ガーシー「陳謝受け入れ」で暴発するNHK党の重大局面「元モー娘。矢口真里へ、出馬を打診」
選挙公約通りとして、議会からの再三の要請に応じず登院拒否を続けるガーシー参議院議員。鈴木宗男議員との対決によってさらに世間の関心を集めているが、彼を生み出したNHK党の党首・立花孝志氏は、いったい、今回の騒動をどのように捉え、今後、どう動いていこうとしているのか。
ガーシー騒動は岸田首相にとっては「恵みの雨」
ガーシー(本名・東谷義和)参議院議員が国会欠席を続けており、日本中の大きな関心を呼んでいる。
この大騒動で、もっとも得をしたのは、岸田文雄首相だ。選挙後に突然突っ走りはじめた自身の増税を巡る発言と、自身の判断で採用した長男・岸田翔太郎氏の国費による観光地巡りについて、政権支持率はダラダラと下がり続けていた。しかし、ガーシー氏に国民の関心が集まるにつれ、内閣支持率は下げ止まり、微増傾向になったようだ。
読売新聞社が2月17~19日に実施した世論調査では、内閣支持率は41%となり、前回(1月13~15日調査)の39%から2ポイント上昇、4カ月ぶりに4割台を回復した。不支持率は前回と変わらず47%だった。
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が2月18、19日に実施した世論調査では、前回調査(1月21、22日)から2.9ポイント増の40.6%で、不支持率は前回比5.5ポイント減の52.6%となった。
政権としては、岸田首相の強い思い入れのある増税と長男・翔太郎氏について、注目が集まると支持率が下がることが明白な以上、このまま統一選挙まで極力何も発信をせず、ガーシー氏が暴れまわってくれるのを待つという戦略が採用されることになる。防衛費増税、異次元の少子化対策が、対策の中身そのものでなく、財源に焦点が当てられているというのも岸田首相にとっては大きな誤算であっただろう。「増税をすると将来に安心した国民が消費を増やし、経済成長をつくる」というのが、岸田首相の持論である。選挙では黙っていたこの問題について、岸田首相の思い入れが特に強いことがこの半年で確認されたが、そのことは隠し通せない以上、ガーシー氏の騒動は、「恵みの雨」といったところだろう。
「NHKをぶっ壊すという目的は達成された」と立花孝志党首
ガーシー氏をめぐる騒動では、NHK党、そしてNHK党を率いる立花孝志党首にとっても正念場を迎えている。
NHKの元職員である立花氏は、NHKをぶっ壊すことを掲げて、NHK党の党勢拡大を目論んできた。みんかぶが実施した立花氏へのインタビュー(2022年11月18日)では『もう「NHKの被害から国民をお守りする」「NHKの被害をなくす」という目的は、実質的には実現済みということ』と述べている。
その根拠として、公約に掲げた「受信料を支払った人だけがNHKを視聴できるスクランブル放送の実現」は、国会で、NHK党以外で、NHKのスクランブル化に賛成する政党がいないものの「受信料を払いたくない人は受信料を払わなくてもいい」という状態は実現できたためとしている。NHK党に相談すれば、NHK受信料の支払いを拒否することで起きる問題への対応をすべて代行してくれるという。具体的には、「NHKからの受信料請求書受け取り代行」「NHKとの裁判代行」「NHKへの受信料の支払い」をNHK党がやってくれる。
となればNHK党は今、立党の理念が達成され、存続の危機に立たされているといっていい。立花氏は、先のみんかぶのインタビューで、NHKがスマホを持っている人から受信料を徴収しようとしているのを阻止するために、NHK党は解党しないとしている。しかし、立花氏のインタビューを読んでも、統一地方選挙や次の衆院選挙への戦略には、「政治の世界に女性を入れる」「若い世代を入れる」という目的が強調される一方で、NHKをぶっ壊すという主張が触れられていない。
元モー娘や人気YouTuber擁立も…「衆愚の極み」か、なりふり構わぬNHK党
