立花党首辞任で限界局面「政治家女子48を武道館でアイドルデビューさせる」日本の根本が融けていく

 ガーシー参議院議員が当選以来、一度も登院しなかった問題で、参院が求めていた「議場での陳謝」にガーシー議員は応ずることなく、帰国もしないことが明らかになった。この状況を受け、陳謝が予定されていた3月8日にNHK党の立花孝志党首が突如辞任を表明。日本中の注目を集めるこの騒動、次はどのように展開していくのか。

一転して帰国拒否のガーシー議員…立花党首が仰天会見を実施

 NHK党の立花党首は「ガーシー議員が登院して陳謝すると表明していながら、この約束をほごにしたので、党の代表として責任を取らなければならない」と述べ、懲罰処分の陳謝に応じなかった責任を取りたいとして、党首を辞任する意向を表明した。立花氏は「国会に出席しないことで迷惑をかけているとは一切思っていない。国会で暴言を吐いたり、暴れたり、議事進行を妨害したりするのであれば、除名処分も致し方ないが、何か迷惑をかけたのかいまだにわからない」と述べて、処分への不満を表明している。

 NHK党党首の後任には、ジャーナリストの池上彰氏と番組で共演したこともある、元子役の大津綾香氏が就任し、党名を「政治家女子48党」に変更するとも発表した。立花氏は2019年に参院議員を辞職後も、そのまま党首を務めていた。

 まずは、ガーシー氏についてだ。帰国しなかった原因について、政府関係者は「立花氏はガーシー氏に対して、逮捕され有罪が宣告されても、国会議員の身分はそのままに、執行猶予がつくのではないかと伝えていたようだ。いったん、罪を受け入れて身綺麗(みぎれい)にしたらどうかという説得も行われた模様だ。しかし、帰国すると捜査機関への協力が求められることになり、そこから日本を出国しようとすると『旅券返納命令』や『逮捕・勾留』が予想されるため、事実上、海外へは長期にわたって戻れなくなるのは確実な情勢だった。それでガーシー氏は帰国をためらったのではないか」と推測している。

朝日新聞もついに「除名」擁護へ…有権者が選んだ議員の除名、議論は尽くされたのか

 ガーシー氏をめぐっては「除名」処分(議員身分の剥奪)に向けて、着々と外堀が埋められている。国会議員の除名は日本国憲法に規定があり、本会議で出席議員の3分の2以上の賛成で決まる。

 これまで、態度を明らかにしなかった朝日新聞も社説(3月9日)で「選挙で選ばれた議員の地位は重く、その資格を奪うことには、最大限、慎重でなければならない。過去には、戦後間もない1950年代初頭の2人しか例がない。とはいえ、ガーシー氏は再三出席を求められながら、昨年の2度の臨時国会に続き、今年の通常国会でも欠席を続けている。質問主意書を出す程度で、審議や採決への参加など、実質的な議員活動はないに等しい。それでも、歳費や期末手当など、2月末までに約1833万円が支給された。釈然としない国民も少なくあるまい。もはや看過はできないという与野党の判断は理解できる」とした。「除名」へと突き進む与野党議員の判断を「理解できる」として、除名を公に認めることになったのだ。

 朝日新聞は、これまで多数派の横暴について繰り返し否定的な立場を取ってきた。この社説内にある除名処分の2例については、具体的な説明がないが、そのうちの一つは、当時、共産党の川上貫一衆院議員が本会議で『国民の大多数は(中略)占領軍の早期撤退を望んでおります』『わが党は(中略)人民が反動と欺瞞を打倒し、全面講和を実現し、平和と民族の独立を保障する。そのために立つてみずから闘う人民の権利を主張する』と訴えたところ、吉田茂内閣の与党だった自由党などが『議院の品位を傷つけた』として懲罰を要求したことだ。『議場での陳謝』を命じられた川上氏はこれを拒否し、最終的に除名となったというものだ。

