「あんたら金ファミリーか!」岸田の”ドラ息子”に政界大分裂! 慶應→三井物産の政治素人「未知すぎる実力」

はっきり言って一般人です…まさか本当にやるとは

「噂にはなっていましたが、まさか本当に息子さんを首相秘書官に任命するとは思いませんでした」

 筆者と情報交換を密にしている保守系無所属のベテラン地方議員からの知らせ。もちろん10月4日の岸田文雄首相(65歳)による人事発令の報道後、ということで教えていただいた情報だが、朝から外出中で知らなかった筆者も驚いた。

「それも政務担当ですよ。息子さんは岸田首相の秘書ですけど、政治や経済のエキスパートでも国政と直接的に関わるような経験を持つ官僚でもありません。はっきり言って、一般人です」

 岸田首相は息子の岸田翔太郎氏(31歳)を首相秘書官に任命した。政務担当秘書官は総理大臣のブレーンを担う。翔太郎氏は筆頭政務秘書官である嶋田隆氏(経済産業省出身)とともにその中枢を担うことになる。

「はっきり言わせてもらえば、本格的な政治経験のない一般人です」

ベテラン議員「ちょっとどうかと思う」

 ベテラン議員からすればそうなのかもしれない。首相秘書官とは正式には「内閣総理大臣秘書官」と呼ばれる。国家公務員であり、「内閣総理大臣に附属する秘書官」と内閣法第22条に定められている。現在の定数は8人(内閣官房組織令第11条では5人)であり、政務担当1~2名、事務担当6名が通例である。翔太郎氏は政務担当となる。

「これまでの内閣では専門的な官僚や経験豊富な事務方が担ってきました。政務はなおさらです。もちろん官邸のための秘書ですから、首相と気心が知れた人物が任命されることが多い、それは官邸の仕事をスムーズに遂行する上で必要なことです。しかし息子さん、それも父親の議員秘書をしただけの子というのは、ちょっとどうかと思うのです」

 翔太郎氏は慶應義塾大学を卒業後、総合商社の三井物産勤務を経て岸田事務所の公設秘書となった。実は岸田首相も銀行員を経て父である岸田文武議員の秘書をしている。メディアによっては世襲を見越しての人事ではないかという憶測もある。

「世襲は岸田さんだけの問題ではないのですが、いきなり政務秘書官はやり過ぎだと思いますし、難しいとも思います」

支持率の悪い中でやることではない、普通は任命しない

 秘書とつくが秘書官はただの首相のスケジュール管理係ではない。官邸と内閣、各党との政策調整や連絡調整なども行う。事務担当の秘書官は省庁(外務、財務、総務、経済産業、防衛、警察庁)出身者だが、政務担当の秘書官は首相と国家機密も共有する。

「筆頭政務が加わるとはいえ、親子でそれはどうかと思います。党内はもちろん、官僚だっていい顔しないと思いますよ。このような党内情勢、支持率も悪い中でやることではないですよ」

 岸田内閣の支持率は30%前後まで落ちている。旧統一教会の問題や円安、さらには賛否両論の安倍晋三元首相「国葬」で発足後の最低記録を更新し続けている。

 旧知の野党系の地方議員にメールを投げるとさらに厳しい声が直接電話で寄せられた。

「私物化ですよ。普通は任命しないでしょう。自民党にも官僚にも、まともな人材がいないのでしょうか。そう思われても仕方がない人事ですよ」

 ただ筆者が考えるに、高齢の政治家や政治関係者ばかりの内閣で31歳の若手がいるということは救いかもしれない

岸田親子の ”官邸の私物化” に反発必至「金ファミリーか!」

「若ければいいというものではないでしょう。2020年に秘書になったばかりですよ。それで、いきなり首相秘書官、それも政務秘書官でしょう、独裁国家じゃあるまいし」

 選挙で選ばれたわけでも、試験を通ったわけでもなく官邸のブレーン的立場となる。制度上は問題ないが、さすがに政治的には未経験に等しい「実の息子」が政務秘書官となると支持率低下の中、公私混同といった反発も予想される。

 革新系の地方党幹部となるとさらに辛辣だ。

「世襲というより金ファミリーと同じですよ。岸田親子で官邸を私物化するようなものです。彼(翔太郎氏)である必要性の根拠は何なのですか」

 金ファミリーとは北朝鮮の金正恩一族のことだ。さすがに強烈過ぎる例えだが、「根拠」と言われるとなるほどとも思う。選挙で選ばれたわけでも、試験を通ったわけでもなく首相の一存で決められる秘書官、それが実の息子。法的に問題はないとはいえ、道義的、政治倫理的には納得できないという一般国民もあるだろう。

 しかし見方によってはその「若さ」を買う向きもある。自民党の若手地方議員は期待できると話す。

政治一族4代目「プリンス翔太郎」未知すぎる能力

「同世代として心強いです。政治は与野党ともに高齢者が牛耳っていますからね。公私混同だの、世襲だのと批判されるのも、経験が少ないことを指摘されることも当然ですが、それでも貴重な若手の起用。本音は身内以外から抜擢するのが最良だとは思いますが、私は抜擢そのものは支持します」

 自民党員という立場の声だけに差し引く部分はあるが、彼のように政治に無関心とされる世代の政治参加に対する歓迎はもちろん、若きホープ、政治一族4代目となる翔太郎氏の未知数の能力に期待する人もあるかもしれない。

 政務担当秘書官に大抜擢、いきなりの注目を集めることとなった岸田家のプリンス、翔太郎氏。そのプレッシャーはいかほどのものか。任命責任はもちろん、父親である岸田首相である。このサプライズ人事、政権にとって吉と出るか、凶と出るか。

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この記事の著者
日野百草

1972年生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経て国内外における社会問題、政治倫理を中心に執筆。大学院で芸術学を専攻、昭和史における人物評伝およびフィギュアスケートなどの舞踏芸術に関する論考も手掛ける。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。著書『評伝 赤城さかえ 楸邨・波郷・兜太に愛された魂の俳人』他。

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