年収340万の35歳会社員「45歳でFIREしたい」…FP「60歳で資産底つきます」結局死ぬまで働かされ続ける恐怖

 時間に追われるストレスフルな仕事をされている人はかなり多いようです。年収340万円、35歳の男性・武田さんは、この過酷な仕事をいつ辞められるのでしょうか。FP深野康彦さんに聞きました。

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*ご相談が必ず回答されるとは限りません。編集部と深野さんが実際に回答する答えを選びます。

目次

年収340万円、35歳。45歳までには仕事を辞めたい

 武田さんは過去に、帯状疱疹などを患いその後遺症が継続していると言います。そのため過度なストレスがかかる時期には体にかなりの負担を感じることがあるようです。

 体調を考えると仕事は早ければ3年、遅くとも10年以内の45歳までには辞めたいと考えられています。近い将来には小さな庭付き戸建て住宅を購入して、野菜や果物を育てる「のんびりライフ」を送ることが希望でした。

 武田さんの相談内容は「いつ仕事を辞め、いつ家を建てると、生活苦にならずに生きていけるでしょうか」というものでした。退職と住宅購入についておすすめの時期をうかがえると嬉しいとも述べられていました。

株式投資の利益はFPの計算には反映できない

 武田さんの家計収支などを試算しながらご相談に回答していきますが、最初にお断りしておくことがあります。武田さんは「若いときから投資を行っており投資歴は15年になります。ここ4年で確定申告ができるレベルの利益を上げられるようになりました」と述べていますが、家計収支には株式投資などの利益を反映することはできません。給与であれば働いていれば必ず入ってくるものの、株式投資などの収益は不確実性が多いためキャッシュフローには含めないのが一般的だからです。

 また、武田さんが希望する戸建てのマイホームを購入してしまうと、今のように多額の資金を株式投資などに振り向けることができなくなります。このため回答は武田さんの意にそぐわないものになるかもしれない点はご承知して欲しいと了解のうえ以下のように回答しました。

35歳、年収340万円ながら極度の節約と投資で、金融資産額は45歳までに4700万円に

 武田さんの現在の収入は340万円。この金額は額面金額と思われ、手取額は285万円とします。月間の支出は14万円と述べていましたが実質の生活費は7万円でした。1人暮らしをしている点を割り引いても月7万円の生活費はかなり少ないと考えられますが、不要品をメルカリで処分する、ふるさと納税で食品などをもらう、株主優待でQUOカードをもらう等々を活用することで生活費は抑えられていたのです。

 月7万円、年間にすれば84万円ですが、武田さんが早期退職後も同じようにならない可能性も考慮して試算では支出をやや多めにして年間100万円としました。年間収入285万円、年間支出100万円なので年間黒字額は185万円となり全額貯蓄に回すことにします。

 武田さんが退職を希望する最短3年だと555万円、5年では925万円、7年で1295万円、最長の10年で1850万円が貯蓄として保有する金融資産に上乗せされることになります。武田さんが保有する金融資産は現金600万円、投資額が2250万円の合計2850万円。この金額に555万円から1850万円が今後上乗せされるため金融資産額は3405万円から4700万円になります。

マイホーム購入も考えると、10年後の金融資産は1538万円にまで減少

 積み上げた金融資産から武田さんが希望する戸建てのマイホームを購入することになりますが、退職後は無収入になるため原則住宅ローンを組むことができません。働いている間にマイホームを購入すると退職後にも住宅ローンが残る形になりますが、武田さんは退職時に一括返済を行うという前提に立ち、5年後に相談時に述べていた3000万円の戸建てを購入することにします。

 5年後の金融資産額は2850万円に925万円を加えた3775万円です。頭金を1500万円、諸費用を150万円とすれば金融資産額は2125万円になります。住宅ローンは借入金1500万円、金利2.0%、返済期間は30年で組む場合、毎月の返済額は5万5442円になります(返済額は使用するシミュレーションにより数円異なります)。

 現在の家賃が月3万円と書かれているため、マイホームを購入すると住居費は2万5442円増え、また固定資産税なども考慮すると増額する金額は月3万4000円前後になると思われます。年間では40万8000円の支出増となるため年間の貯蓄額は185万円から144万2000円に減少します。

 武田さんが考える最長の10年後に退職とすれば、マイホーム購入後の5年間では721万円の貯蓄ができることになります。マイホーム購入後2125万円に721万円が加わるため金融資産額は2846万円に増加することになりますが、退職時に住宅ローンは一括することを武田さんは考えています。5年後の住宅ローンの残高は約1308万円なので一括返済後の金融資産額は約1538万円になります。