統一地方選挙で立花氏がプロデュースする、歌って踊れる政治家アイドル「政治家女子48党」構想においても公式HPに「NHKを壊す」旨の文言が見当たらない。『今、元「モーニング娘。」でタレントの矢口真里さんに、「500万円くらい出しますので、来年4月の統一地方選挙に立候補しませんか」とオファーをしています』(みんかぶマガジン2022年11月21日)という。この話の成否も含め、なりふり構わないNHK党の重大局面といっていいだろう。
次期衆院選で実施するという、ヒカル氏などの人気YouTuber擁立構想においても「NHK党の各人が、自由に言いたいことを言えばいい。もし、例えばですが、どこかのチームが原発に反対し、東京のホリエモンチームが原発に賛成したとしても、問題はないと思います。当選して、原発に反対したい人は反対すればいいし、賛成したい人は賛成すればいいと思っています。こちらはバラバラですよと、初めから言っておけば、それが嫌だと言う人は票を入れなければいいし、それでも応援したいと言う人が票を入れればいいというだけです」(みんかぶ・2022年11月22日)として、政策協定などを結んで、共通の公約をつくることはないとしている。
これらの行動を指摘して「人気取り優先だ」「衆愚政治の極み」と指摘されるのは当然だろう。実際に、国民の多くは、国会へ出席しないガーシー氏に対し、不満を持っている。ガーシー氏の処分を決める参院懲罰委員会の委員長、鈴木宗男議員が、筆者に話をした見立て通りに、物事が進むのであれば、
- ガーシー氏の処分は「国会での陳謝」に決定。この陳謝とは、本人がつくった原稿ではなく、懲罰委員会が決めた原稿を、議場で読み上げさせられるという屈辱的な処分だ。委員会で弁明の機会があるが、本人は出てこないで、NHK党の浜田聡参議院議員に代読させるつもりらしい。
- ガーシー氏は、国会へ登院しない。
- さらなる処分の検討
- 「除名」処分が懲罰委員会で可決
- 本会議で出席者の3分の2の賛成をもって、ガーシー氏の議員除名が決定
- ガーシー氏は議員資格がなくなる
という段取りを経ることになる。
ガーシー、陳謝受け入れへ
ガーシー氏は全国比例で選出された議員のため、ガーシー氏が除名となれば、比例順位の次点が繰り上げ当選することになる。立花党首は、次点で2位の山本太郎氏、そして、3位の黒川敦彦氏を説得して、議員の繰り上げ当選をやめてもらい、4位で実業家の堀江貴文氏の秘書である齊藤健一郎氏を繰り上げ当選することに決めた。その理由は「ホリエモンの力が欲しいし、ホリエモンの声を国会に届けて欲しい。齊藤くんを繰り上げ当選にしたいと決めている」(立花氏)という。国会へ行かないと公約したガーシー氏は民意の支持を受けたとしつつ、比例で2位、3位の得票をした人物ではなく、齊藤氏を繰り上げるのは矛盾を感じないでもない。
齊藤健一郎氏がどのような政治家になるかは、定かではないが、2020年の都知事選に出馬した際には、「勝手に堀江貴文の掲げる提言をホリエモン新党は公約とし、確実に一つずつ実行していきます!」として、政治家としての主体性を放棄する宣言を冒頭に掲げつつ、以下のような政策を公約としている。
江戸城再建、足立区は日本の「ブルックリン」に生まれ変わる、「正解」を教えない教育、大麻解禁、「ジジ活」「ババ活」で出会い応援、限りなく生活コストを下げる、などだ。
人気パーソナリティの辛坊治郎氏からは『マジか! 彼は、私が太平洋横断の際に乗った「カオリンV」のボランティアクルーです。オリンピックを目指していたけど怪我をして失意の成田緑夢を、私財を投じてパラ金メダリストに育てた人物、優秀で信頼できる男です。議員になったら頑張って』(2月17日・Twitter)と称賛されている。人格的にはきっといい人なのだろうが、辛坊氏が堀江貴文氏の言い分をとにかく実行に移すと宣言する人物の何を信頼しているのかはわからない。
ただ、そんな鈴木宗男による”除名段取り”がほぼ決まったなか、2月22日夜、突如としてガーシー議員が陳謝を受け入れる方針になったことを、一部メディアが伝えた。これもまた何かのパフォーマンスの始まりなのだろうか。NHK党は、統一地方選挙を前に、党の存亡を賭けた闘いをはじめた。賛否両論ある問題で注目を集め、結果的に党への支持率、得票を伸ばしてきたのがNHK党だ。日本全体が立花党首に踊らされているのだ。