日本ブランドに手を伸ばす香港の巨大投資ファンドが…その正体は「救世主」か「悪魔」か

日本企業に対する「物言う株主」の影響力が増しているが、中でも際立つ存在が、香港を拠点とするオアシス・マネジメントだ。単なる短期利益の追求にとどまらず、企業統治の改善や経営の本質に切り込む姿勢が特徴的なオアシス。先日、都内で行われたカンファレンスでは、同社のCIOセス・フィッシャー氏が、日本企業の変革に向けた考えを熱弁した。オアシスは一体どのような戦略を描き、日本市場に影響を及ぼそうとしているのか。日経新聞の編集委員である小平龍四郎氏が解説していく──。
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オアシスは「稼ぐこと」だけが目的ではない
アクティビスト(物言う株主)。この言葉を経済メディアで見かけない日はほぼない。株主が企業に利益還元や経営改革、成長戦略を求める光景はごく一般的になった。とりわけ注目される投資家が香港を拠点とするオアシス・マネジメント。一体、何者なのか。
3月初旬、世界の年金基金や資産運用会社で構成する国際コーポレートガバナンス・ネットワーク(ICGN)の東京カンファレンスが東京・六本木で開催された。国内外から集まった350人余りの参加者のひとりに、オアシスの最高投資責任者(CIO)、セス・フィッシャー氏の姿もあった。
単に参加しただけではない。オアシスはカンファレンスの有力スポンサーの1社に連ね、会期中に「エンゲージメントが日本をどう変えるか」と題するセッションも主催。取り組んでいる花王への経営改革などについて、ICGN理事会議長のクリスティーナ・チョウ氏を相手に一時間に渡って熱弁をふるった。もはや、ブームに乗じて日本で一稼ぎをもくろむだけの投資家ではない。会場のだれもが確信した。
「オアシスは、最高投資責任者として当社を率いるセス・フィッシャー氏が2002年に設立しました。オアシスは現在、優れた投資・運用経験と専門知識を持つ50名以上のプロフェッショナルを有し、香港、東京、オースチン、ケイマン諸島のオフィスで事業を運営しています」。オアシスのホームページにはこんな説明がある。日本語のほかにも、英語、中国語、韓国語に対応しており、アジアを中心とするグローバルな活動を指向していることが分かる。