日韓賃金大逆転! それでも「韓国はまもなく崩壊する」と信じてやまない、ネトウヨと嫌韓本の悲しい末路
韓国に抜かれ、台湾に迫られ、そのうち中国にも…アジアの中の日本の実情
「日本はアジアの一等国である」と胡坐(あぐら)をかいているうちに、日韓の平均賃金が逆転したという報道が盛んになっている。統計の取り方にもよるが、少なく見積もって韓国の平均賃金は日本と同水準と見て間違いない。また「最低賃金」では、韓国では約1010円に引き上げることが決まっているのに対して、日本のそれが961円(2022年・厚労省発表)であり、明確に逆転が起こっている。
ゼロ年代後半にGDPで日本が中国に追い抜かれた時、「一人当たりGDPでは日本がまだまだ何十倍も上」という強弁が多く見られた。しかし、あれから十年以上が過ぎ、日本の一人当たりGDPは概ね3万9000ドル、中国は1万2500ドルで1/3程度までその差が縮まっている(為替レートによりこの限りではない)。韓国は言うに及ばず、3万5000~3万6000ドルというところに迫っており、一人当たり購買力平価GDPではより日本に接近しているという分析もある。「韓国よりも豊かだから、まだ大丈夫、まだ大丈夫」と言っていたらそうではなかった、という笑えないオチになりつつあるのが昨今の情勢だ。
韓国では労働組合の組織力や政治力が日本より強く、恒常的にストライキが起こって、労働者が賃上げを要求しているという趣旨の報道をよく見る。が、実際に私は韓国に長く通っているが、ストライキのせいで大都市の交通機関が麻痺していたり、市民生活に重大な支障が起こっている現場に出くわしたことはない。だが、各種の労働争議に関するデータを見ても、日本ではストがほとんど起こらないのに対し、韓国の労働争議は凄まじい件数があり、この労働者による実力行使が雇用者側に賃上げ努力を強いている部分は極めて大きいといえる。
韓国映画「パラサイト」の格差社会イメージがシニア層、保守層で独り歩き
日韓の賃金逆転(ないしは賃金同水準)は、韓国の労組の能力以前に、そもそもの韓国経済の高い成長率が前提となっている。日本がほぼゼロ~1%未満の成長だった21世紀の約20年間、韓国のそれは約2~5%の水準だった。流石にコロナ禍があった2020年はマイナス成長だったが、2022年は2.7%成長を見込んでいる(韓国中央銀行)。日韓の平均賃金が近接しているのは、韓国経済の成長は当然のことだが、世界中が成長しているのに日本だけが現状を維持して横ばいだから、という単純な理屈にすぎない。このままでは早晩、韓国よりも一人当たりGDPが2000ドルから3000ドル劣後するとみられる台湾にも追い抜かれるであろう。「日台逆転」も秒読みに入っている。
にもかかわらず、「韓国は日本よりも遅れていて貧しい」というイメージがとりわけ日本のシニア層、特に保守層に強い。世界を席巻した映画『パラサイト』を筆頭にして、劇中で描かれた韓国の格差社会というイメージが独り歩きしているのだろう。しかし格差社会を映画の主題として取り扱うのは他国でも普遍的だ。
サンダンス映画祭で絶賛された米映画『ウィンターズ・ボーン』を始めとして、イギリスの炭鉱街の悲哀をコメディとして描いた『ブラス!』、もはや古典となった『フル・モンティ』もこの系統の作品である。南米で大成功したアルゼンチン映画『ボンボン』も経済破綻後の同国の格差のただなかにある中年男が主人公だ。アジアではインド映画『きっと、うまくいく(英原題・3 Idiots)』も熾烈な競争社会への批判、若者の自殺問題の実態が克明に描かれている。格差による貧困は世界共通の話題で、韓国だけで映画化される専売特許ではない。