内紛の旧NHK党で重大局面…青汁王子も参戦で立花氏「勝負あった」LINE暴露の大津氏「刑事告訴進める」に”溶ける日本”
大敗原因は「間違いなく大津氏と揉めたこと」
党首や代表権をめぐり内紛状態にある旧NHK党(現・政治家女子48党)のバトルが法廷闘争に突入した。「真正な党の党首」と主張する大津綾香氏が、創立者である立花孝志氏と争う前代未聞の対決は歩み寄りが見られず、長期化するとの見方も広がる。組織戦を得意とする既成政党の集票力に陰りが見え、新興勢力への期待感は広がるものの旧N党はいよいよ溶けてしまうことになるのか。
「82名応援し、実質当選したのが4人。原因としては、間違いなく私と大津さんが揉めたこと」。創立者として同党を牽引してきた立花氏は4月28日の記者会見で、先に行われた統一地方選挙での惨敗をこのように総括した。
旧N党は、2019年、2022年の参院選で2%を上回る得票率を得たものの、初当選したガーシー(本名・東谷義和)容疑者が一度も国家に登院せず、3月8日に立花氏が引責辞任。同時に政治家女子48党に名称を変更し、新党首には大津氏を迎えることを発表したが、まもなく党運営などをめぐり大津、立花両氏が激しく激突するようになった。
新体制発足から約1カ月後、立花氏は党がお金を借りている債権者からの返金請求が殺到しているとして大津氏を「除名」とし、同党の齊藤健一郎参院議員が新代表に就くと発表。自らは代表権を持たない党首になると説明した。
債権者への返金や党職員給与の支払いなど大きな問題が生じる可能性
だが、大津氏は党首辞任を否定し、代表権の地位確認をする仮処分を千葉地裁に申し立てている。4月27日の審尋には大津氏側の弁護士と、齊藤氏らが出廷したが、公党の代表権をめぐる双方の主張は現在のところ歩み寄りが見られない。
全国紙政治部記者が“お家騒動”が法廷闘争にまで発展した理由を解説する。「旧N党は『立花個人商店』のようなものでした。まさか自分が党首を譲った人物が反旗を翻し、訴えられるなんて思わなかったんでしょう。肝心の党規約は想定外の事態に対応できるものではなく、もし裁判が長期化することになれば債権者への返金や党職員給与の支払いなど大きな問題が生じることになります」
立花氏は「3月29日の党の総会で、大津氏は何度も党首を辞めると言っている」として齊藤氏に代表権が渡ったとの見解を示し、大津氏については4月6日付で除名処分にしたとする。だが大津氏は「党の規約上、総会は党首が招集するとされているが、私は総会を招集していない」と主張。総会での決定が必要な規約の改廃が行われておらず、立花氏の言い分に真っ向から反論している。
十分、もう勝負があったと考えています
代表権をめぐるバトルの余波は、思わぬ「政治とカネ」問題にもつながった。同党は300人超から10億円以上の借金があり、ゴタゴタから返金要求が相次ぐ「取り付け騒ぎ」が起きているというのだが、2人が「代表者」を主張する中で金融機関の口座は凍結されているのだ。
2023年、同党には政党交付金として3億3443万円が支出される予定で、4月20日には8360万円が口座に振り込まれている。ただ、凍結口座からの返金は進んでおらず、副党首の丸山穂高元衆院議員は「各種手続きが前に進まず、口座の資金が利用できないとか、職員の給料が支払えず、党の緊急事態」としている。
立花氏は4月28日の記者会見で、法廷闘争の行方に自信をのぞかせる。大津氏の訴えは棄却されるとの見通しを示した上で「十分、もう勝負があったと考えていますので、裁判所の決定まで今しばらくお待ちいただきたいと思います」と主張。裁判での決着後ただちに返金を希望する債権者や党職員への支払いを実施したい意向という。
ただ、大津氏は一歩も引く気はないようだ。4月27日にツイッターで「別件で立花孝志が行った犯罪行為については全件を取りまとめ、刑事告訴の手続きを鋭意進めております。こちらも追ってご報告します」とつづり、同党の浜田聡参院議員名で送付された党総会招集ハガキの画像をアップ。「浜田聡議員・丸山穂高氏らが煽動している5月の“総会”ですが、党首である私が招集しているものではないので無効です(党規約参照)」と主張。「浜田・丸山両氏及び当該葉書の作成者は刑法第167条私印偽造及び不正使用または刑法第159条有印私文書偽造罪に抵触する可能性がありますので刑事追訴を検討します」と記している。
大津氏は4月の統一地方選挙で、9日投開票の神奈川県知事選は15万1361票、23日投開票の東京・目黒区議選では1008票をそれぞれ獲得したが、落選している。とはいえ「どう政治家女子をプロデュースしていくかということを真剣に考えていかなければならない」と発言するなど、“公党トップ”としての決意に揺らぎはないようだ。
立花氏による「個人商店」ぶりを当てこするかのように、同党の「闇会計を明らかにする」とうたい、副党首である丸山氏の面会要請に対しても弁護士らを通じた意思疎通やダイレクトメッセージでのやり取りを求めている。わずか2カ月前にトップになった「素人」とは思えない周到ぶりだ。
立花娘に青汁王子も参戦…いよいよわけがわからない
内紛劇には立花氏の娘や「青汁王子」こと実業家の三崎優太氏らも“参戦”し、ネット上の注目度はまずまずと言えるが、党勢には陰りが見える。長期化も予想される同党の今後はどうなるのか。別の全国紙記者は「ガーシー問題以来、旧N党が何をしたい政党なのか分からなくなってしまいました。元々は『NHKをぶっ壊す!』ことが第1だったはずですが、今は『旧NHK党がぶっ壊われる』になってしまったように見えます。このままバトルが続けば、いよいよ深刻な状況になってくるのではないでしょうか」と見る。
立花氏と行動を共にしている“新代表”の齊藤氏は、「こういうトラブルは政治にはある。エンタメとして楽しんでもらうのも1つ」と言うが、統一地方選挙の結果を見れば党勢回復は容易ではない。ガーシー問題や党内のゴタゴタを見れば、著名人を擁立していくという立花氏の戦略にも影響が出てくるだろう。
朝日新聞が4月29日配信した世論調査結果によると、政治を「信頼していない」と回答した人は55%に上り「信頼している」の44%を上回った。4月に行われた衆参5つの補欠選挙で「4 勝1敗」という予想外の勝利をおさめた岸田文雄首相(自民党総裁)は、5月のG7(主要7カ国)首脳会議が閉幕すれば、その勢いのまま衆院解散・総選挙モードに入るとみられている。
自民の敵は立憲ではなくて維新に
統一地方選挙や補欠選挙においては、自民党や公明党、共産党といった組織力がある既成政党に陰りが見える中で日本維新の会が躍進した。では、旧N党は次期総選挙でどのように戦うことができるのか。
ある自民党関係者はこうつぶやいた。「もう自民党の敵は立憲民主党ではなく、維新だ。憲法改正や国会での連携はあるにせよ、本気で維新を叩かないと奈良県知事選や衆院和歌山1区補選での惨敗のようになる。旧NHK党? 国会に参院議員しかいないのは救いなんじゃないの」
旧N党は、2カ月前からの災いを転じることができるのか。新興勢力の試練と模索は続く。