まさかの形勢逆転! ロシア・プーチンのしたたかさ…冬になったらウクライナは終わる
ロシア軍はなぜ、全力を出さないのか
2月開戦直後から日本においても連日のように報道されたウクライナ情勢への関心がスッカリと薄らいでしまった。現代社会のスピードの速さは世界中を震撼させた出来事さえ一瞬で風化させてしまうものだ。
ロシア軍は当初のキエフ侵攻は失敗に終わったものの、いつの間にかウクライナ東部地域を掌握し、その侵攻範囲を徐々に拡大しつつあるようだ。ウクライナとロシアの軍事力の差が戦闘の長期化に伴って表面化してきていると言えるだろう。
ここまで不可解であったことは、ロシア側が戦闘開始後に見せた意外な脆弱性だ。たしかに、ウクライナは旧ソ連の中でも2番目の軍事大国であり、同国軍はロシアのクリミア併合後はドローンなどの現代戦に適合した能力を完備している。そして、ロシア軍がウクライナ軍の戦闘力を軽く見積もり、奇襲を仕掛けるために何の準備をしていなかったとしても、だ。実に不可解な現象であった。
7月27日、このような疑問に対する一つの回答がNATO国防大学のレポート(「Russia’s military after Ukraine: down but not out」)からもたらされた。同レポートによると、ロシア軍は全力を出し切っておらず、その軍事力の再構築は進んでおり、さらなる軍事侵攻のために備えているのではないか、というのだ。そして、空軍力は保持されており、ロシアはより精強な軍事力を再建すると警告している。
ただし、筆者はロシア軍が全力を出さない理由は、NATO関係国への再侵攻自体を目的としたものではなく、NATO国防大学が指摘したような再侵攻の懸念をNATO諸国に抱かせることにこそあると推察する。
軍事侵攻に際して、ロシアは最初から手の内を全て見せないことによって、西側諸国に対してさらなる軍事侵攻をチラつかせて交渉を有利に進めることを狙ったのではないか。仮にそうだとすると、NATO国防大学の分析は正鵠を得ているものの、その優れた分析行為自体がプーチン大統領の術中にあるのではないかとすら思えてくる。