日経平均5万9000円からの大急落。プロが紐解く「日韓モメンタム逆回転」の深層と、次なる勝ち筋を捉える注目セクター
2026年2月。衆院選での与党の歴史的大勝を受け、日経平均株価は一時5万9000円の大台に到達した。日本株の新たな次元への突入に市場が歓喜したのも束の間、わずか3日間で4000円超もの急落を記録。高値から最大5000円幅に迫るこの暴落劇に、多くの個人投資家の間で動揺が広がっている。(2026年3月4日取材時点)
この不条理にも映るボラティリティ(価格変動)の裏で、グローバルな資金フローに何が起きているのか。国内グロース・IPO株のスペシャリストであり、独自のファンダメンタルズ分析で市場のミスプライシングを突くfundnoteのファンドマネージャー・川合直也氏に、足元のマクロ環境と急落相場での投資戦略について話を聞いた。 (取材・文/ちょる子)
みんかぶプレミアム連載「fundnote 川合・神谷の目」
目次
選挙後の大型株優位と、突如訪れた「戦争相場」への転換
2026年2月の衆院選通過後の日本市場は、川合氏の読み通り「大型株優位」の展開となった。個人投資家が好む中小型株が蚊帳の外に置かれる中、日経平均を牽引するAI・半導体・電線・エネルギー・防衛といった主力株に資金が集中する相場が続いたのだ。
川合氏は激動の2月相場をこう振り返る。
「政局が安定し、新たな政策テーマが立ち上がる局面では、必然的に大型株が選好されます。外国人投資家が日本株全体のウェイトを引き上げる際、資金の受け皿となるのは流動性の高い大型株だからです。このタイミングでIPOなどの小型株に固執していると、パフォーマンス面で大きく劣後してしまいます。そのため、私のファンドでも大型株の組み入れ比率を引き上げ、選挙相場にポジションを調整させていました」
しかし、その大型株主導の熱狂は、中東情勢の緊迫化に伴う「戦争相場」への突入によって突如として冷や水を浴びせられることとなる。
2月末(2月27日)の時点では、イランやイスラエルからの退避報道が出始めたものの、株式市場は静観姿勢を保ち、週明けの月曜日(3月2日)も底堅く推移していた。ところが、火曜日(3月3日)・水曜日(3月4日)になって、連日約2000円もの下落幅を記録するパニック的な売りが市場を席巻したのである。
急落のトリガーは「韓国休場」と「グローバルAIマネーの逆流」
なぜ悪材料が表面化した直後ではなく、火曜日から一気に相場が崩れたのか。川合氏はその謎を解く最大の鍵が「韓国市場の動向」にあると指摘する。
「実は、月曜日(3月2日)は韓国市場が休場でした。その休場期間に行き場を失っていた2日分の『売りマグマ』が、火曜日・水曜日の日本株にも一気に噴出した形です。当時の1分足チャートを観察していても、韓国市場が完全に先行指標として機能していました。韓国が少し反発すれば日本も同水準で反発するという、極めて強烈な連動性を見せていたのです。結果として、韓国は一時12%安まで急落し、サーキットブレーカーが発動するほどのパニック状態に陥りました」
この背景にあるのは、AI・半導体テーマに乗って韓国市場へ大量に流入していた「モメンタムマネー(トレンドに順張りするグローバル資金)」の逆回転だ。
SNS等で「モメンタムチンパン(ファンダメンタルズを度外視して強いトレンドに乗る投資手法)」と揶揄されるほどの熱狂を生んでいたこの資金フロー。韓国株はAIの恩恵を強く享受する市場として、年初来で一時+45%という驚異的なパフォーマンスを叩き出していた。
しかし、地政学リスクの顕在化を契機に、多額の含み益を抱えていた資金が一斉にリスクオフへと転じたのである。日本市場もその巨大な波に呑み込まれ、アジア全域でモメンタムの強烈な逆流が発生したというのが川合氏の分析だ。
信用ロスカットが招いた「全面安」の罠と、プロが見出す次なる勝機
本来、地政学リスクが高まる「戦争相場」においては、防衛株やエネルギー関連株へ資金が逃避するのがセオリーである。しかし今回の急落局面ではそのセオリーが全く機能せず、テーマの如何を問わずあらゆる銘柄が無差別に売り叩かれた。
「グローバル資金が逆流する過程で、個人投資家による信用のロスカット(強制決済)や、証拠金維持率を回復させるための換金売りが連鎖しました。その結果、本来であれば買われるべき防衛やエネルギーセクターまでもが巻き込まれ、ファンダメンタルズを度外視して市場全体が叩き売られる異常事態となったのです」
では、この局面で投資家はどう立ち回るべきか。川合氏は、NVIDIA決算の前後に半導体関連の利益を的確に確定させていた一方で、「防衛・造船」や「エネルギー」セクターは強気で注目をしているという。
「AIを稼働させるために莫大な電力インフラが必要になるというテーマや、宇宙・防衛・造船予算を拡充するという国策は、足元の株価が下落したところで何ら揺らぐものではありません。むしろ戦争リスクが高まったことで、国内のエネルギー自給率向上といった潜在的ニーズはさらに高まり、投資テーマとしての強靭さは増しているはずです。パニック的な信用整理が一巡すれば、ファンダメンタルズが毀損していないこれらのセクターが、最も力強いリバウンド(自律反発)を見せると予想しています」