年内ガソリン200円に”もう限界”…鬼の岸田総理と鈴木財務相が瀕死の国民を追い込む「衝撃すぎるトリガー条項発動しない理由」

日野百草
公開)

 ガソリン代が高騰しているが、政府は減税どころかトリガー条項を発動しない。補助金でごまかそうとするその姿勢を運送業界の人間はどう見ているのか。ルポ作家の日野百草氏が限界をむかえている国民生活の様子を伝える。

ガソリン代が高すぎる!JAFも国にぶちぎれた

「これだけ高止まりが続けば厳しい。この地域もいずれ200円を超えるのでは。2024年問題もある。私も高齢、廃業も視野に入る」

 関東で小口を中心に運送業を営む業者が切実に訴える。彼だけでない。同じ関東の個人宅配ドライバーも軽貨物を使った請負を一時的にやめ、一部は原付2種で配達できる大手ECサイトの請負にして凌ぐと話した。

 事情はさまざまだが、商業ドライバーの誰しも口にするのが「ガソリンが高すぎる」という問題だ。

 これについてJAF(一般社団法人日本自動車連盟)も以下の声明を出した。

 現在、ガソリン小売価格は高騰を続け、それにともない石油元売り会社などに支給していた補助金の期間延長の検討やトリガー条項の発動も議論されております。これまでも政府や行政機関である関係省庁へ訴え続けて参りましたが、この機会に以下の事項についてJAFは改めて強く要望します。

1.ガソリン税等に上乗せされ続けている「当分の間税率」を廃止すべき。

2.ガソリン税に消費税が課税されている「Tax on Tax」という不可解な仕組みを解消すべき。

 JAFでは、このような自動車ユーザーが到底理解・納得できない仕組みを一刻も早く解消するべきと考えます。

「ガソリンが高すぎる」の問題は「税金が高すぎる」に直結

 JAFの指摘する通り、この「ガソリンが高すぎる」の問題は「税金が高すぎる」にも直結している。ガソリンには1リットルあたり揮発油税48.6円、地方揮発油税5.2円(この二つを合わせて便宜上、ガソリン税とする)、これに石油税が2.8円かけられている。さらに消費税がガソリン税に10%、石油税にも消費税が10%かかる(軽油の場合は異なるが割愛)。これがいわゆる「二重課税」と呼ばれる状態だが、この通り、実質的には二重どころの話ではない。

 副業で宅配業を営む別の配達員も訴える。

「なぜ減税してくれないのでしょう。ガソリンが高いままなら、いずれ何も運べないし、誰も運べなくなります。ネット通販の価格が一部で上がっているのも人件費はもちろん、燃料コストの問題だと聞いています。もう運送会社やドライバーに転嫁するのは限界ですから、値上げするしかない」

「年内ガソリン200円コース」も現実味

 値上げできる会社やドライバーはまだいいが、実際は冒頭の業者のように転嫁もままならず「廃業」さえ考えざるを得ない現状がある。

 岸田文雄首相は石油元売り各社などへの、いわゆる「ガソリン補助金」を延長することを決めたが、これまでも補助金を出してきたにもかかわらずガソリンは下げ止まるどころか上がり続け高値のままに来ている。

 延長に際して補助率の引き上げが成されるが、現場からすれば今まで同様、高いままには変わらず「焼け石に水」の現実が待ち構えるかもしれない。冒頭の経営者の懸念する「年内ガソリン200円コース」も現実味を増した。

 バスなどの旅客輸送も厳しい。インバウンド復活でも高額のガソリン代が経営を圧迫している。元バス運転手で現在は福祉施設のドライバーをしている男性の話。

「バスは本当に厳しいよ。とくに路線バスなんてどこも限界だろ。運賃も安いままで運転手も重労働だし薄給、なり手も少ない。会社そのものが限界だから、減便や路線の廃止にするしかないよね。俺も年齢と健康もあるけど、ここらが潮時と考えてバスを辞めた口だ」

相次ぐ、廃止を発表する路線バス

 この取材の数日後、大阪の金剛バスが路線バス事業を廃止すると発表した。

 金剛バスは主に富田林、太子、河南、千早赤阪などを結ぶ路線だが、島本和彦のコミックでテレビドラマ化もされた『アオイホノオ』の舞台である大阪芸術大学(大芸)の学生の足として「芸バス」とも呼ばれた。現在は別のバス会社(MK観光バス)によって「芸バス」が運行されているが、いまも時間や目的によっては金剛バスを利用する学生はいる。元大芸生だった女性の話。

