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玉川徹氏「政治部が認めちゃだめだ!」テレ朝官邸キャップを生放送でブチギレ!「石破首相のウソ」ジャーナリズムの魂を売り渡したメディアの末路

(c) AdobeStock

 テレビ朝日の情報番組『モーニングショー』で、石破茂首相の定額給付金に関する発言の変遷を巡り、政治部記者に対してコメンテーターの玉川徹氏が異例の苦言を呈した。この一幕は、日本の大手メディア、特に政治部が抱える深い問題、すなわち「権力監視」というジャーナリズムの根幹の喪失を浮き彫りにした。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏は、この事態をジャーナリズムの「自殺」とまで断じ、政治記者が権力と癒着し、国民の知る権利に応える役割を果たせていない現状を厳しく批判する。本稿では、千々岩森生記者と玉川氏のやり取りを詳述するとともに、その背景にある日本メディアの構造的欠陥、記者クラブ制度の弊害、そして海外の先行研究が示すジャーナリズムの腐敗の実態を多角的に分析するーー。

目次

政治部たちがそれを認めちゃだめなんだよ!

 テレビ朝日『モーニングショー』で起きた一件は、報道番組として異常な光景であった。発端は、石破茂首相の答弁の変節だ。首相は国会で、全国民への2万円の定額給付金を『政府として検討したことはございません』と明確に否定した。ところが、わずか2日後、一転して給付の実施を表明した。この明らかな矛盾について、同局の政治部官邸キャップである千々岩森生記者は『政府の政策は、決まるまで言えない部分がある。検討していると言った瞬間にぶわーっと走りますから』と、あたかも政権の都合を代弁するかのような解説を行った。

 この発言に対し、コメンテーターの玉川徹氏は声を荒げた。『政治部たちがそれを認めちゃだめなんだよ!』。千々岩記者が『それは百も承知で…』と反論しようとすると、玉川氏は『百も承知ならそんなこと言わない方がいいと思うよ!』と言葉を遮った。

 その瞬間、スタジオは凍り付き、出演者は押し黙った。司会の羽鳥慎一アナウンサーさえ言葉を継げず、約10秒間、咳払いだけが響く異様な沈黙が続いた。この沈黙は、権力監視というジャーナリズムの根幹を忘れ、取材対象と一体化した記者への痛烈な批判が突き刺さった結果であり、日本の大手メディアが視聴者の信頼を失った瞬間を象徴していた。

 政治記者の理想像は常に以下のように語られているのではないか。

「権力に屈せず、国民の知る権利に応えるために闘う」「国民の知る権利に奉仕する」という姿だ。しかし、現実はそんな理想とは似ても似つかぬ「腐敗したドブ沼」にあったようだ。

記者から牙を抜き取る装置

 永田町を取材拠点とする政治部記者は、特殊なムラ社会の住人となる。首相官邸や国会に常駐する記者クラブは、情報の独占と引き換えに、記者から牙を抜き取る装置として機能してしまう。番記者制度は特定の政治家への密着を通じ、客観性を麻痺させる。取材対象から得られるインサイダー情報は、記者に万能感と特権意識を植え付ける。

 他社の記者と情報をすり合わせる『合わせ』と呼ばれる悪習は、報道の競争原理を骨抜きにし、横並びの馴れ合いを生む。作家の相場英雄氏は時事通信の経済部記者だった頃、大臣からコメントを得て速報しようとした際、政治部記者に『合わせがまだだ』と肩を掴まれ制止されたという(※)。真実をいち早く報じるという報道の原則よりも、記者クラブ内の閉鎖的な秩序維持を優先する歪んだ文化がそこにはある。

 政治部は社内におけるエリートコースと見なされ、幹部への登竜門と化している。出世のためには、担当する大物政治家との良好な関係構築が不可欠となり、批判的な記事を書くことは自らのキャリアを危うくする行為に等しい。

なぜ政治部記者は政治家に転身するのか

 政治部出身者が後に政治家や政治評論家に転身する例が後を絶たないのも、取材者と取材対象者の境界線が融解した癒着体質の象徴と言える。こうして記者は、権力の監視者から、権力構造を維持するための歯車へと姿を変えていく。

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