「独身者は税金を払うだけ」小池都政が生んだ“不公平感”を女性都議が糾弾 子どもがいるだけでなぜこれほど優遇されるのか

2025年6月の東京都議会議員選挙で、都民ファーストの会、自民党という二大勢力の候補を打ち破り、無所属で奇跡的な当選を果たしたさとうさおり氏。その異色の経歴の原点には、「貧乏子だくさん」の家庭で育ち、19歳で月500時間労働の末に過労で倒れたという壮絶な過去がある。
大手監査法人での安定したキャリアを捨てて政治の道を選んだ彼女が掲げるのは、都政の「ブラックボックス」の解明と徹底した減税だ。既存政党の論理に縛られず、たった一人で都議会に乗り込んだ彼女は、停滞する都政にどのような風穴を開けるのか。その逆転戦略と覚悟の全貌に迫った。短期連載全4回の第4回。(取材日:7月23日)
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「独身者は税金を払うだけ」小池都政が生んだ“不公平感”
――その考え方は、小池都政の福祉政策とは対照的ですね。小池都政は、子育て支援に莫大な予算を投じていますが、その手法はまさに現金給付が中心です。
はい。都の予算も1兆円から2兆円へと倍増しました。お金を使えばいいというものではない、と私は思います。その結果、恩恵を受ける子育て世帯がいる一方で、独身の男女からは「自分たちは税金を払うばかりで、何の恩恵も受けていない」という不満の声が私の元にも多く寄せられています。結婚しているか、子どもがいるかで、受けられるサービスに極端な差が生まれてしまう。そうした不公平感をなくしていく必要もあります。
――お話を聞いていると、さとうさんの目指す社会と、小池都知事の目指す社会は、アプローチは全く違うけれども、「女性が活躍できる社会」というゴールは同じなのかもしれない、と感じました。小池知事も、ご自身が子どもを持たなかった経験が政策の根底にあると言われています。
……驚きました(笑)。そう見えますか。実は、都庁の関係者から「今、小池さんが一番警戒しているのは、さとうさんだよ」と言われています。千代田区という重要な選挙区を、彼女が支援した候補者が落としたわけですから、当然警戒はしているでしょう。
小池知事がいま一番警戒しているのはさとうさおり都議?
――まさに、やべえやつが来た、と。
はい、一番警戒されていると思います(笑)。私自身は、自分の政策を掲げる際に、自分を保守だとかリベラルだとか、カテゴライズはしていません。見たいように見てください、というスタンスです。ただ、小池知事とのアプローチの違いは明確です。彼女は財政支出を増やして「大きな政府」で問題を解決しようとしますが、私はあくまで無駄をなくし、減税した上で、残った財源を効率的な仕組み作りに使うべきだと考えています。その点は真っ向から対立すると思います。
「国保未払い率9割超」の衝撃 外国人問題の“本当の犯人”
――YouTubeなどでは、外国人政策に関してもかなり踏み込んだ発言をされています。「中国の6番目の星にも、アメリカの51番目の星にもなりたくない」というキャッチフレーズは、一部で排外主義的だと捉えられかねない側面もあるかと思います。その真意についてお聞かせください。
まず、私は特定の国籍を名指しして批判するということはしていません。あの演説で中国とアメリカ、両国の名前を挙げたのは、日本はどんな大国にも過度に依存するのではなく、独立した国家として自立すべきだ、という思いからです。どちらか一方の国だけを批判すれば、それは排外主義だと捉えられるかもしれませんが、私は全ての国に対して、日本は日本の道を行くべきだと考えています。
――では、さとうさんが問題視している「外国人問題」とは、具体的にどのようなことでしょうか?
例えば、新宿区の国民健康保険のデータを見ると、特定の国籍の方々の保険料未払い率が9割を超えているという実態があります。これは、彼らの母国に国民健康保険という制度自体がなく、支払う義務があることを知らないまま来日しているケースがほとんどです。彼ら自身も、ある意味で被害者です。問題なのは、そうした実態を放置し、真面目に保険料を払っている他の住民に負担を押し付けている、今の日本の制度そのものです。
外国人富裕層が都心の不動産を買い漁る“いびつな構図”の裏側
――制度の不備が問題だと。
はい。だから、未払いを起こしている外国人個人を責めるのではなく、彼らが悪いことをしているかのような状況を生み出している政治家や、法律の不備をこそ、問題にすべきです。入国の時点で一定のデポジットを預かるなど、国レベルで対策を講じるべき問題だと考えています。
――近年、都心部では不動産価格が高騰し、海外の富裕層に買い占められ、日本人が買えなくなっているという問題も指摘されています。これについてはどうお考えですか?
それは、日本の相続税が高すぎることが大きな原因だと考えています。思い切って、相続税を廃止すればいいのではないでしょうか。千代田区のような地価の高い場所では、先祖代々の土地や家を相続しても、現金がないために莫大な相続税が払えず、泣く泣く手放す人が後を絶ちません。そして、その土地を買えるのは、相続税のない国の富裕層ということになる。この流れを断ち切るには、相続税の見直しが不可欠です。
「血を流さずに国土を切り売りしている」日本の現状に警鐘
――現在、反グローバリズムの流れもあり、外国人の土地の売買を規制するというような議論もなされていますが、これは日本の成長を阻害する要因にはならないのでしょうか。
もちろん、全ての土地の売買を規制すべきだとは思いません。ただ、皇居や国会議事堂の周辺、自衛隊基地の近くといった、国の安全保障上、極めて重要な土地までが、お金で簡単に買えてしまう現状は、いかがなものかと思います。戦争が本来、血を流して土地を奪い合うものであるとすれば、日本は今、血を流さずに、お金で国土を切り売りしている状態とも言えます。どこまでを許容し、どこからを守るのか。そのバランスを真剣に議論すべき時期に来ています。
「過去の自分を…」最後に明かした“政治家になった本当の理由”
――最後に、今後の展望についてお伺いします。先ほど国政進出の準備を進めているというお話がありましたが、さとうさんご自身は、最終的にどのようなところを目指しているのでしょうか。都知事、あるいはそれ以上ですか?
まだ都議になったばかりなので、これから都政の内部を見ていく中で、その思いが高まる可能性はあります。ただ、もともと私が目指していた場所の一つに「千代田区長」というポストがあります。区長という立場であれば、私がやりたい減税や、女性が働きやすい社会のモデルケース作りを、よりスピーディーに、そして具体的に実現できるのではないかと考えています。
――さとうさんを政治に突き動かす、一番の原動力は何なのでしょうか?
それは、過去の自分を救ってあげたい、というエゴかもしれません。お金がないせいで満足な教育が受けられなかったこと。仕事と家庭の両立を考えて、子どもを持つことを諦めざるを得なかったこと。自分が過去に我慢し、諦めてきたことを、次の世代の子どもたちには絶対に諦めさせたくない。一人ひとりが、自分の人生を、何かを犠牲にすることなく生きられる社会を作りたい。その思いが、私の全ての活動の根底にあります。
この社会であれば、私でも子どもを産み育てられる。介護があっても仕事を辞めずに済む。そう思える人を一人でも増やすことが、私のKPIです。