斎藤元彦知事が恐ろしいことを起こしてる…「報道特集」テレビ屋・村瀬キャスターの偏見に唖然!国際NGOは日本のネット環境より記者クラブを問題視

 11月17日投開票の兵庫県知事選で、パワハラ疑惑などをめぐり知事不信任決議を議決された斎藤元彦氏が返り咲きを果たした。序盤の劣勢を挽回した斎藤氏には「SNSの拡散で追い風が吹いた」「新聞・テレビというオールドメディアの報道に有権者が嫌気をさした」といった分析がなされている。そんな中で、11月30日に放送された「報道特集」が物議を醸している。司会の村瀬健介キャスターは、知事の疑惑を告発した後に亡くなった元県民局長に対する公益通報者保護について、斎藤知事から「人ごとのような回答しかありませんでした」と強く批判。「本当に恐ろしいことが起きている」とも述べた。しかしこの報道は本当にフェアなのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が改めて解説するーー。

目次

司会の村瀬健介キャスターや解説員による勝手な思い入れ

 テレビがオールドメディアだと批判は、単純にテレビの歴史が古いということだけでなく、一部の番組作りが化石のような思考回路でつくっているからではないのだろうか。兵庫県知事選で再選された斎藤元彦知事をめぐり、11月30日放送のTBS系「報道特集」では、知事の選挙戦の内幕や疑惑について改めて追及し、この内容が物議を醸している。ニュース特集を通じて、司会の村瀬健介キャスターや解説員による勝手な思い入れの強い内容が展開されていた。

 それらの問題があると思われる言葉を拾っていくと、以下だ。

<(立花孝志氏が立候補し、YouTube上で「告発文書は名誉毀損」「斎藤氏ははめられた」などと自身の考えを繰り返した)その中で「情報を隠蔽した百条委員会とオールドメディア」対「真実を伝えるネット」という対立構造がにわかにつくられ、うねりになっていった>

<公益通報者保護という観点からは本当に恐ろしいことが起きているんです。公益通報をした人が亡くなるという痛ましい事態に発展した上にですね、亡くなった後も選挙の中で、そして今もですね、その方のプライベートな情報とされるものが流布されています。知事としてどのように対応するか、考えがあるのかと直接聞きましたけれども。VTRにあったように、他人事のような回答しかありませんでした。これは、知事本人に対する批判が書かれた文章がまかれたときに、すぐに知事の権限を使って犯人探しをして、会見で嘘八百だとか、公務員失格などと激しく反応したこととあまりにも違う対応ではないかと思うんですね>

ネットを規制したい政府やオールドメディアには不都合な真実

 他にも、以前に書いて原稿では触れなかったが、

<民主主義は完璧な制度ではありません。もう1度、民主主義の目指すものは何なのか、私たちメディアを含めて見つめ直す時だと思います>という番組の締めについても、当たり障りがないような文言に見えるかもしれないが、番組を通してみたときの結論としては危ういものがある。

 くわしく解説していこう。

 民主主義は、言論の自由がなくては、成立しないものだ。では、言論の自由を守るためには何が必要かと言えば、自分の意見を言える自由であり、国家の都合で勝手に検閲をしたり、権力者に気に食わない情報を出すのをやめさせてはいけないということだ。この当たり前のことが、このTBSの報道特集はわかっていないし、村瀬キャスター、解説員もまったくの無理解のまま、ニュースを扱ってしまっていることが怖いということになる。

 国際的NGO法人「フリーダムハウス」が発表した『ネットの自由 2024』によれば、日本は、100点中78点であった。「インターネットの環境(速度・質、料金など)」「オンライン情報の多様性と信頼性」「政治的・社会的な問題に関して、利用者の動員力、コミュニティ形成力、キャンペーン力を阻害するような状況の有無」で高い得点をあげた。これらは、SNSやネットニュースを規制したい自民党や立憲民主党の幹部には、目を背けたくなるような調査結果であろうが、日本のネットニュースの信頼性は高いのである。

国際NGOが批判するのはネットではなく記者クラブ

 報告書はこう指摘している。

<日本政府からの圧力や、記者クラブ制度(政府機関や企業組織が、会員であるジャーナリストや報道機関にニュースへのアクセスを制限する制度)が、メディア内の自己検閲文化を助長している。記者会見に招待されるジャーナリストの数を減らすような戦術は、特に汚職、セクシャル・ハラスメント、公衆衛生問題、公害について報道するときに、主流メディアの経営に頻繁に適用される>

むしろ、この報告書が厳しく糾弾するのは、オールドメディアの自己検閲文化なのである。今回の兵庫県知事選挙においても「報道しない自由」を連発した挙句に、「疑惑報道」で延々と印象操作を行った。この報告書の指摘と重なる部分は多分にあろう。

