ガバメントクラウド、3つの大問題…「日本はアマゾンの奴隷に」低いセキュリティ、高すぎる使用料でも「結局納期も守れず」
政府が情報管理の効率化のために整備する「ガバメントクラウド」。省庁、自治体が個別運用してきた管理システムを、クラウド上の共通サービスに移し2025年度までに運用経費を20年度比で3割減らす目標だ。しかし、これがなかなかうまくいってない。なぜなのか。関係者を徹底取材した、元経済誌プレジデント編集長と作家の小倉健一氏が解説する。全3回の第3回目。
目次
ガバメントクラウド3つの大問題
河野太郎デジタル大臣率いるデジタル庁が進めるガバメント(自治体)クラウドは、2026年3月末までの移行ばかりが優先される一方で、多くの課題が無視されたままだ。例えば、大きな問題として、以下3つのことが起きることがわかっており、関係者は一様に頭を抱えている。
- アマゾン(AWS)が9割以上独占し、国産クラウドは実態上締め出されている
- 安全保障、セキュリティの問題
- 貿易収支におけるデジタル赤字が5兆円超となり、さらに増す
この3つの問題。実は根っこは一つなのだが、丁寧に説明していこう。
まず、アマゾンが9割以上独占し、国産クラウドは実態上締め出されている問題だ。これまで政府が選んだクラウドサービスの提供事業者が、外国企業4社に限られていた。さすがにその点は問題視され、2023年11月28日には、初めて国内のクラウド事業者(さくらインターネット)が選ばれたが、デジタル庁関係者によれば、次のような問題が顕在化している。
「自治体でのガバメントクラウド先行事業の中間報告では、利用されているサービスの一覧が公開されましたが、デジタル庁が必要だというサービスの80%は使われることがないと言われています。これが国内企業の参入を難しくしており、さらにいえば、外国企業4社のうち3社の参入も阻んでいます。アマゾンが自治体クラウドを寡占してしまっている理由です」
日本の重要情報を海外のIT企業に預けていいのか
次が、安全保障・セキュリティの問題だ。
日本の重要なインフラや非常に大切なデータを、今は海外のIT企業に預けている状態である。これは、EUやアメリカと比較して、非常に危険な状態だ。
住民の個人情報を含む重要なデータを外国企業が運営するクラウドサービスに置くことが、本当に問題ないのかという議論は十分に行われるべきだ。関係者は「欧米諸国では、どのデータをどこに置くかについての議論がすでに数年前から始まっています。重要なデータは、自国で制御できるクラウドに置く国がほとんどです」と指摘している。
EUでは、公開情報など比較的セキュリティレベルの低いものと、個人情報・機密情報などのレベルの高い情報では、全く違う扱いをしている。セキュリティレベルの低い情報については、アマゾンやマイクロソフトなど外資の業者に扱わせて、コストを抑えられるように競争原理が導入されている。しかし、セキュリティの高いものは、ソブリンクラウド(域内事業者)と呼んで、自国の業者による運営をしている。
これは、アメリカと未来永劫、蜜月状態が続くのかという外交上の懸念もあって、有事の際は、国内法制できちんと管理できる(取り締まることができる)業者を選んでいるということだ。