「元手ゼロから純資産4億円」を築いた投資家が語る、S&P500・オルカン一辺倒への警鐘と資産防衛戦略
新NISAの普及により、S&P500やオール・カントリーといったインデックス投資が多くの人の資産形成のベースとなりつつある。一方で、刻一刻と変化する世界情勢や先の見えない経済状況を前に、既存の枠組みに捉われない新たな資産防衛の形を模索する動きも出始めている。
20代で元手ゼロから純資産4億円を築き上げ、現在はドバイを拠点に活動する個人投資家の宮脇さき氏も、時代の変化に合わせた柔軟なマネー戦略の重要性を説く一人だ。幅広いアセットを扱う同氏は、独自の思考法によって着実に資産を築いてきた。
本稿では、宮脇氏の実体験と知見をもとに、インデックス投資の次のステップとなる「バーベル戦略」から、意思に頼らず資産を増やす「環境ハック術」、ストックを重視する「BS思考」、そして最大の資本である「自己投資」まで、これからの時代を生き抜くための資産形成のヒントをわたって紐解いていく。全4回の第1回。
みんかぶプレミアム連載「富裕層たちの黄金法則」
目次
インデックス投資一本でFIREという幻想。S&P500への「思考停止」が招く暴落リスク
最近の投資トレンドを見ると、貯金よりもS&P500やオルカン(オール・カントリー)が優れているという話があふれています。たしかに過去10年間を振り返れば、米国株を中心としたインデックス運用は正解だったといえるでしょう。
しかし、株価の割安、割高を示す指標であるシラーPERで見ると、現在の米国株は歴史的平均の16~17倍を大幅に上回る約40倍に達しています。これは1929年の世界恐慌や1999年のドットコムバブル崩壊直前に匹敵する水準です。過去にはバブル崩壊後、株価が元の水準に戻るまで25年を要した事例もあり、リタイア直前に暴落が起きれば老後計画は根底から崩れます。
加えて、インデックス投資には時間効率の低さという弱点があります。資産を築くまでに30~40年という長い年月を要するため、その間に物価が上昇するインフレに成長速度が追いつかない懸念も否定できません。また、過去10年のS&P500の成長は主にGAFAMの5社に支えられており、これらを除いた「S&P495」のパフォーマンスは日本のTOPIXと大差ないのが実態です。
たしかに、数十年という超長期のスパンで見ればインデックス投資は合理的な選択かもしれません。しかし、統計上の正解が個人の人生の正解とは限らないことを肝に銘じておくべきです。実際、一代で財を成した富裕層の中に、インデックス投資だけで資産を築いた人はほとんどいません。誰もが推奨する手法に思考停止で依存することは、予期せぬ大きな損失を招くリスクを孕んでいるのです。
壊れゆく世界秩序とレイ・ダリオ氏の警告
著名な投資家であるレイ・ダリオ氏も、世界秩序が歴史的な大サイクルの最終段階である「破壊のフェーズ」に入ったと警鐘を鳴らしています。歴史的に覇権国家は約100年周期で交代しており、現在のアメリカは衰退期にあたる第6段階に入ったと考えられているからです。
2026年の国際会議でも「破壊のもとで」というテーマが掲げられ、1945年以来の自由貿易や民主主義といったルールが修復不可能なレベルで壊れつつあると議論されました。さらに2026年のグローバルリスク報告書では、地経学的対立が2026年の最大リスクに挙げられ、国家間武力衝突も上位に入っています。
世界はもはや、覇権争いのサイクルへとシフトしました。このようなフェーズでは、政府が借金返済のために紙幣を増刷し続け、意図的に法定通貨の価値を下げることで、実質的に国民に負担を強いる構造が生まれかねません。いま私たちは、「まったく異なる概念への地図の書き換え」という歴史的転換点に立たされていると認識すべきです。
こうした通貨価値の下落や地政学的な不安が進むなかで、皮肉にも市場には行き場を失った資金があふれ、それが現在の株価を押し上げる一因となっています。つまり、今の株価上昇は実体経済の成長によるものではなく、法定通貨への不信感から逃避したマネーが、将来への期待だけで過度な膨張を続けている側面が否定できません。
もしこれから投資によって大きなリターンを望むのであれば、どこかで必ず適切なリスクを取らなければなりません。この1、2年で資産を数倍に増やした富裕層は、インデックス投資をあくまで保険や年金代わりと割り切り、それとは別にリスクを取った積極的な投資を行っています。資本主義の構造上、全員がお金持ちになることは不可能です。リスクを取っている富裕層がさらに豊かになる一方で、ただ平均的なリターンを待つだけの層は、時代の変化に飲み込まれてしまう可能性が高いのです。