英利アルフィヤ応援したのに…創価・公明党と自民党がついに分裂! 「話が違うじゃないか」連立解消の流れ

 G7広島サミット(先進7カ国首脳会議)で注目を集め、支持率が急上昇した岸田文雄首相に冷や水が浴びせられている。連立を組む公明党と自民党の関係がギクシャクし、首相の足元が激しくグラついているからだ。首相はサミット効果の勢いで解散・総選挙に打って出るという見方が大半だったが、永田町事情に詳しい政経アナリストの佐藤健太氏は「公明党が本気で “離反” すれば、解散は遠のくことになるだろう」と見る。これは連立解消のカウントダウンとなるのか――。

何もしない岸田がついにやってくれた! 歴史的G7で支持率爆増

 日本が議長国を務めたG7サミットは岸田首相の地元・広島で5月19~21日に開催され、G7首脳による原爆資料館の訪問や原爆慰霊碑での献花、核軍縮に関する「広島ビジョン」発表など、歴史的な1ページを刻んだ。

 ロシアによる侵略が続くウクライナのゼレンスキー大統領も急遽(きゅうきょ)訪問し、G7の結束や「グローバルサウス」と呼ばれる国々(新興国・途上国)との協力関係を確認するメッセージを発信できたのは大きな成果だろう。岸田首相は5月24日の衆院予算委員会で「狙い通りの成果を達成できた」と胸を張る。

 外交を得意とする首相には、追い風が吹く。読売新聞が5月20、21日に実施した世論調査で内閣支持率は前回調査(4月)から9ポイントも上昇し、56%と8カ月ぶりに5割台を回復。毎日新聞の調査でも、支持率は4月調査時から9ポイント増の45%となり、不支持率は10ポイント下落している。外交上の成果が好感され、自民党内には “追い風” にあやかろうと早期解散を期待する声が上がる。

公明党は大反発…自民党の関係に亀裂

 だが、サミット閉幕から3日後に事態は急変した。得意分野での加点に「有頂天」となりつつある首相を襲ったのは、連立政権を組む公明党との関係だ。次期衆院選の選挙区調整をめぐり自民党と公明党の執行部に亀裂が生じ、もはや “決別” が「のっぴきならない状態」(自民党関係者)にまで発展した。

 事の発端は、衆院小選挙区の「10増10減」の区割り改定で、公明党が新設される選挙区に候補者を擁立すると、自民党側に通告したことだったと言われている。とりわけ、公明党が新しい東京28区(練馬区東部)に岡本三成衆院議員を擁立する方針を打ち出したことに対して、自民党サイドが猛反発。自民党の茂木敏充幹事長は東京都連の反対論を踏まえ、東京28区で公明候補の擁立は認められないとの考えを公明党の石井啓一幹事長に伝達した。

 自民党は東京28区に萩生田光一政調会長が推す安藤高夫前衆院議員を擁立したい考えで、首相は都連会長でもある萩生田氏の意向を無視できないというわけだ。萩生田氏は所属議員が100人いる自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の次期会長最有力候補である。その顔に泥を塗れば、首相の政権基盤が不安定化しかねず「公明党<萩生田氏」を選択したことは想像に難くない。

焦る公明党に恥をかかせた岸田総理

 公明党が強硬姿勢を崩さない背景には、関西を中心に勢いに乗る日本維新の会が、大阪府と兵庫県で公明党が議席を持つ選挙区に対抗馬を立てようとしていることへの焦りがにじむ。もしも、維新に公明候補が敗れることがあれば、現有議席は大きく減ることになるからだ。そこで区割り変更に伴い選挙区が増える首都圏に公認候補を増やし、議席数を確保したい戦略が見える。

 ただ、今回の自民党執行部との亀裂は、何も一方的に公明サイドだけが悪いわけではない。実は、岸田首相ら自民党幹部は、水面下で交わしていた “密約” を反故(ほご)にし、公明党側に恥をかかせたのが大きな原因にあるのだ。

 「話が違うじゃないか!」。区割り変更に伴い選挙区は東京が25→30、千葉は13→14、埼玉は15→16、神奈川は18→20、愛知は15→16にそれぞれ増加する。公明党は今年3月、埼玉14区に石井幹事長、愛知16区に伊藤渉政調会長代理を擁立すると発表。新たに増える選挙区への擁立を優先し、現職議員が多い自民党側への配慮を見せてきた。

交換条件で英利アルフィヤを応援したはずの公明党

 ちなみに公明は当初、東京28区ではなく、千葉の選挙区への擁立を希望していた。だが、そこで自民党側から1つの提案がなされたという。中身は、4月の衆院千葉5区補欠選挙で自民候補を全力応援すれば、東京28区を譲る可能性があるという「バーター」だ。補選は自民党の英利アルフィヤ氏が初当選したが、次点の立憲民主党候補との差は約5000票という僅差。推薦した公明の後押しは効果を生んだはずだった。

 ただ、自民党側は、その後に「東京28区で公明が擁立することは容認しない」ということを伝達している。つまり、自公間の約束は反故にされたのだ。自民党側は、東京12区や東京15区での擁立を公明側に模索するように伝えたとされるが、この2つの選挙区には、現職の自民議員が立候補することが想定される。これまでの自民党側への配慮を考えれば、到底受け入れられない話で、怒り心頭に発したのも無理はないだろう。

 公明党は、5月24日に開いた東京都本部の拡大役員会で、高木陽介代表(党政調会長)ら幹部が対応を協議。その結果、東京28区での擁立は見送るものの、次期衆院選においては、東京の選挙区で自民党の候補者を推薦しない方針を確認した。都議会で協力している自民党との関係も、白紙に戻すという。同25日の党常任役員会で決定し、自民党側に “最終通告” することになった。

将来的に連立解消という可能性

 この方針決定がもたらすことの政治的な意味は、極めて大きいだろう。公明党側の支援がなければ、自民党候補の勝利が危うくなる選挙区は少なくない。今のところ「東京限定」での話ではあるが、自民党執行部との亀裂が深刻化すれば、将来的に連立解消という可能性もゼロではない。

 もちろん公明にしても、自民党側の支援がなければ、選挙区での議席確保は容易ではない。今後は党本部を介さず、個別に応援の有無を地元レベルで調整していくことになる。はたして自民党も公明党も、それを承知の上で次期衆院選を戦い抜くことはできるのだろうか。

 すでに政界は今夏の解散・総選挙を想定し、動き出している。支持率が急上昇した岸田首相の本音も、早いうちに次期衆院選を断行したいという一点にある。だが公明党との選挙協力関係が崩壊することになれば、首相が議席の大幅減を覚悟しながら解散するのは無謀とも言える。つまり、この状況で解散するのは難しいだろう。

 維新が勢いを増し、中京圏や首都圏への動きを活発化させる中で、首相は自民党総裁としての判断をどのように下していくのか。広島で見せた満面の笑みはすでに消えている。

この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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