 ガーシー氏は登院しないと選挙中に発言して当選したが、選挙直後のオンライン対話では「国会で寝てるおっさん全員たたき起こす」などと語っていた。はっきり言って、どんなにクオリティが低い政治家であっても、どんなにダメな主張をしていても、民意を得たという点において、国民の代表なのである。逮捕の危険があるから帰国しないというガーシー氏の立場には全く賛成できないが、やはり、サンフランシスコ講和条約発効後初の「除名」という先例をつくる上では、開かれた民主主義国家として、冷静な議論を求めたいところだ。

ガーシー後任の齊藤健一郎氏も「登院せず」の可能性…除名後も火種残る旧・NHK党

 朝日社説の「除名」容認は、残念でならない。「職場放棄は民間企業でもクビになる」という識者がいるが、民間企業の経営者なら会議に出席しなくてもそれ自体で問題となることは少ない。政治家という職種は、会社員というよりは、個人事業主のほうが近いだろう。

 懲罰処分の陳謝に応じなかった政治家女子48党(旧・NHK党)のガーシー参議院議員について、参議院の懲罰委員会は、来週3月14日に改めて処分の審査を行うことになった。懲罰委の鈴木宗男委員長は「極めて残念だし遺憾。政治不信を招く最たるものとなるので、院の権威を守るためにも対応していかなければならない」としている。

 今後、党首は退いたものの、実質的には同党に強い影響力を持つ立花孝志氏は、どう戦略を練っているのであろうか。1つは、ガーシー氏の後任で参院議員に就任する齊藤健一郎氏だが、立花氏によれば、齊藤氏もガーシー氏同様に登院せずに議員活動をすると表明したことがある。めまぐるしく主張が変わる同党の立場をどこまで本気で受け取っていいものかはわからないが、今後もまだ火種は残すことになるだろう。

「政治家女子48党」党名変更のPRは大成功

 もう一つは、政治家女子48党と名前を変えたことで、どういう戦略上の変化が起きるのかということだ。立花氏はかつて「NHK党はアイドルグループになるため、12月25日の選挙で女性50人を擁立し武道館デビューだ」(みんかぶマガジン・2022年11月18日)という記事でのインタビューで次のように答えている。当時は、西東京市議会議員選挙(2022年12月25日投開票)の選挙戦の直前だった。

「この選挙を通して、テレビを見ない若者、特に若い女性に、「政治って面白い」ということを教えてあげたい。それで西東京市へ、女性の候補者を探しに行こうと思っています。場合によっては、西東京市のキャバクラに行って候補者をスカウトしてもいいでしょう(笑)」

「『何をやっているんだ。ふざけてるのか』という批判もくるでしょうが、『何を言っているのだ。ふざけているのは高齢者のほうだろう』と私は思いますよ。(選挙掲示板の)こっちからこっちは高齢者ども、こっちからこっちは若い人たちだぞと、言い返してやろうと思っています。そうすれば『政治の世界に女性を入れる』『若い世代を入れる』という私たちの主張に対して、ふざけてるのはどちらなんだというメッセージを伝えられるでしょう。『こっちのほうがまともやないか』と。これまでの自民党や共産党の政治では、女性や若い世代を政治の世界に引っ張ってこれなかったのですから」

 などとして、政治家女子48党設立の意味を論じている。

「実は、さらにサプライズがあります。そのようにして統一地方選にて各地で当選したNHK党(現・政治家女子48党)議員を、秋元康さんのAKB方式で総選挙を行い、来年の6月にメジャーデビューさせ、最終的には武道館でライブさせようと考えています。NHK党(現・政治家女子48党)から立候補して当選した人には、武道館デビューが約束されています。そのデビューのために、統一地方選挙を勝ち抜いてきてください、ということです」

 立花氏が政治家女子48党へと党名変更した理由は、まさしく統一地方選挙へ向けて、当選者を増やすための戦略といえよう。ガーシー氏の除名処分をめぐって、国民の関心がNHK党の動向へと惹(ひ)きつけられる中、立花氏にしてみれば、大がかりなPRに成功したということだろう。4月に迫った統一地方選挙で、国民はどんな審判を下すのだろうか。

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