、それは日本経済の歴史とリンクしています。
【理由1】貯金が正しい時代もあった
まず、1つ目の理由は、「貯金が正しい時代もあった」です。
高度経済成長からバブル崩壊までの時代は、 本当にお金は「貯めておけば増えた」のです。それを示すために、「金利の歴史」を振り返ってみましょう。
私が生まれた1970年代だと、郵便局(現ゆうちょ銀行)の定額貯金の金利は7〜8%でした。この数字は、ざっくり言えば、「100万円を10年預けておくと200万円近くなる」のです。70年代から80年代まではこんな時代が続いたのです。
これなら「貯金が一番」と信じ込むのも無理はないでしょう。ところが 90 年代初めにバブルが崩壊すると徐々に金利は下がり、 90 年代半ばには4%前後に。半分に下がってしまいます。
それでも「100万円を10 年預けておくと150万円弱」ですから、「ありえないほどひどい数字」というほどではありません。ひどい数字が現実になるのは、2000年代以降です。
低金利時代となり、金利0.5%がほぼ定着。10 年貯金しても105万円ほどにしかならない。そして今や、金利は0.2%(2025年11月現在)です。実際にはここから税金が引かれますから、銀行に預けてもお金はほぼ増えません。
貯金の金利は正真正銘の「ありえないほどひどい数字」になったというわけです。ATMの手数料がわずかな利息を上回っている、という人もいるでしょう。今後は海外のように、銀行口座を持っているだけで「口座維持費」という手数料が生じる可能性もあり、 そうなれば「貯金しているだけでお金は減る」という時代に突入します。
【理由2】バブルのトラウマ
貯金信仰が生まれた2つ目の理由は、1990年代初頭に起きた「バブル崩壊」です。
バブル崩壊とは、「投資の崩壊」でもあります。日経平均株価は、 80年代後半に急上昇し、1989年12月に3万8915円の史上最高値になります(当時)。不動産価格もぐんぐん上がって、「土地の値段は必ず値上がりする。絶対に下がらない」といったような「土地神話」が信じられていました。
ところがバブル崩壊で急激に株価と不動産価格が下がります。「ゴージャスな生活を送っていたのに、天国から地獄へ」という人も続出したのです。
もちろん今も株価は上下しますが、バブルほどの急落はありません。最高値をつけてから3年弱の1992年8月には、1万4309円をつけ、半分以下にまで下がったのです。まさにガラガラと崩壊。
さらにそこからも下がり続け、2003年には日経平均が7600円台まで下落したのです。これがトラウマになって、「投資はギャンブル」「やれば損をする」「損どころか破産だ!」というお金の感覚が、社会全体に染みついてしまいました。
【理由3】30 年続いたデフレ
貯金信仰が生まれた3つ目の理由は、「デフレ」です。
バブル崩壊から30年、日本は長期間のデフレ経済に苦しんできました。「デフレ(Deflation:物価下落)」とは、簡単に言うと、不況でモノやサービスの需要が供給を下回り、物価が下がること」 です。
もしも子どもに教えるなら、「景気が悪くて、何かを買う人やお出かけをする人が減る。企業は商品が売れないしお客さんも来ないので値下げをして、なんでも安くなる」という感じになるでしょうか。
物価はずっと安いまま、それどころか「待っていれば値下がりする」というのが当たり前になりました。
デフレのわかりやすい例の一つは、マクドナルドです。 私もたまに「身体に悪いよね」とわかりつつ、朝マックのソーセージエッグマフィンを食べてみて、「えっ、おいしい」と思わず唸ることがあります。
そんなマックが日本にやってきたのは1971年。1号店ができたのは銀座で、当時のハンバーガーの値段は80円でした。それがバブル期に210円になったのは、物価上昇に伴う自然な値上げと言っていいでしょう。
ところがデフレ経済になると一気に値段が下がり、2002年には59円にまで値下げしたことも。30年前より値段が安いというのは異様なことですが、2010年代も「100円マック」で知られるように同じような状況でした。
ダイソー、セリアなどの100円ショップが増えたのも、この頃。
「モノはなんでも安いし、待っていれば値下がりする」 そういう感覚が定着すれば、人はあまりお金を使いません。1万円で買えるものが、少し待てばセールで7000円になるなら、「ちょっと待とう」となるものです。
バブルでトラウマになっている「よくわからなくて危なそうな投資」をするより、「とりあえず貯金」という気持ちになる人が増えたのはそのためでしょう。貯金もデフレ下では目減りしません。賃金も上がらないので、将来への不安から「コツコツ貯金が一番」と考える人もいたと思います。
デフレによるモノの安さは私たちにとってありがたいことかといえば、そうでもありません。企業が安いモノを作れた秘密は、人件費を削ったから——つまり、給料をまったく上げず、人件費を抑えて抑えて抑えまくっていたからです。
収入が低く抑えられた結果、会社からあまりお給料をもらえない人が、そのせいで激安になっているモノを買って、「お金がなくても、安くてそこそこいいモノが買えるから幸せ」という時代でした。 ある意味、とてもせつなくて、ある意味、とてものんびりしていたのがデフレ経済の時代です。
-697x1024.jpg)