ここまでアホを繰り返すとは…岸田”ドラ息子”秘書官更迭に与野党が安堵「国益のためにも、これでよかったのだ」

 岸田翔太郎首相秘書官を巡る報道が、またもお茶の間を賑わしている。SNSの発信力などを期待されて任命された翔太郎氏だが、危機管理力のなさが就任以降露呈してしまい、ついに更迭となった。これまで、総理の外遊中のパリやロンドンで「公用車で観光していた」週刊誌報道などで、総理の任命責任も問われてきた。どんなに世間から息子が叩かれようと必死に守ってきた岸田文雄総理だが、ついに白旗をあげた形だ。これまで翔太郎氏を巡り政界を取材してきたルポライターの日野百草氏が、改めて問題点を解説する――。

これだけアホな行動を繰り返す秘書官はなかなかいない

「なぜ繰り返したのか。首相秘書官がこれだけ騒動を繰り返すのは前例がなかった」


 革新系の元議員は、怒るというより、むしろ悲観した様子だった。

 岸田文雄首相の長男で首相秘書官(政務担当秘書官)の岸田翔太郎氏(32歳)が一般人の親族らと2022年の年末、首相公邸で忘年会を開き、一部の参加者が赤じゅうたんの敷かれた階段に寝そべった写真を撮ったり、岸田一族一同で組閣したかのようなひな壇写真を撮影したりした騒動が週刊文春によって報じられた。

 その写真中央、内閣総理大臣の位置に、翔太郎氏はいた。 そして5月29日、岸田首相はついに翔太郎氏の更迭を決めた。翔太郎氏は6月1日付で辞職する。

国益のためにも更迭を

「首相秘書官がこれほど悪目立ちすることなんてなかった。与野党関係なく、国益のためにも更迭で正解だ」

 この件に関して、さすがに父親である岸田首相も「迎賓機能や執務機能を有する公的な施設で、報道にあるような行為は適切さを欠く」として翔太郎氏を厳重注意した。

「仏の顔も三度までということだ」

 当初、岸田首相は会見で「適切な使用・管理を徹底」「一層の緊張感を持って職務にあたっていくと承知」と記者団に答え、翔太郎氏の更迭を否定した。5月26日の参院予算委員会でも「不適切だった」とするも処分の有無については言及しなかった。


 与党系の地方議員も「何度目かわからない」とうんざりした様子でこう述べる。

何度目かもうわからなくなってしまった

「官邸に奢(おご)りがあったのではないか。何をしても支持率も選挙結果も悪くないと。この程度の批判では政権は揺るがない。しかし、やりすぎた」

 朝日新聞の世論調査(5月27日、28日実施)によれば、岸田内閣の支持率は46%で前回の38%から8ポイントと大幅に上昇した。日本経済新聞の世論調査(5月26~28日実施)では47%、共同通信でも47%と50%近い数字となっている。FNN(フジニュースネットワーク)に至っては50%超え(50.4%)だ。

フィリピンのマルコス一族を思い出す

 翔太郎氏は、これまでも首相の外遊に同行した際に、大使館の公用車を使って観光名所を巡る、百貨店で買い物(お土産など)するなど、公私混同が問題視された。また、内閣の機密情報がたびたび漏れたときも「翔太郎氏では」とメディアで指摘されることがあった。その真偽はともかく、確かに政務担当秘書官という、首相と政府機密も共有し、首相を陰で支える国家公務員としては「悪目立ち」と言われても仕方のない「繰り返し」であった。

 先の岸田一族一同のひな壇写真を見て、野党のベテラン地方議員は

「フィリピンのマルコス一族を思い出す」

と感想を語ってくれた。今は昔の話だが、フィリピンのマルコス元大統領と妻のイメルダ夫人、そして一族は、フィリピンで独裁者として君臨した。その時の華麗な集合写真が残されている。1980年代までの話であるが、まさか21世紀の日本で同じような首相一族の写真、その場の冗談であっても、こうした写真が流出するとは。

危機管理ができない総理のSNS担当

「寝そべり写真もそうですが、流出することもまた、危機管理のなさだと思います」

 誰が漏らしたのかはわからないが、首相の一族がこのような写真を撮影し、それが世に漏れる、そして、そのひな壇の中央(首相が立つ場所)に翔太郎氏がいた、ということは「非常識」であり「私物化」と言われても仕方がないように思う。

 フィリピンもまた、マルコス政権は1980年代に打倒されたというのに、2022年、息子であるボンボン・マルコス氏が大統領に就任した。筆者と旧知の在日フィリピン系移民のIT関係者は「恥ずかしい」と口にしている。しかし選んだのはフィリピン国民だ。

保守革新関係なく、翔太郎氏を擁護する声は少ない

 以前、筆者は野党系の小さな集会で、大ベテランの元議員から「みんな跡を継がせ、跡を継いでいるのですから。世襲は無くなりませんよ」と聞かされた。「適材適所の観点から総合的に判断」して、岸田首相が息子の翔太郎氏を任命した直後だった。残念ながら、政界はもちろんSNSでも、保守革新関係なく翔太郎氏を擁護する声は少なかった。

 岸田首相は、翔太郎氏の更迭を発表した29日「任命責任は私自身」と述べた。故事にある「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」ではないが、実の息子を政務担当秘書官という重要ポストに据えたものの、度重なるトラブルで更迭の判断を下さなければならなくなった格好だ。

 確かに支持率にも大きな影響はなく、岸田内閣は「解散しても大丈夫」の声が上がるほどに順調のように見えた。しかし今はよしとしても、これからも翔太郎氏に端を発した騒動が起こるなら、せっかく政治家一族としての跡継ぎとして任命した首相秘書官の立場、ひいては翔太郎氏の将来に影響が及ぶかもしれないという判断もあったかもしれない。

「けじめをつけるため交代させた」

 岸田首相は先の発表でこうも述べたが、これで本当に「けじめ」となるのだろうか。

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この記事の著者
日野百草

1972年生まれ。日本ペンクラブ広報委員会委員。出版社勤務を経て国内外における社会問題、政治倫理を中心に執筆。大学院で芸術学を専攻、昭和史における人物評伝およびフィギュアスケートなどの舞踏芸術に関する論考も手掛ける。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。著書『評伝 赤城さかえ 楸邨・波郷・兜太に愛された魂の俳人』他。

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