電撃辞任!江藤農水相の残念発言、嘘だったというヤバすぎ釈明に国民怒り…コメ高騰迷惑な自民党と農水省

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 コメ価格が記録的な高騰を続け、庶民の食卓を直撃している。5キロあたり4000円超えという異常事態は、単なる市場の気まぐれではない。これは明らかに、政府による農政の長年にわたる失敗と怠慢の帰結である。にもかかわらず、現政権の中枢から聞こえてくるのは、驚くべき責任転嫁の声ばかりだ。そんな中で「私はコメは買ったことがありません。支援者の方がたくさんくださるので、まさに売るほどある」という江藤拓農林水産大臣の発言が波紋を呼んでいる。ネットで発言が炎上すると今度は「コメは定期的に買っている。先週も買った。実態と違うことを言ってしまい遺憾」などと発言が嘘であったと釈明。「会場が盛り上がっていたので“ウケ”を狙って強めに言った」とし、国民の怒りを増幅させた。一体何が起きているのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。

目次

大臣としての責任感欠如を如実に示す無神経さ

 江藤拓農林水産大臣の耳を疑う発言に、国民は怒りを通り越して呆れ果てている。米価高騰が家計を直撃し、食卓が悲鳴を上げているこの非常時に、一体この男は何を言っているのか。

「私はコメは買ったことがありません。売るほどあります、私の家の食品庫には…」(5月18日、自民党佐賀県連政治金パーティでの江藤大臣の発言)

 権力者である自民党議員になると、国民の血税で賄われる職に就きながら、個人的な支援者から食糧を当然のように恵んでもらうのか。住民同士が生産した農作物を融通し合うのと、権威を笠に着て個人的な便益を受けるのとは、わけが違う。事実なら、これは信じがたい行為であり、政治家として一線を引くべき事柄だ。地方の農家も、このような権威に騙されてはいけない。自民党政治家や農水官僚は、表面上は人の良さそうに見えるかもしれないが、長年にわたり日本の農家の競争力を組織的に奪い続けてきたのが、農水省であり、その権威である江藤大臣に代表される自民党農林族だ。長年の政策の誤りを認めず、国民を欺き、誤魔化しを続けるのが、目の前の人の良さげな政治家の本性である。政治資金規正法に抵触する可能性に気づいて、慌てて嘘をついている疑いすらある。

 全国のスーパーでコメの販売価格は、政府が備蓄米を放出し始めても、去年の2倍程度の高値が続いている。江藤大臣は「31万トンを出したが、価格が下がらない。大変責任を感じている」と述べたという。責任を感じているというのであれば、なぜ米価高騰に苦しむ国民の気持ちを逆撫でするような発言をするのか。その無神経さは、大臣としての責任感の欠如を如実に示している。

謎釈明「玄米でもぜひ消費者の方々には手に取ってほしいということ」

 釈明に立った江藤大臣は「玄米でもぜひ消費者の方々には手に取ってほしいということを強調したかったのでそういう言い方をした」などと弁解したという。本質から目を逸らした苦し紛れの言い訳に過ぎない。また、「実際には定期的にコメは買っている」「私の実態と違うような言い方をしてしまってお騒がせしてしまったことは大変遺憾に思っている」とも述べたというが、自らの虚言癖を露呈しているだけである。

 国民が知りたいのは、大臣がコメを買っているかどうかではない。高騰した米価をどうにかしてほしいという国民の悲鳴にどう応えるのかということだ。消費者への配慮が足りなかったと認めたようだが、足りないのは配慮だけではない。国民生活に対する想像力、そして自らの発言に対する責任感全てが欠如している。発言を撤回せず「修正」にとどめるという態度からも、その無責任体質が伺える。正確性を欠いたのであれば、それは明らかな虚偽の発言だったということだ。国民が少しでも安くコメを手に入れるために必死でスーパーを探し回っている現状を知っていながら、よくもあのような言葉を口にできるものだ。

流通のせいで価格高騰が続いているかのようなプロパガンダ

 このような状況の中、一部からは流通段階で価格に不当な上乗せが行われているために店頭価格が下がらないという論調も流れている。備蓄米の流通において、卸売業者がスーパーなど小売業者に販売する際の上乗せ金額が通常のコメに比べて高くなっているという指摘があるらしい。

