コタツ記事はもういらない…ChatGPTでネット広告効果が急落! 専門家「無料ウェブメディアはやっていけない」これから消える職業リスト記者、広報、通訳…
米ネットメディア・BuzzFeedがニュース部門を閉鎖し、若者向け米ウェブメディア「VICE」の運営会社が経営破綻するなど、ウェブメディアの苦境が相次いで報じられている。日本でもPV(ページビュー)あたりの広告単価の減少が起きており、とある無料芸能ニュースサイトでは昨年の半分にまで落ち込んだという。その苦境に追い打ちをかけようとしているのは、ChatGPTだ。プレミアム特集「1億貯める! ChatGPTの投資・仕事術革命」第6回では、ChatGPTがウェブメディアに及ぼす影響をライターの梶原麻衣子氏が取材した。そして、これから消える職業とは――。
目次
ChatGPTに中立公正という概念はない
文章生成AIであるChatGPTの大流行で、政府も人工知能(AI)への対応を迫られている。「DX後進国である」というコンプレックスを払拭したいとの思いもあってか、その姿勢はかなり前のめりで、4月10日にはChatGPTサービスを提供する米OpenAIのサム・アルトマンCEOと岸田首相が面会。話題性は抜群で、メディア各社もこぞってChatGPT特集を組み、宣伝に大いに貢献した。
5月末の広島サミットに先立つG7デジタル・技術相会合でも「責任あるAI」の実現などを盛り込んだ閣僚宣言が採択された。会合で確認されたのは、AIをはじめとする新技術を利用する際、① 法の支配 ② 人権尊重 ③ 適正な手続き ④ 民主主義 ⑤ 技術革新の機会の活用 ――の五つの原則を重んじるという点だ。
ChatGPTは ③ に関する個人情報の漏洩などについては、危険が指摘されているが、② や ④ に関しても注意が必要なのは言うまでもない。ChatGPTはユーザーの質問に対して一見、中立公正な観点に基づく文章を生成するが、実際には、単に文章を生成しているだけなので「中立公正」という価値を重んじているわけではない。
どの文章生成AIを使うかで、人間の判断の前提となる常識が異なる
もちろん、強化学習によって差別表現などは極力使わないように「補正」されているため ② は重んじられていると言えるが、逆にいえばこうした「補正」が効いていること自体が、むしろ中立ではなく、ともすれば ④ に反しかねないことを示している。
また、ChatGPTを開発したOpenAIは米企業だが、中国企業も文章生成AIの開発に乗り出しており、その際に ④ はむしろ達成されないよう設計されるだろう。百度(バイドゥ)の「文心一言」やアリババの「通義千問」が発表されているが、中国共産党批判につながるような文章は生成されないし、民主主義を共産党体制よりも尊ぶような文章も生成されない。そうと知らずに中国製AIを使っているうちに、中国の意に沿う価値観をユーザーが吸収してしまうこともあり得る。
すでにChatGPT偽情報の拡散やフェイクニュースの量産などが危惧されているが、それ以前の問題として「どの文章生成AIを使うかで、人間の判断の前提となる常識が異なってしまう」可能性がある。そうした懸念に先手を打つべく出されたのが「閣僚宣言」というわけだ。
なぜEUはChatGPTに過剰反応しているのか
欧州では、イタリアがいち早くChatGPTの使用に一時制限を掛けた。個人情報の取り扱いや、使用年齢の制限がないことを問題視したためだ。続いてフランス、ドイツでも、個人情報の取り扱いについて問題視する声が上がっている。
これはEUが域内の市民に関するデータを「財産」と見ていることも影響している。EUは、個人情報(データ)の保護という基本的人権の確保を目的とする「EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)」を定めている。
GDPRは、EUを含む欧州経済領域(EEA)域内で取得した「氏名」や「メールアドレス」「クレジットカード番号」などの個人データという「財産」をEEA域外に移転することを原則禁止しており、EU市民がChatGPTを使うことで、これらの情報がアメリカ(企業)に流れることを問題視しているのだ。
一方、日本でもっぱら話題になるのは、個人情報の漏洩以上に、「ChatGPTのようなAIが発達・浸透することによって消えてなくなる職業は何か」だろう。
GPTが語る「GPTで殺される職業」トップ5
OpenAIが公開している論文「GPTs are GPTs」によれば、ChatGPTを動かしている言語モデルの最新型GPT‐4が評価を下した「GPTによる影響が大きい職業」を業務時間が半減する労働者の割合から割り出したトップ5は以下のようなものだ。