1ドル200円時代へ…「物価は上がるが、給料は上がらない」未知なる恐怖社会へ日本が突入

11月2日、日銀の黒田東彦総裁が「金融政策の枠組みを柔軟化することは選択肢としてありうる」と述べたことで、円相場は一時1ドル147円台まで値を戻した。10月には6兆円超の費用が、ドル売り円買いの市場介入のため投じられたとされる。その後、11月10日に発表された米消費者物価指数(CPI)の結果によって円は138円台まで戻しているが、今後、為替と株価はどのように動いていくのか。「日本の国力を考えれば円安は妥当」と話す経営コンサルタントの小宮一慶さんにうかがった。
政府・日銀の為替介入、当面は150円がラインか
10月21日、150円台まで下落していたドル円相場が一気に146円台まで戻しました。政府は、公式には為替介入を表明していないものの、相場の動きを見ていると介入は間違いありません。その後、財務省は10月ひと月では過去最大の為替介入を実施していると発表しましたが、一連の流れを見ていると、政府にはある程度想定している為替レートがあるんじゃないかと見ています。もちろん、最終的には市場が決めるものですが。
先日の米CPIの結果を受け、さらに円高に振れているとはいえ、中長期的な円安基調はそう簡単には変わらないと思います。円安が徐々に進んでいるのであれば、まだ企業も国民も対応策を講じることができるかもしれません。ただ、いまの円安の動きはかなり速い。そのため影響を最小限に抑えるべく、政府の委託を受けて日銀が介入しているというのが現状です。
前回、9月の大規模な介入は1ドル145円程度のときに行われました。いまは150円なので、介入点を下げているわけです。この流れを踏まえても、今後も150円をラインとするかはわかりませんが、あくまで “現時点では” 150円が一つのラインになっていると考えた方がいいでしょう。
気になるのはアメリカの動向です。バイデン大統領は10月、「ドルの強さについて懸念していない」とドル高を容認する発言をしました。通貨の強さは自国経済の強さの象徴だと考えるバイデン大統領による、中間選挙を見据えた発言です。ただ、あまりにも急激にドル高が進むと、アメリカ経済にも悪影響を及ぼします。特にアメリカの輸出やインバウンドの面が顕著です。
日米金利差4%以上で円キャリー取引が増加、さらに円安に拍車が
私の会社を例に出すと、新型コロナウイルス感染症が流行する前までは毎年2月にグアム(アメリカの準州)でお客さまに集まっていただき経営者合宿をしていました。コロナ前には50人ほどの方が来られていました。それがコロナで行けなくなり、いよいよ来年2月には復活させられるかと思いましたが、コロナ前に使っていた同じホテルでもドル高とアメリカ国内のインフレにより、円で換算すると倍くらいに高くなっているわけです。2020年には、1ドルは100円を少し上回るくらいのレートでしたからね。