自民も都ファも立憲も「実質与党」の残念な現実…都議会のひどすぎる“馴れ合い構造”を新人女性都議が覚悟の暴露

 2025年6月の東京都議会議員選挙で、都民ファーストの会、自民党という二大勢力の候補を打ち破り、無所属で奇跡的な当選を果たしたさとうさおり氏。その異色の経歴の原点には、「貧乏子だくさん」の家庭で育ち、19歳で月500時間労働の末に過労で倒れたという壮絶な過去がある。

 大手監査法人での安定したキャリアを捨てて政治の道を選んだ彼女が掲げるのは、都政の「ブラックボックス」の解明と徹底した減税だ。既存政党の論理に縛られず、たった一人で都議会に乗り込んだ彼女は、停滞する都政にどのような風穴を開けるのか。その逆転戦略と覚悟の全貌に迫った。短期連載全4回の第3回。(取材日:7月23日)

目次

巨大な都庁と戦うための逆転戦略「無所属のほうが…」

――それはひどい話ですね。納税者として、自分のお金がどう使われたか分からないというのは。

 おっしゃる通りです。ちなみに、私が活動の拠点としている千代田区では、過去に不正があった反省から、補助金の支出先は全て公開しています。つまり、やろうと思えばできるんです。国ですら公開している。それなのに、なぜ東京都は「忙しいから」「支払い先が多いから」という理由で公開できないのか。それは単なる言い訳に過ぎません。

――ただ、さとうさんは無所属の1人会派です。大きな会派に所属している議員と比べて、やれることに制約があるのではないでしょうか。どうやって政策を実現していくおつもりですか?

 まず、当選1期目の1年生議員という点では、大きな党に所属していても、自分のやりたい法案をすぐに通せるわけではありません。むしろ、党の方針に逆らえず、賛成したくない議案にも「丸」をつけなければ除名されてしまう、といった党議拘束に縛られます。それならば、1年生のうちは何でも自由に発言できる無所属の立場のほうが、むしろやれることは多いと考えています。

本当の野党は消滅? 都議会のひどすぎる“馴れ合い構造”

――なるほど。

 それに、議会の大きな議題だけでなく、日常的な行政の多くは、議員と都庁の職員さんとの話し合いの中で決まっていきます。実は選挙期間中も、都の職員さんが「自分はこういう者です」とこっそり身分を明かして、街頭演説の場に会いに来てくれました。彼らも「上から降ってくる仕事だからやっているが、こんなの無意味だと思っている事業がたくさんある」「でも、自分たちの立場では言えない」と。そうした現場の職員さんたちの声を私が拾い上げ、議会の議論の俎上に載せていく。その地道な作業で、仕事は進めていけると信じています。

――情報公開という点では、小池知事も就任当初は「黒塗りの公文書をやめる」と宣言していましたが、結局あまり変わっていないという印象です。

 何も変わっていないと思います。黒塗りだったインクがもったいないから、白くなっただけ。実態は同じです。彼女はもはや、かつて批判していた自民党と一体化していますから。都議会を見渡しても、自民、公明、都民ファースト、そして立憲や国民民主党まで、大きな方向性では連携しており、本当の意味での「野党」がほとんど消え失せているのが現状です。

「予算が多すぎて使い切れない」の裏で…減税を阻む最大のカラクリ

――先日、SNSで「財政委員会に入れない」という趣旨の投稿をされていましたね。あれはどういうことなのでしょうか。

 都議会の常任委員会は、議案を専門的に審議する非常に重要な場で、議員は必ずどこか一つの委員会に所属します。私が訴えている減税などの政策について質問・議論するためには、国で言えば財務省や国税庁にあたる部署を所管する「財政委員会」に入る必要があります。しかし、委員会のポストは会派の議席数に応じてドント式で配分されるため、1人会派の私には議席が回ってこないんです。

――委員会に入れないと、質問すらできないのですか?

