小泉進次郎総理、待望論「菅義偉前総理が進次郎についた」情報…なぜ他の候補者よりも有利なのか「水面下で着々と次期総裁選びが進んでいた」
9月の自民党総裁選に岸田文雄首相(現総裁)が出馬しないと表明した。パリで開催されたオリンピック効果で直近の支持率は微増したものの、不人気宰相の交代を望む声は強く“敵前逃亡”したとの見方がもっぱらだ。数々の増税プランや社会保険料アップという「負の実績」をあげた岸田首相の次は誰がリーダーになるのか。経済アナリストの佐藤健太氏は「『政治とカネ問題』に象徴される自民党のマイナスイメージを払拭することに加え、負担増に苦しむ国民の評価を考えれば、小泉進次郎氏の一択だ」と見る。
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7月から始まっていた次期総裁選び
「総裁選で自民党が変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ」「総裁選を通じて選ばれた新たなリーダーを一兵卒として支えていくことに徹していく」。8月14日に記者会見した岸田首相は、このように不出馬の理由を説明した。長々と話すわりに中身がないのはいつものことと言える。実際には、単に再選を目指して出馬したところで“勝ち目”がないと判断しただけのことだろう。
岸田内閣の支持率は超低空飛行を続けてきた。自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題の発覚後は、起死回生を狙って自らが率いてきた「岸田派」(宏池会)の解消を決断。後を追うように最大派閥「安倍派」(清和政策研究会)や「二階派」(志帥会)なども解散を余儀なくされた。
これだけでも自民党内のベテランには“重罪”と映っていたが、さらに首相は政治資金規正法の改正をめぐって麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と亀裂が生じてきた。党内のパワーバランスは大きく崩れ、岸田氏は“裸の王様”状態となっていたと言える。最高権力者が孤立する中、自民党内では“主”を抜きにした次期宰相選びが7月から進められていたのだ。
「岸田外し」は水面下で着々と進行してきた
自民党の歴史を振り返ると、現職の党総裁が再選を目指して総裁選で敗北した例はない。福田赳夫首相(現職総裁)が1978年に大平正芳氏に敗れたことはあるが、それは予備選挙の結果を踏まえて本選を辞退したものだ。プライドが高い岸田氏としては汚名を残したくなかったのだろう。「岸田外し」は水面下で着々と進行してきたと言える。
その先鞭をつけたのは、菅義偉前首相だ。6月23日の「文芸春秋電子版」オンライン番組に出演し、次期総裁選では首相交代が望ましいと狼煙をあげた。
拳を振り上げた菅前首相の言動で注目すべきは…
菅前首相は政治資金の裏金問題についても「首相自身が責任を取っておらず、不信感を持つ国民は多い」「このままでは政権交代してしまうと危機感を持っている人がどんどん増えている」などと事実上の退陣要求をしたのだ。
それと連動するように地方の自民党議員からも“岸田おろし”の勢いが増し、菅前首相は萩生田光一前政調会長や加藤勝信元厚生労働相、武田良太元総務相らと会食を重ねる。以前から岸田首相と菅氏は不仲とされてきた。岸田氏は非主流派の動きを警戒し、菅前首相との面会に赴く配慮を見せてきたが、菅氏サイドは「2人の会話は全く弾まない」(側近)とバッサリ。菅内閣時代に「岸田氏が政権批判したことを忘れていない」(同)とされ、今度は菅氏が岸田内閣に終止符をうつため動き出したという。
拳を振り上げた菅前首相の言動で注目すべきは、「ポスト岸田」候補への評価である。菅氏は先のオンライン番組で、まず石破茂元幹事長を「期待できる方だ。いろいろなことがあっても主張を変えないところが良い」と評している。茂木幹事長については「大変な状況の中で党運営をしっかりやっている」、加藤元厚労相には「仕事をきちんとできる方。だから(菅内閣の)官房長官をお願いした」とコメントした。
「菅氏が推しているのは小泉氏だ」
この3人までは単に能力や仕事を評価しているのだが、同じ神奈川県選出の河野太郎デジタル相や小泉進次郎元環境相にはリーダーとしての期待を込めていることがわかる。河野氏には「突破力を持っている」と評した上で、将来の宰相への「可能性はある」と太鼓判を押した。さらに小泉氏については「(将来の首相として)多くの人が認めているのではないか」と踏み込み、「改革意欲に富んでいる人だ」と絶賛した。
全国紙のベテラン記者は菅前首相による人物評をこう読み解く。「一見するとわかりにくいが、菅氏が推しているのは小泉氏だ。菅政権末期、首相官邸に何度も通って自分に寄り添ってくれた小泉氏が可愛くて仕方ないのだろう」。菅氏は萩生田、武田、加藤氏らとの会食に小泉氏を同席させることも多く、“後見人”としての存在感は増している。岸田氏が2021年に菅内閣を追い込んだように、「菅―進次郎」コンビは本気で城を取り返すつもりのようだ。
小泉氏、二つのウィークポイント
小泉氏の武器は、何といっても国民人気が高い点にある。主要メディアの世論調査では「次の首相」のトップ3に必ず名があるのだ。石破元幹事長がトップで、小泉氏が2位のケースが目立つが、1年前には逆転していたこともある。裏金問題で自民党が逆風を受けて選挙での敗北も続く中、次期自民党総裁に求められるのは国民的人気があることだ。改革派議員として菅前首相と共同歩調をとってきた小泉氏は、その意味でも「有資格者」と言える。