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セブン買収提案、株主メリットあれば提案は受け入れられる可能性…裏には「はっきりとした同社の改革遅れ」

 近年、株主総会は随分と緊張感の高まる場となった。それもこれも、海外のアクティビスト(物言う株主)が、企業買収指針を契機に、買収提案など、企業の経営陣に対話の機会を求めるなどのアクションを起こすからだろう。そんなアクティビストと日本企業の攻防について、日経新聞の編集委員である小平龍四郎氏が解説するーー。

目次

「古き良き日本企業」も資本市場では脇が甘い

 アクティビスト(物言う株主)の経営への影響力が強まっている。最近の事例をあげれば、カナダのコンビニエンストア大手、アリマンタシォン・クシュタール(ACT)からの買収提案を受けたセブン&アイ・ホールディングスや、世界的に有名なコレクションを誇る美術館の休館を決めたDICの例があげられる。どちらも古き良き日本企業としては悪くない経営をしており、改革もそれなりには進めてきた。しかし、生き馬の目を抜く資本市場の視点に立つと、いかにも脇が甘く、つけ込むスキは大きかった。経営改革を「市場時間」に合わせるべきだ。

 セブン&アイについては数年来、サード・ポイントやバリューアクトといった名うての米アクティビストが経営改革を迫ってきた。競争力の下がった百貨店や総合スーパーから撤退し、収益力の高いコンビニ経営に特化すべきというのが共通する主張だった。

 セブン&アイも無策だったわけでは決してない。労働組合との対立を乗り越えそごう・西武をファンドに売却。イトーヨーカ堂など総合スーパー事業のIPO(株式新規上場)も表明し、なんとかアクティビストの要求をかわしてきた。

ACTは2020年にもセブン&アイに買収を提案

 企業統治(コーポレートガバナンス)の面でも、15人の社外取締役メンバーのうち過半の9人が社外。外国人と女性もいる。指名と報酬の2委員会メンバーは委員長を含め過半を社外が占めるなど、ガバナンスの面では及第点と言えた。

 それでも株価の動きは鈍く、世界の同業者に比べて割安に放置されていた。積極果敢な買収戦略で知られるカナダのACTはそこをついた格好だ。

 ACTは2020年にもセブン&アイに買収を提案しており、その時には取締役会の議論だけで拒否した。今回は株価の低迷に加え、経済産業省が「企業買収における行動指針」を策定し、M&A提案が握りつぶされないようにしたこともあり、セブンは社外取締役で構成する特別委員会で提案を検討することにした。検討の結果、買収提案が真摯なものであり株主にとって十分にメリットがあると判断されれば、提案は受け入れられる可能性が高い。

買収提案を引き寄せたのは「セブン&アイの改革遅れ」

 仮に、ACTのほかにもう1社、買収提案が出た場合、セブン&アイはput up for sale (売りに出ている状態)と見なされ、どちらかへの売却を決めなければならなくなる。独立を守るという選択肢はなくなる。

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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