「死人がゴロゴロ出る相場」鬼の岸田政権、最後の置き土産に国民絶望…日経平均一時大暴落、新しい資本主義とは何だったのか
株価の大暴落が始まり、窮地に陥る人が続出している。今年1月の新NISA(少額投資非課税制度)スタートを機に市場に飛び立った人々だ。岸田文雄首相が推進する「資産所得倍増」を思い描いてきたものの、急速に進行する世界同時株安に「新NISAなんてやらなければ良かった」「もはや国による被害者だ」といった怨嗟の声が相次ぐ。経済アナリストの佐藤健太氏は「トリガーとなったのは日銀による『植田ショック』」だと指摘するーー。
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岸田首相と植田和男総裁のコミュニケーション不足
やはりな、という思いを禁じ得ない。それは岸田首相の経済音痴ぶりと日銀の植田和男総裁のコミュニケーション不足だ。8月5日は日経平均株価が前週末比4451円安となり、過去最大の下げ幅を記録した。下落率はマイナス12.40%で、下げ幅は1987年10月の「ブラックマンデー」(3836円48銭)を超える衝撃的なものとなった。
ニューヨーク株式市場もダウ工業株平均が大幅続落し、世界同時株安が進む。日経平均株価は7月11日に史上最高値の4万2224円2銭をつけていたが、これは円安効果で押し上げられていた面がある。半導体・AIバブルと言われたように、そこまで景気は良くないのに今年春と初夏の株価は上昇が続いた。
そのタイミングで日銀の植田総裁が7月末に踏み切ったのが追加利上げだ。政策金利を0.25%程度に引き上げる利上げを決定し、「2%の物価目標の持続的・安定的な実現のために利上げ実施が適切と判断した」と語った。利上げと量的引き締めによって消費の足が引っ張られるとの見方が根強い中、植田総裁は市場との念入りなコミュニケーションを欠いたまま強行したのだ。
市場は売りが売りを呼ぶ「パニック安」となった
その一方で、景気減速への懸念が生じている連邦準備制度理事会(FRB)には早期利下げを求める声が強まる。現在の政策金利は5.25~5.50%となっているが、9月にも0.75%利下げする可能性がある。日米金利差の縮小は円相場に反映される。一時は1ドル=160円台まで円安が進んでいたが、急速にドル売り円買いが進行し、8月5日の東京外国為替市場は1ドル=141円台まで値上がりした。今年1月以来、7カ月ぶりの高値水準だ。
米国やアジア、欧州の株安には、経済指標が市場予想よりも悪く景気後退リスクが高まる米国の事情や中東情勢の緊迫化の影響もあるだろう。だが、そのトリガーを引いたのは「植田ショック」にある。急激な円高に引きずられるように株価が急落し、市場は売りが売りを呼ぶ「パニック安」となった。
「新しい資本主義」とはこのことだったのか
金融引き締めによって日本経済にマイナスな影響を与えた過去の失敗を繰り返しているように思えてならない。
岸田首相は日銀と協調し、大幅な賃上げや株価上昇を経済・金融政策の成果として強調してきた。「経済の岸田」を自認し、「明日は今日よりも良くなると感じられる国を目指す」と豪語していたのを覚えているだろう。それだけに今回の大暴落には失望が広がる。
振り返れば、岸田首相は2021年の自民党総裁選の際に「令和版所得倍増計画」を掲げ、新しい資本主義が必要だと説いた。その後、いつの間にか所得倍増は「資産所得倍増」に修正されたが、我が国の個人金融資産約2000兆円を貯蓄から投資へ誘導する「資産所得倍増プラン」を策定した。
2022年5月には英ロンドンの金融街シティで「Invest in Kishida(岸田に投資を!)」と呼びかけ、「日本経済はこれからも力強く成長を続ける。安心して日本に投資してほしい」と煽っている。プランの要諦は「1億総投資家」を目指し、老後生活に不足するお金は運用によって自分で確保してほしいということだったのだろう。
大暴落しても市場へのメッセージが弱い日本政府
日本証券業協会によれば、証券大手10社のNISA口座は6月末時点で計1520万口座と前年同時期から3割も増加した。2019年に金融庁のワーキンググループがまとめて話題となった「老後2000万円問題」を念頭に、老後生活に必要な資金を確保するためNISAを活用している人も少なくないだろう。