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トランプが台湾を見捨てれば、台湾は1カ月以内に陥落する…専門家が警鐘 有事の危機でも「パンダ外交」に踊らされる日本の平和ボケ

 不動産バブルの崩壊や深刻なデフレに見舞われ、先行き不透明感が増している中国経済。年金制度崩壊の危機も囁かれる中、漂流する世界2位の経済大国が向かう先はどこなのか。独裁色を強める習近平政権が追い詰められて台湾を進攻する「暴走シナリオ」とは。日本と中国双方の政治・経済に精通したオピニオンに定評がある東京財団政策研究所 主席研究員の柯隆氏に、詳しく話を伺った。短期連載全4回の第4回。(取材日:6月19日)

目次

米中貿易戦争を仕掛けたトランプの“致命的な勘違い”

――次に、米中関係についてお伺いします。トランプ氏が仕掛けた関税戦争は、今も続いています。この米中摩擦の現状と、今後の見通しをどうご覧になっていますか。

 アメリカによる対中関税戦争は、避けられないものだったと私は考えています。たとえば昨年1年間だけで、米中間の貿易不均衡、つまりアメリカにとっての貿易赤字は、約3,000億ドルにも上ります。これはトランプという人物からすれば、到底許せる金額ではありません。

 それに加え、中国市場の閉鎖性、金融機関への参入障壁、そして深刻な知的財産権の侵害。これらを総合的に考えれば、アメリカが強硬手段に出たのは当然の流れでした。

 ただ、今回、トランプ大統領は中国を甘く見ていたと思います。

「アメリカは張り子の虎だ」中国が勝利を確信した日

――甘く見ていた、とは?

 彼は政権2期目が始まるや否や、中国に対して145%という高関税を課しました。彼の頭の中では、「これだけの関税をかければ、習近平はすぐに折れて、謝りに来るだろう」というシナリオを描いていたはずです。

 しかし、習近平政権は、トランプ政権1期目の後の4年間で、トランプという人物を徹底的に学習していました。その結果、145%の関税に対して全く動じることなく、即座に125%の報復関税を発動した。これはトランプにとって完全に想定外の展開でした。

 普通、これだけの戦いをするなら、プランAが効かなかったときのためにプランBを用意しておくものです。しかし、トランプはプランBを持っていなかった。これが彼の最大の過ちです。慌ててジュネーブでの協議を呼びかけましたが、その交渉の仕方も拙劣でした。最初の協議の場で、アメリカ側は一方的に関税を115%まで下げ、わずか30%しか残さなかった。

 これを見た北京の交渉チームの士気は一気に上がりました。「勝った、勝った」と。中国国内のSNSは、「アメリカは張り子の虎だ」「習近平主席万歳」という声で溢れかえりました。

 この経緯を踏まえると、今後の展開が見えてきます。アメリカは、国内のインフレを懸念して、これ以上関税を上げることはできません。関税戦争は、ある意味で小康状態に入るでしょう。これからの米中対立の焦点は、関税ではなく、「レアアース」と「フェンタニル(合成麻薬)」という二つの問題に移っていきます。

国民の怒りを巧みに操る習近平のプロパガンダ術 中国社会の危うい熱狂

――しかし、迂回輸出を防ぐための周辺国への関税強化など、中国経済も大きな打撃を受けているはずです。それでも、この戦いは習近平の「勝ち」なのでしょうか。

 勝ちです。なぜか。ご指摘の通り、輸出企業は打撃を受け、多くの従業員が職を失います。普通の国であれば、その怒りの矛先は自国のリーダー、つまり習近平に向かうはずです。

 しかし、今の中国では違います。国民の怒りは、「あいつ(トランプ)が悪い」と、すべてアメリカに向かう。そして、「我々国民は一致団結してトランプと戦おう」という愛国主義的な論調に変わるのです。これは、巧みなプロパガンダによって世論がミスリードされている結果ですが、当の国民はミスリードされているとは微塵も思っていません。「これは正しい戦いだ」と信じている。この社会の歪んだ一面を、習近平政権は見事に利用しているのです。

“大切な軍事パートナー”ウクライナを見捨ててロシア側についた中国の本音

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この記事の著者
柯隆

柯隆(か・りゅう) 1963年中国・南京生まれ。88年来日、94年名古屋大学大学院、経済学修士号取得。長銀総研、富士通総研を経て、2008年東京財団政策研究所主席研究員に。中国政治、社会関連の著書多数。「『中国「強国復権」の条件』(慶応義塾大学出版会)が第13回樫山純三賞を受賞、近著は『ネオ・チャイナリスク研究』(2021年、慶応大学出版会)。日本と中国双方の政治、経済に精通したオピニオンに定評。

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