澤上篤人「トヨタはEVで大復活を遂げる」…ゴーン日産「利益追求主義」と相反する王者の戦略でひっくり返す
日本経済再生のために最も必要なことは何か。近年、繰り返されるこの問いに対し、キャリア50年超、わが国長期投資の “顔” ともいえる澤上篤人さんは、ずばり、民間部門の「自助自立」だと答える。具体的にはどのようなことなのか。企業と地域の再生という2つのテーマで語ってもらった。
中京経済圏を再生させたトヨタ自動車の “深謀遠慮”
トヨタのある名古屋、中京エリアの経済が一時の不況を脱し、再生の兆しが見受けられるという。トヨタがEV(電気自動車)の開発促進と目標販売台数を上方修正したこと、それだけでなくハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、さらには燃料電池車(FCV)への開発投資も継続すると発表し、EVを含めた全方位戦略を示したことで、中京圏に数多く存在する自動車関連産業が活気づいたためだ。
単に自動車をつくるだけではない。そこには自動運転をはじめとする先進運転支援システムの構築という、自動車以外の周辺産業を巻き込んだ大きなビジョンが描かれている。各企業で求められる人材も、従来のメカニックに強い人材に加え、電気系統や情報技術に優れた人材にまで広がっているという。
ここ数年、世界の自動車産業のトレンドは、言うまでもなくガソリン車からEVへのシフトチェンジにあった。そんな中、世界の主力メーカーがこぞってEVを前面に打ち出すのと比べ、世界最大の自動車メーカーであるトヨタは慎重で、動きの遅さに多くの批判が集まっていた。だが、トヨタは下請けを含めた系列企業だけでも莫大な数に及び、その経営方針は地域経済に絶大な影響を及ぼす。いかに世の中のトレンドが変わっていると言っても、拙速な動きはできないのだ。