「私の時代は金剛バスでしたが、バスがないと厳しい場所ですよ。喜志駅から遠いですからね。昔の話ですが、金剛バスの運転手さんは狭くてうねった道を猛スピードで走って曲芸みたいでした。金剛バスがなくなっても大芸の子は芸バスがあるけど、あの辺は車社会とはいえ住人の方は大変でしょうね」

 ギブアップを始めた各地の路線バス、金剛バス以外も次々と路線バスや代替バスの大幅な減便、廃止が相次いでいる。人手不足の問題が第一とはいえ、このままガソリンが高止まりなら、ましてや200円を超えるガソリン価格が常態化するならさらに多くの路線が廃止、業者の廃業が起きかねない。

 一般家庭もガソリン高騰に苦しんでいるが、こうした運輸業界のガソリン高騰は国民全体のさらなる苦しみにつながる。

地方によっては車が生活の命綱

 ガソリンだけでなく軽油、そして灯油の高騰も冬に向けて懸念されている。岩手に住む二児の母親も不安だと話す。

「ご家庭にもよるのでしょうが、東北で灯油が高いと大変です。家が大きかったり家族が多かったりするともっと使うでしょう。今年は暑かったので東北なのに電気代も大変でした。車がないと暮らせない地域ばかりですからガソリン代も大変です。車で通うしかない勤務先も多いです」

 住まいの断熱性にもよるし、話してくれた通り、家庭にもよるのだろうが灯油もまた値上がりしている。

 資源エネルギー庁によれば9月4日で関東の灯油(店頭)が18リットル2246円、配達で18リットル2451円となっている。今年の6月まで店頭で2000円台、配達は2100円台で推移していたはずが一気に上がった。

 また地方によっては車が生活の足どころか命綱、会社だって車で通うしかないケースも多い。一家に一台どころか一人に一台だ。大げさでなく、こうした地域ではガソリンが命を握っている。

一度決めた税は手放したくない、国庫の潤うことが第一、それが財務省

 しかし岸田首相は決してガソリン「減税」を口にしない。それどころか鈴木俊一財務大臣はガソリンの平均小売価格が一定の水準を超えた場合に発動する軽減策「トリガー条項」の発動すら否定した。

 自身の親族もガソリンスタンドを経営する北関東の地方議員の話。

「財務省が怖いから誰もガソリン税に手は出せない。一度決めた税は手放したくない、国庫の潤うことが第一、それが財務省ですから」

岸田内閣はガソリンの高騰に苦しむ人々の生活を、現場を知っているのか

 国民であるユーザーの自賠責保険から6000億円を借りたまま返さないどころか、現在の返済状況では完済するまで23世紀までかかる状態を平気で続ける財務省なら「さもありなん」だが、このままガソリンの減税もトリガー条項の発動すら見送って、ただ補助金を元売り各社に垂れ流すことは本当にガソリン価格の抑制につながるかどうか。

 政府の見通しでは補助金の延長と拡大によって9月末には180円、10月末には175円まで下がるとしている。9月13日には実際に18週ぶりの値下がりとなったが、現場とするなら減税はもちろん、トリガー条項の発動が無ければ高いままであることには変わりがない。

 そもそも3ヶ月連続で160円なら発動、という約束はどうしたのか。産油国の原油市場における出方次第、円安次第といった面もあるが、それも加味しての政策とするなら疑問しかない。さっそく、見通しの甘さを指摘する識者の意見も出始めている。

 地域や施設によってはすでに200円を超えたところも現れた。このままでは本稿で取り上げた運輸関連はもちろん農業や水産業、工場や倉庫などありとあらゆる産業に影響が出る。

 減税もしなければトリガー条項の発動もない。鈴木財務相はその理由について「買い控え」が心配と発言したが、心配せずとも現場は買い控えなどしている余裕はないように思う。岸田内閣はガソリンの高騰に苦しむ人々の生活を、現場を知っているのだろうか。

この記事の著者
日野百草

1972年、千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。国内外における社会問題、社会倫理のノンフィクションを中心に執筆。ロジスティクスや食料安全保障に関するルポルタージュ、コラムも手掛ける。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。

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