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リニアストップの川勝氏は去ったのに…今度は一体誰が待ったをかけているのか!静岡県は日本の未来を潰すつもりか

 リニア中央新幹線の建設工事を巡り、JR東海と真っ向から対決していた前静岡県知事・川勝平太氏。問題発言を連発した後、退任したが、公認となった鈴木康友氏が知事となっても一向に着工が始まらない。一体何が起きているのだろうか。作家で経済誌プレジデントの元編集長小倉健一氏が解説するーー。

目次

もし川勝氏が妨害をしていなければ、あと3年後には開通予定だった

 川勝平太前知事の退任後、新しい知事となった鈴木康友氏は、リニア中央新幹線の工事を進めるために次々と動き出している。しかし、そのスピード感に対し、市町村長や住民からは賛否が分かれている。

 特に、静岡県内での工事に関しては、川勝前知事が残した課題が大きく影響している。水資源への影響や南アルプスの環境問題、流域自治体との対話不足などが問題視され、「解決」を要求された結果、新しく鈴木康友知事を迎えた2024年10月現在になっても、工事着手には至っていないのだ。

 リニア中央新幹線の南アルプストンネル静岡工区は、元は2027年の開業を目指し、2017年に工事契約が締結されている。もし川勝氏が妨害をしていなければ、あと3年後には開業を迎える時期のはずだった。

専門家が『安全性は確保されている』と説明したにもかかわらず

 川勝前知事は、リニア工事で出た土を安全に保管する計画についても批判を繰り返してきた。専門家が『安全性は確保されている』と説明したにもかかわらず、『危険だ』と発言し、県民の不安を煽った。

 トンネル掘削により生じる発生土は、例えば同じ南アルプストンネルの山梨工区では道路や防災拠点の整備などにも活用されたが、静岡工区では掘削現場近くの安全な地域に発生土置き場(盛土)として保管することになっている。これは静岡工区の掘削現場が山奥すぎることや工事用車両の運行による環境負荷を低減することを踏まえた判断であるが、実際の候補地は地元要望や地権者の意見も踏まえた上で、環境負荷に配慮して過去に電力会社が使用した工事ヤード跡地や人工林等を選定している。また、工事で出た土は、単に積み上げるのではなく、崩れないようにしっかり固めて保管されるよう設計されている。

 排水設備を備えるよう設計され、そして施工に際しても締固めを行うなど、適切に設計・施工・管理されるものであることは知っておきたい。

  2022年8月に現地を視察した川勝前知事は、盛土は適切な設計がされており安全性は十分確保されるという技術的な説明がなされたにもかかわらず、メディアの前で「深層崩壊の検討がされておらず、残土置き場として不適切。熱海土石流災害を考慮しても極めて危険だ」と発言したのである。

単に不安を煽る非科学的な発言

 テレビや新聞は、しばしば当事者の発言をそのまま報道するため、この様子を見た静岡県民の不安は高まっただろう。しかし、これは単に不安を煽る非科学的な発言であった。

まず、静岡工区の発生土置き場についてだが、地図で確認すれば明らかなように南アルプス山脈の真ん中に位置し、周囲に住民はいない。仮に大雨や断層の崩壊が起こっても、人命に関わる危険など発生しないのだ。

 そもそも、もし仮に土を放置したとしても大きな問題はなさそうな場所なのに、なぜ日本の行政は対策を強制するのか。このような無駄な対策は、例えば中部電力の浜岡原発でも見られる。原子力規制委員会から再稼働のためにさらに防波壁を高くせよと命じられたが、浜岡原発はすでに津波が現在の防波壁を越えても安全なように多重の対策が施されている。これ以上防波壁を高くしても、安全性は向上しないにもかかわらず、行政は時間と資金を浪費させている。

 盛土に関して静岡県は「熱海土石流災害」を教訓に、「静岡県盛土条例」を制定した。そこでは5年に1度の豪雨に耐える排水機能が求められているが、JR東海の設計するツバクロ発生土置き場は5年に1度どころか、100年に1度の豪雨にも耐えられるものとして設計されている。もっとも、この点について川勝前知事はのちに「いつ起こるか分からない災害は100年に1度ではなく、1000年に1度で考える必要もある」と自説を述べ、科学的工学的な議論を深めることなくすれ違い続け、時間を浪費しただけだった。

「大井川に流れる水は命の水だ!」

 残土置き場(盛土)が適切に対応されるとすれば、残る課題は「水資源の問題」であろう。川勝前知事は「大井川に流れる水は命の水だ!」と有権者に訴え続けたため、静岡県民の間でこの問題に対する不安が大きく増幅された。これについては、まず根本から考え直す必要がある。

 リニアの工事は東京から名古屋まで続いているが、水の問題を大きく取り上げているのは静岡県だけだ。

 これは単に川勝前知事がリニアを政治的な争点に利用して騒いだだけで、そもそもここで話は終わるはずだった。ところが、川勝前知事の執拗な主張により、JR東海は「大井川の水量が減少した場合はその分の水を戻す」という立場から、「工事でトンネル内に出た水をとにかく全量戻す」という姿勢に追い込まれたのである。

住民たちは『大井川の水が減る』という情報に不安

 私は10月5日に実際に南アルプストンネル山梨工区の工事現場を取材したが、ちょうど行われていたボーリング調査で出ていた水量は、一般的な水道の蛇口を捻った程度の量に過ぎなかった(これが川勝前知事が繰り返し「静岡の水が山梨側に引っ張られる可能性がある」と難癖をつけ、実施そのものを拒んできたボーリング調査の実態である!)。また、住民たちは『大井川の水が減る』という情報に不安を抱いている。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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