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岸田首相「サラリーマン増税考えず」発言の卑怯さに国民絶望…表面的な言動に騙されてはならない

 財務省が発表している『国民負担率』では、国民負担に財政赤字を加えた潜在的な国民負担率として、「令和2年度(実績)62.8%」と公表されている。そんな中でも、増税議論が止まないのはなぜなのか。国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏が解説するーー。(第2回)

増税を実際に実行する案として採用されたものではない、という言い訳

 7月25日、岸田総理が宮沢洋一自民党税制政調会長に面会し、両者は「サラリーマン増税を考えたこともない」と一致したという。岸田政権は相次ぐ増税観測気球を飛ばして支持率を低下させているため、解散総選挙を睨んで一旦火消しに走ったということだろう。自業自得と言ったところだ。

 岸田政権は自民党税制調査会が決定していない増税案は、政府与党として増税を実際に実行する案として採用されたものではない、という言い訳をしているようだ。

 たしかに、自民党税制調査会は絶大な権力を有しており、全ての税制改正案は同会において了承を得なければならない。毎年年末になると、インナーと呼ばれる同会メンバーに対して、各省庁・各種業界団体が土下座をして税制優遇を乞うことが慣例となっている。彼らは各種要望を査定し、その要望の是非について〇△×などの結果を通知する。この儀式を経ることで、様々な税制改正案は初めて日の目を見ることになるのも事実だ。

岸田政権に対する国民からの不信感が爆発

 しかし、当然であるが、自民党税制調査会に案件が提出される前に、増税案の地ならしのプロセスを行う必要性があることは誰でも常識的に分かることだ。その地ならしのプロセスの一つが「サラリーマン増税」として岸田政権が叩かれる原因となった政府税制調査会の答申である。

 政府税制調査会は、内閣府の審議会等の一つであり、内閣総理大臣の諮問に応じて、租税制度に関する基本的事項を調査審議する場だ。学識者や各種団体代表などが顔を並べて税制改正の在り方について答申を提出する。

 その政府税制調査会の中期答申「わが国税制の現状と課題-令和時代の構造変化と税制のあり方-」に、通勤手当等に対する課税や各種控除の廃止の検討の文言が並んでいたことで、岸田政権に対する国民からの不信感が爆発することになった。

政府税調は今や決して無視できるような存在ではない

 一部の有識者はあくまでも同答申は「検討」に過ぎない、と嘯いているが、検討の積み重ねが「増税」のために繋がるのは明白だ。増税を決めるプロセスの一環であって、それらの有識者が責任逃れをする言説を許すべきではない。

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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