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ESGの本物とニセモノを見分けるポイントは?~布石を打ってきたか、専門家はいるのか

もはやESGのラベルだけで投信が売れる時代ではない

 1カ月ほど前の当コラムへの寄稿「『ESGブーム』もうすぐ終わる~躍った投資家が知る本物とニセモノ」で、筆者は市場の流行語としての「ESG」(環境・社会・企業統治)という言葉はもうすぐ消えるだろうと指摘した。流行が去って初めて、投資や融資の判断に気候変動や人権尊重などESGの本質的な要素を組み込んだ資産運用会社と、ブームにのってファンドを売っていただけの金融機関が、はっきりと分かるだろうと予想した。

 この考えは今も変わらないし、むしろ補強されてもいる。往年の著名株式ストラテジストで「ESG」や「サステナビリティ」、それらの情報を開示する「統合報告書」に否定的な言説を唱えていた人物が、ここにきてESGに関する経営コンサルティング会社を立ち上げ会員を募り始めた。経験則に従えば、こうした時局迎合的な動きが見られるようになると、ブームは確実に終わる。

 ただ、企業評価や投融資にESG的な視点を取り入れる動きがなくなることはない。どんなに株主の利益を増やすことが大切とはいえ、工場排水をそのまま河川に垂れ流す企業は存続が許されない。南アフリカが長年続けた人種隔離政策(アパルトヘイト)に関しては、世界中の機関投資家が同国でビジネスをしている企業への投資を敬遠した。「ESG」という言葉を使わなくても、こうした環境・社会重視の視点は過去から現在に至るまで間違いなく存在し、将来に向けて強化されることはあっても廃れることはない。

 重要なことは、そうしたESG要素をどのように分析するか、すなわち専門性だ。「ESG」のラベルを付ければ投資信託が売れた時代に、資産運用会社や金融機関はどれほど専門性を磨いてきたのか。

4割近くが専従スタッフ無しという日本のESG運用会社の現実

 この点で、じっくり読み返したい調査報告がある。金融庁が今年5月に公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2022」だ。資産運用業が銀行や証券会社に従属した業務から独立し、成熟した産業への脱皮を促すための業界調査だ。20年版から数えて3度目の発表だが、回を追うごとに内容が厳しくなっている観がある。

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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