45歳で退職したら、60歳前後で貯蓄がゼロに…

 武田さんの相談時には退職後は勤労収入を得る、言い換えれば働くことを望んでいないように感じられます。ただ最長の10年後、武田さん45歳の時に退職した場合、保有する金融資産額が約1538万円では、投資の運用益やメルカリなどで相当の収益を確保しないと60歳前後で底を尽く可能性があると思われます。

 住宅ローンは完済しているので住宅関係費用は固定資産税や火災保険だけになりますが、国民年金の支払いが約20万円発生、また将来のリフォーム資金も準備しておく必要があるため年間の生活費が大幅に減額することは考えにくいからです。

 公的年金は65歳から受給できるものの、厚生年金の加入期間が最長で20数年なので公的年金額は多額とはいえない受給額のはずです。また歳を取れば病院に行く回数が増えるなどライフスタイルに大きな変化があるため、65歳時点では相応の金融資産額を保有しておく必要があります。

安心して暮らすには結局、48歳からアルバイトで働くことに…

 金融資産が底を尽いてから働くのでは65歳以降に対応できないと思われるため、少なくとも40代の内にアルバイトなどを始めるようにしたいところです。

 退職年齢は先に述べたように45歳、退職後の数年間はゆっくり過ごすとします。仮にその期間を3年とし、48歳から働くことにしましょう。

 退職後3年間は金融資産を取り崩して生活費は賄うこととします。住宅ローンは完済していますが、国民年金保険料の負担が発生するほか、固定資産税や火災保険などの費用は残るので年間生活費は100万円で変わらないとします。3年間では300万円になり、金融資産1538万円から3年分の生活費300万円を取り崩すと残りは1238万円になります。

 48歳以降はアルバイトなどで年間生活費の100万円を稼げば金融資産を取り崩すことはありません。65歳まで働けば1238万円の金融資産額はそのままキープする形で老後を迎えることができます。武田さんの公的年金額は年間90~100万円程度と考えられ、また生活費を年金受給額で賄うことができればひとまず安心といえるのではないでしょうか。

仮に42歳で退職すれば、65歳以降もアルバイトをしなければならないことに…

 ここまでの試算は武田さんが考える最長の10年での退職としましたが、武田さんの体調やお気持ちを考えるともう少し早く退職したいのではないか、と思われます。

 そこで、マイホーム購入時期は5年後で変えないものの7年後、武田さん42歳時点で退職するケースも試算してみました。

 マイホーム購入後の金融資産額は2125万円で、年間の貯蓄額は144万2000円になりますと述べました。2年間の貯蓄額288万2000円が加わるため金融資産額は2413万2000円になります。

 10年後の試算と同じく退職時に住宅ローンを一括返済する場合、住宅ローンの残高が約1426万円なので金融資産の残高は987万2000円、約987万円になります。

 同じように3年間ゆっくり過ごすと300万円の生活費を金融資産額から取り崩すことになるため、金融資産額は約688万円になります。

 3年間ゆっくり過ごした後、45歳から年間100万円の収入を得れば65歳時点の金融資産額は688万円となり年金生活に変わることになります。

 人生100年時代を考慮すれば65歳時点の金融資産額688万円ではやや心許ないと思われますが、65歳以降もアルバイトなどで収入を得ることができれば、何とか安心といえるもしれません。

株式投資で大儲けできれば、また話は変わるが…定年まで正社員で働くことが現実的

 3000万円のマイホームを購入する武田さんの希望では、退職までの期間を7年より短くするとさらに金融資産額が少なくなり、結果として勤労収入を得ていかないと65歳以降に不安が残る形になります。このため退職時期は7年後あたりを視野に入れるとよいと思われます。

 マイホームの購入時期も前倒すことができますが、その分武田さんが考えられている株式投資などに回す資金が大幅に減少することになるので、少なくても5年後以降にされた方が無難だと思われてなりません。

 先に述べましたが試算には不確実性がある株式投資などの収益は一切考慮していません。株式投資などで大幅な収益が得られたならば試算より早めに退職することも可能になるでしょう。

 反面、最長10年後の退職でも武田さんの年齢は45歳。退職後ゆっくり休まれた後、気分が変わり正社員で働くということもありえないことではないと考えられます。

 人生100年時代ですから、武田さんのその時々の生き方に合わせて働き方なども臨機応変に変えられるとよいでしょう。

 現在の勤務先を辞めた後、再び正社員で働いても構わないと考えられるなら今の仕事を3年と言わずに退職して、ゆっくり休まれて転職という考え方もありだと思います。

この記事の著者
深野康彦

ファイナンシャルプランナー。ファイナンシャルリサーチ代表。1962年生まれ。クレジット会社を経て独立系FP会社に入社、96年に独立。30年以上の実績を持つ日本のFPの草分けの一人。さまざまなメディアやセミナーを通じて家計管理の重要性や投資のあり方を発信するとともに相談業務も行っている。

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