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爆上がりするガソリン価格に国民悲鳴…経済アナリスト「175円から10円程度上昇する見通し」貧乏日本にメガトンパンチ

 ガソリン価格が高止まりしている。1月8日発表された最新のレギュラーガソリン小売価格(同6日時点)は昨年末から5円近く値上がりし、全国平均は1リットルあたり180.6円となった。8週ぶりに値上がりが止まったように見えるが、これは年末に石油元売りに対する補助金が縮小され、その反映がなされていたことが背景にある。経済アナリストの佐藤健太氏は「1月16日からは補助金がさらに縮小され、ガソリン価格は合計10円程度の上昇となる見通しだ。物価高に国民生活が打撃を受ける中、ゾンビ税制の早期見直しに動かない政府は『民のかまど』を理解していない」と指摘する。

目次

物価上昇の収束は見通せず、値上げは常態化

 資源エネルギー庁が1月8日発表した石油製品価格調査によれば、レギュラーガソリンの小売価格(1月6日時点)の全国平均は、昨年12月23日時点の180.6円と同じだった。ただ、この時は前週の175.8円から4.8円も上昇しており、それが横ばいだっただけに過ぎない。しかも、最新の小売価格を都道府県別に見ると「横ばい」は7県、「値下がり」は16府県にとどまり、24都道府県で「値上がり」しているのだ。

 高止まりの背景には、政府が2022年1月からガソリン価格抑制のため石油元売り各社に支給している「ガソリン補助金」の縮小を昨年11月に決定したことがある。これまでは1リットルあたり175円程度に抑えるよう補助金で調整してきたのだが、同12月19日から補助率を見直し、さらに1月16日以降の補助縮小も決まった。マイカー利用の多い年末年始のタイミングで1リットルあたり合計10円程度も高くなるのだから、たまったものではないと感じる人は多いはずだ。

 帝国データバンクが昨年12月26日発表した調査結果によると、2024年に値上げした食品は1万2520品目に上る。平均値上げ率は17%だ。原材料の高騰や人件費、物流費の上昇が影響し、家計の負担増はあらゆるシーンで感じられるところだ。さらに2025年1月から4月に値上げが決定している飲食料品は6000品目を超えるという。ひと山越えたと思っていたら2024年と同等か、それを上回る値上げラッシュが待ち構えているのだ。

年末年始のタイミングで政府が「ガソリン価格の上昇」を容認

 農林水産省の食品価格動向調査を見ると、昨年12⽉23⽇〜25⽇の野菜(8種類)の店頭価格はキャベツが1キロあたり453円となり、平年の3.3倍の高値だった。低温・少雨が影響しているとみられるが、レタス(1キロ)は平年の2.3倍、白菜やダイコンも1.9倍となっている。物価上昇の収束は見通せず、値上げの常態化が人々の生活に打撃を与え続けている。

 こうした状況に国民があるにもかかわらず、年末年始のタイミングで政府が「ガソリン価格の上昇」を容認するのだから理解に苦しむ。たしかに累計8兆円以上も燃料価格の抑制策に費やし、財政負担が大きいことはわかる。脱炭素の流れに逆行するという指摘もその通りだろう。

複雑な税制を整理すべきなのは至極当然

 ただ、そもそもガソリン価格の構造自体が不可解なものであり、それを野放しにしてきた政治の怠慢は見逃されるべきではない。

 言うまでもなく、ガソリンの小売価格には本体価格に本則税率(28.7円)に加え、1リットルあたり25.1円の上乗せ分(旧暫定税率)が含まれている。そこに石油石炭税2.8円、さらに消費税10%が加わる構造なのだ。1974年に道路建設・整備のために導入された旧暫定税率は2009年に一般財源化されたが、その後も維持され続けている。税金の上に消費税を課すという二重課税の指摘も放置されてきたのだ。国民民主党の玉木雄一郎代表(役職停止中)は「古くさい50年前にできた『ゾンビ税制』をやめ、新しい時代にあった税制に変えませんか」と呼びかけているが、複雑な税制を整理すべきなのは至極当然だろう。

 自民党と公明党、国民民主党の幹事長は昨年12月、旧暫定税率を見直すことで合意し、来年度税制改正大綱には「いわゆる『ガソリンの暫定税率』は、廃止する」と明記された。旧暫定税率が廃止されれば、国と地方は年間で約1.5兆円の減収になるという。ただ、2022年1月からの燃料価格抑制策に累計8兆円以上も投じてきたことを考えれば、ガソリン価格を安くした方が国民は助かるのではないか。

本当に財源はないのか

 旧暫定税率を廃止すれば、財源の穴が将来世代のツケに回るという人がいるが、補助金を垂れ流す方はそうではないという理屈がわからない。旧民主党政権のように「打ち出の小槌」を論じるつもりはないが、本当に財源はないのか。不要・不急の事業見直しはできないのか。会計検査院は昨年11月に2023年度の決算検査報告を提出したが、税金の無駄遣いや改善を指摘したのは345件、約650億円に上っている。石破茂首相は全力を挙げ、米国のように税金の無駄遣いを根絶すべく徹底検証する必要があるだろう。

 残念なのは、与党の税制大綱には旧暫定税率の廃止がいつになるのか明示されていない点にある。「ゾンビ税制」を見直す動きは国民民主党の役割が大きいが、具体的な実施時期が決まらなければガソリン高に対応できない状況が続く。「年収103万円の壁」見直しも重要と言えるが、石破首相には早期に政治決断を求めるべきだろう。それは与党の税制調査会というよりも、国のトップリーダーの責務だ。

ガソリン税は廃止時期を示さない一方で

 税制改正大綱にはガソリン税や車体課税について「中長期的な視点」から検討するとの考えが示されている。経済産業省のサイトを確認すると、「車体課税については、カーボンニュートラルの実現に積極的に貢献するものとすべく、国・地方の税収中立の下で、取得時における負担軽減等課税のあり方を見直すとともに、自動車の重量及び環境性能に応じた保有時の公平・中立・簡素な税負担のあり方等について、関係者の意見を聴取しつつ検討し、令和8(2026)年度税制改正において結論を得る」という。

 つまり、ガソリン税は廃止時期を示さない一方で、車体課税は政府が目標とする「2050年カーボンニュートラル」実現に積極的に貢献し、税収中立の下で2026年度に結論を出すとしているのだ。石破政権は少数与党のため、来年度予算案は野党の一部が賛成しなければ可決できない。このため、国民民主党などが旧暫定税率の廃止時期を強く求めれば飲まざるを得ないはずだが、いまだ「中長期的な視点」から抜け出せていないのは不可解だ。

 2008年4月に一時期限切れとなった旧暫定税率が財政事情などを理由に続いてきたように、「廃止」と明示されたところでゾンビのように復活するかもしれないと疑いたくもなる。複雑な自動車関係諸税の全体を見直すのは賛成だ。ただ、結果としてガソリン税本体が上がる可能性もないとは言えない。基本政策や主張が異なるのかもしれないが、野党は一致団結して早期決着を政府・与党に求めるべきだろう。

 石破首相は1月6日の年頭記者会見で、少数与党であることを踏まえて「野党にもこれまで以上に責任を共有してもらうことが求められている」と述べた。まさに、その通りだ。「自民党1強時代」は何でも反対していれば批判をあまりされなかったかもしれないが、これからは政策を実現してこそ評価される。2025年は、国民のために動く野党の真価が問われる年になるだろう。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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