 これを根拠に、流通のせいで価格高騰が続いているかのような印象操作が図られている。しかし、これはプロパガンダに過ぎない。価格高騰の原因は、流通の仕組みにあるのではない。単純に、市場に出回るお米の量が、消費者が買いたいと考える量に比べて圧倒的に少ないせいである。需要に対して供給が追い付いていないのだ。需給バランスが崩壊していることが根本原因であるにもかかわらず、流通段階に責任を押し付けようとするのは、自らの政策失敗から国民の目を逸らすための姑息な手段でしかない。

 また、JAが備蓄米を利益なしの価格、つまり必要経費だけを上乗せして販売しているなどと主張しているが、これも愚かな話である。

企業努力をすべきは農水省自身である

 JAがいくら利益を取らずに、あるいは赤字で流通させようとも、最終的にお米を消費者が購入するのは市場原理によって決定された価格なのである。JAがビジネスの仕組みを全く理解できていない証拠である。卸が儲かっているということは、JAを通したビジネスでは農家は儲からないということである。

 江藤大臣は「通常のコメのディールとは違うことを理解して、できる限り企業努力をしてもらいたい」と卸売業者に求めたという。しかし、企業努力をすべきは農水省自身である。半世紀にわたり減反政策で生産意欲を削ぎ、補助金漬けで競争力を奪ってきたのは農水省と自民党である。その結果、日本の農業は国際競争から完全に立ち遅れ、わずかな需給の変動で価格が乱高下する脆弱な構造に成り下がってしまった。農家は、今後はまともなビジネスができないJAに頼ることはない。消費者も嬉しい、農家も嬉しい事態がやってくる。

 農業の改革について考えるとき、市場のしくみによる方法と、補助金などで守るやり方のどちらが効果的か、多くの研究が参考になる。世界のいろいろな国を調べた研究では、貿易の自由化やルールの緩和といった市場ベースの改革が、農業の成長や生産の効率アップ、市場全体の改善につながっていることが確認されている。

貿易の自由化によって農業の全体的な効率が向上した研究

 たとえば、アフリカのサブサハラ地域における市場改革を分析したBrungerら(2002)やKherallahら(2000)、100カ国以上を対象としたValenzuelaら(2008)の研究では、貿易自由化などの政策が農業の付加価値や市場の効率性を高めたと報告されている。ブラジルを取り上げたRadaとValdes(2012)は、市場志向の政策に転換した後、農業全体の生産価値が年間3.79%成長したと述べている。チリについて調べたBasとLedezma(2007)も、貿易の自由化によって農業の全体的な効率が向上したことを示したものだ。これらの研究は、経済的に不利な国や多様な条件下でも、市場の力を使う改革が効果的であることを明らかにしている。

 一方、補助金や関税などの保護主義的政策については、その効果が一時的に限られるか、または長期的には逆に成長をさまたげる恐れがあると指摘されている。たしかに一部の分野では短期的な支えになることもあったが、全体としては市場のゆがみを生み出し、資源が効率よく使われなくなる。補助金に頼ると、農家が工夫を重ねたり生産性を上げようとする意欲が下がりやすくなる。

既得権益化された現在の非効率なシステムを守りたいという本音

 関税で外国の農産物を排除すると、競争がなくなり、結果として国内産業の技術進歩やコスト削減が進まず、かえって弱くなる。

 日本のお米農政は、長年こうした補助金と関税に頼る保護主義的な手法をとってきたが、それは多くの学術研究が非効率だとするやり方と重なる。市場を重視する改革が世界のさまざまな地域で成果を上げている今、日本だけがその原則から外れると考える理由はどこにもない。

 江藤大臣が言う「生産現場を守りたい」という言葉は、結局のところ、補助金と関税という名の保護主義によって既得権益化された現在の非効率なシステムを守りたいという本音の言い換えに過ぎない。真に日本の農家を守るということは、補助金漬けから脱却し、市場競争の中で自立し、世界の需要を取り込める強い農業を育成することであるはずだ。しかし、農水省も自民党も、その方向へ舵を切る覚悟がない。

 国民の信頼を失った政治家に結果を出すことなど不可能である。自民党県連の政治資金パーティーでこのような発言をする神経からも、国民よりも党や支援者の顔色を伺っている姿が透けて見える。支援者がたくさんコメをくれることと、国民がコメを買えないことは全く別の問題であるにもかかわらず、その区別すらつかない。このような人物が農水大臣として日本の農業政策を担っていること自体が、異常事態なのである。農家にとっても、消費者にとっても、農水省と自民党は迷惑であり、邪魔な存在である。彼らの政策は、日本の農業を衰退させ、国民生活を苦しめるだけだ。この無能で無責任な体制を終わらせない限り、日本の農業、そして食卓に未来はない。

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