違法情報と有害情報の違い

 さて、本題を述べる。以前にも軽く触れたが、選挙において、政治的な討論において、テレビでもネットでも、どこでもいいのだが、「何をしてよくて、何がしてはいけないのか」ということをもう一度整理しなくてはいけない。

 そこには、違法情報と、有害情報の違いというものがある。

 違法情報とは、法律に違反している情報のことだ。たとえば、他人の著作物を無断でアップロードする行為や、詐欺を助長する情報などがこれにあたる。このような情報は、法律で明確に禁止されているため、取り締まる必要がある。

 一方、有害情報とは、人々に悪い影響を与える可能性がある情報のことを指す。たとえば、暴力的な映像や、特定のグループに対する差別的な発言が含まれる。しかし、有害情報が厄介なのは、「誰がそれを有害だと判断するのか」という点にある。

 有害情報を取り締まるには、何が「有害」なのかを決めなければならない。ここで問題になるのが、政府がその基準を決める場合だ。政府が「これが有害だ」と勝手に判断して取り締まるようになると、どうなるだろうか?たとえば、政府が自分たちに批判的な意見を「有害」とみなして削除することも可能になるかもしれない。これでは、自由な意見交換や表現の自由が失われてしまう危険がある。

違法情報については取り締まるべきでるすでに取り締まっている

 だからこそ、有害情報については慎重に扱う必要がある。もちろん、子どもが簡単に暴力的な映像を見られるような状況は避けるべきだが、まずは、当事者であるネット業者、家庭などでインターネットの使い方を工夫することで対応する方が望ましい。政府が勝手にこれはダメだという方法論では、いつしかそのルールが拡大解釈されていくものだからだ。

 一方で、違法情報は、すでに法律で「これはしてはいけない」と決まっているため、取り締まる基準が明確だ。だから、社会の秩序を守るために、違法情報については取り締まるべきである。

 このように、違法情報と有害情報の違いを理解し、それぞれに応じた対策を考えることが重要だ。表現の自由を守りながら、安全で安心な社会をつくるためには、何を取り締まるべきで、何は自由にしておくべきかを冷静に判断する必要がある。

有害情報は民間に協力を求めるべき

 有害情報については、政府が一方的に取り締まるのではなく、民間同士の話し合いや訴訟で解決する方が望ましい。なぜなら、有害情報の判断基準は主観的であり、人によって何が有害かの考え方が異なるためだ。この問題を一律に取り締まろうとすると、必要以上に情報が規制され、表現の自由が脅かされる可能性がある。

 たとえば、インターネット上で誰かを傷つけるような発言があった場合、その発言を受けた人がその投稿者に対して謝罪を求めたり、訴訟を起こすことで解決する道がある。また、こうしたケースでは、SNSやプラットフォーム運営者が仲裁役を果たすことも可能だ。多くのプラットフォームでは、利用規約に基づいて不適切な投稿を削除したり、アカウントを停止したりする仕組みが整っている。

 さらに、民間業者間の協力によって有害情報への対策を講じることもできる。たとえば、検索エンジンのフィルタリング機能や、子ども向けに制限されたネット利用環境の提供など、技術を活用した対策が進んでいる。このような取り組みは、政府の規制を必要とせず、利用者の自由を尊重しつつ社会的な影響を最小限に抑えることができる。

 有害情報は、被害を受けた当事者が行動を起こすことで問題解決を目指すべきである。これは、被害者の権利を守りつつ、社会全体の表現の自由や情報の多様性を維持するために重要である。違法情報のように法律で明確に禁止されたものとは異なり、有害情報は主観的な要素が強いため、その対応方法も多様でなければならない。民間の努力や技術、そして個々の話し合いによる解決を優先することで、自由で健全な情報社会を実現することができるのだ。

番組が「有害」だと勝手に判断し、断罪を繰り返す

 さて、番組の内容に戻るが、このTBS「報道特集」は、番組が「有害」だと勝手に判断し、断罪を繰り返す構成になっている。その上で「民主主義の目指すものは何なのか」という問いを発してことが、いかに危険な論理になっているかに気づいてほしい。勝手な解釈で「〇〇は有害だ」と、公共の電波を使う先に民主主義が目指すものはない。番組は、双方の意見をきちんと平等に報じるか、もしくは、斎藤知事や立花孝志氏が犯したと思われる「違法部分」についての批判であるべきだ。

 勝手な解釈による一方的な断罪を繰り返した先にこそ、民主主義の危機がやってくるのである。「報道特集」は、自分のやっていることの危険性に気づかなくてはいけないだろう。弱いものの味方のふりをした、弱いものの敵なのだ。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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