消費者からは“ボロカス”生産者からは「よく言った」備蓄米放出のJA福井の苦悶…コメ高騰、悪いのは「農家の手足縛った」自民と農水省

備蓄米がついに放出される。スーパーによっては税込みで5キロ5000円を超すような状況にもなっている。日本人の食事に欠かせない米の大騒動になぜ政府はここまで放置したのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。
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これは自民党と農水省の無策のせいなのに
全ては自民党と農水省の長年続く無為無策なのだが、米価格の高騰は国民の怒りを大きな買い、その一部がJAへと向かっているようだ。
全国のスーパーの店頭からコメが消えた「令和の米騒動」において新米流通後もコメの価格高騰が収まらず、国は備蓄米21万トンを市場に放出する方針を決定した。JA福井県五連の宮田幸一会長はこの国の方針に対して当初反対の立場を表明していたが、後に受け入れる方針へと転換した。
宮田会長は1月の会見で「農業団体としては備蓄米放出に反対していきたい。もし足らないのであれば生産調整をしている面積を増やし、主食用米を作れる状態にして需給バランスを合わせてもらう」と明確に備蓄米放出への反対姿勢を示した。この発言の背景には「生産者の安定した収入のため」という考えがあった。
なぜ備蓄米放出に反対なのか
2月25日に開催されたJA県五連の定例会見において宮田会長の姿勢に変化が見られた。会見では「政府の備蓄米の放出については、消費者の目線があり、コメが高くなると消費が落ち込むところもある。政府の方針に従って受け入れをしたい」と述べた。
この方針転換について宮田会長は「1月に備蓄米放出反対と言ったら全国から色んな反響があった。生産者からは『よく言った』と言われたが、消費者からはボロカスに言われた」と胸の内を明かした。さらに「生産者の先頭に立ってコメの価格を安定化させるのがJA福井県の狙いで、基本的には備蓄米放出に反対していかなければならないが、国が放出を決めた。国の立場もあるので、それはそれで我々も従っていかなければならない」と苦渋の表情を浮かべながら説明した。
JA福井県としては基本的な備蓄米放出への反対姿勢は維持したものの、国の決定した方針に従う形で受け入れを決断した。この決断は消費者からの厳しい批判を受けたことが大きな要因となった。宮田会長の一連の発言からは生産者の利益を守りたいという農業団体としての立場と消費者の声や国の方針との間で揺れ動く心情が読み取れる。最終的には消費者への配慮と国の決定を尊重する判断に至った経緯が明らかになった。