 本会議で質問する機会はありますが、無所属議員に与えられる年間の質問時間は、たったの13分です。4回ある定例会を全て合わせて、です。これでは実質的な議論は不可能です。だからこそ委員会での質問が重要なのですが、その機会が閉ざされている。さらに、予算や決算を審議する特別委員会にさえ、1人会派は参加できない。このような運用をしているのは、全国の地方議会でも東京だけです。このおかしな慣例を変えるために、都民の皆様に「おかしい」という声を都議会に届けてほしいとお願いしたのです。

――東京都は莫大な税収がありますが、減税は可能だとお考えですか?

 絶対にできます。都庁の内部からは「予算が多すぎて使い切るのが大変だ」という声が聞こえてくるほどです。

立ち入り禁止の“廃墟”に年間1億円 都内に眠る「無駄な資産」

――ただ、減税するとなると、必ずカウンターとして言われるのが、「財源はどこにあるの」という話です。当然、使うのは大変と言いつつも現状で予算は使っているわけですから、どこかを削減しなきゃいけないということになると思うのですが、どこを削減すればいいとお考えでしょうか?

 まず、都庁のプロジェクションマッピング事業や、各地の噴水など、本当に必要かどうか疑問な事業を見直すべきです。さらに私が注目しているのは、活用されずに眠っている「遊休資産」です。過去に予算をかけて作った施設や備品が、今はお蔵入りになって、どこにも貸し出されず、売却もされず、ただ維持費だけがかかっている。そうした資産が都内にはたくさんあるはずです。

――例えば、どういうものですか?

 かつて林間学校などで使われていた「少年自然の家」などが、老朽化して危険だという理由で立ち入り禁止になっているのに、年間1億円もの維持費がかかっている、といったケースです。

 なぜ売却したり解体したりしないのかと問うと、「あれは当時の住民の方が寄付してくださったものだから、気持ちとして残したい」といった、法律では測れない「情」の部分が絡んでくる。こうした、誰もが無駄だと分かっていながら、削ると誰かの票を失うかもしれないという「しがらみ」に縛られた予算を、一つひとつ丁寧に削っていく。そこから財源は生まれるはずです。

もう“バラマキ”はいらない 減税と福祉を両立させる「行政のOS革命」

――さとうさんは、政治家を志した原点として「女性が働きやすい社会の実現」を挙げておられます。こうした福祉政策を手厚くすれば、当然、行政の支出は増えることになります。これは、さとうさんが掲げる「減税」と矛盾しないのでしょうか?

 そこは、政策のやり方を変えることで両立できると考えています。例えば、育児政策について言えば、今の政策は「子ども1人あたり5,000円給付」といった、現金を配る「ストック型」の支援が中心です。しかし、私はそうではなく、日々の生活の流れに沿った「フロー型」の支援、つまり運用の仕組みを変えることにもっと予算を使うべきだと考えています。

――フロー型の支援というと、具体的には?

 例えば、保育園の利用方法をもっと柔軟にして、父親の職場近くの園と母親の職場近くの園を日によって使い分けられるようにしたり、学童保育の預かり時間や対象学年を拡大したり。こうした、親の手が足りない部分を具体的にサポートする仕組みです。

現金給付の非効率を断罪「現金を渡してもパチンコに…」

――現金給付を減らし、その分を仕組みの改革に回すということですね。

 そうです。結局、お金を渡しても、それが本当に有効に使われているか分からないケースがあります。私自身が貧困家庭の出身だから分かりますが、お金の管理が苦手な家庭に現金を渡しても、残念ながらパチンコなどに使われてしまい、結局、月末には生活が苦しくなるということが実際に起こります。これは生活保護だけでなく、あらゆる補助金で同様の問題が起きている可能性があります。

――なるほど。

 ですから、現金給付という形ではなく、サービスそのものを「現物支給」するようなイメージです。政府が、かつての地域社会や祖父母が担っていた役割、つまり「実家」のように子育てや介護を手伝う。その仕組みを作るためにこそ、予算を使うべきです。そうすれば、全体の支出を増やさずとも、より実効性の高い支援が可能になると考えています。

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