小泉進次郎でも高市でもない「急浮上」の首相候補をズバリ!「愛国、減税、税金のムダ遣いやめろ」国民の切実な願いは届くのか

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 石破茂総理がついに退陣を表明した。昨年の衆院選、今年の都議選・参院選と3連敗し、党内外から辞任を求める声があがっていた。そもそも昨年の衆院解散は石破内閣発足から8日後にしたもので、当然それは「政権の信を問う」ものだったはずだ。そこで大敗したのだから衆院選後に当然辞めるだろうと思われていた。しかしその時はやまずにズルズルと総理の座にしがみつきながら選挙で負けを続けたのだから、よくここまでもったとも言える。そうした中で気になるのは次の総理は誰になるのか、である。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が小泉進次郎氏、高市早苗氏でもない「急浮上中」の候補をズバリ解説するーー。

目次

新しいメディアで勝利を収めるためには3つの要

 石破茂首相、石破首相周辺の発言、そして自民党が参院選で大敗を喫した原因を総括した報告書を読むと、敗北の理由とされるものがあまりに曖昧である。SNSで情報発信が遅れたとか外国製のボットにやられたとか言いつつ、裏金問題が不信の底流にあったとも言う。SNSのせいにするのか裏金のせいにするのか定まらない。こうした「反省」はトンチンカンであり、国民の目をごまかそうとしているものだ。反省の弁は、どれを取っても的が定まらず、何が原因で負けたのか結局はわからないままである。

 裏金問題は確かにニュースでは大きく扱われた。だがそれを強く問題にしているのはリベラル層やテレビを主に見ている層であった。XやYouTube、TikTok、Yahoo! ニュースといった新しいメディア空間では状況が異なる。新しいメディア空間において裏金問題が参議院選挙の大きな争点であったという印象は薄い。多くのSNS利用者は裏金問題よりも別の政策課題に関心を寄せていた。物価高対策や移民政策に関する議論が活発だった。自民党は総括の仕方を根本的に間違えている。敗因分析の焦点がずれている。国民との意識の乖離はSNS空間でより顕著に現れている。

 自民党は新しいメディアで負けている。新しいメディアで勝利を収めるためには3つの要点が必要である。

 1つ目の要点は「愛国」である。保守的な価値観を持つ層に訴えかける姿勢が求められる。移民政策の見直しといった具体的なテーマがSNS上で支持を集める。

キーポイントは愛国、減税、そして…

 2つ目の要点は「減税」である。家計を直接支援する政策は幅広い層に歓迎される。国民民主党が掲げた減税政策は、経済性も高く、支持を広げた。反対に、あらゆる屁理屈を考えては減税を拒む、宮沢洋一氏や森山裕氏の姑息で傲慢な態度に呆れた国民は多かった。

 3つ目の要点は「無駄遣いをやめる」ことである。業界団体へのバラマキ、そして経済性のあまりに低い補助金、そして選挙中にのみ行われる有権者をバカにしたような現金給付。自民党は日本国民のことをバカだと思っているのだろう。そもそも国民のお金である税金で、経済成長につながると自分たちでも思っていないバラマキを行う。ふざけるのもいい加減にして欲しいものだ。

 総裁選で名前の上がっている高市早苗氏には愛国のイメージを纏う。防衛力の強化を訴え、選択的夫婦別姓に反対する姿勢は保守層から強い支持を受ける。高市候補は積極財政を掲げる。デフレ脱却までは増税しないと主張する。長期政権を担った場合、財政赤字の拡大は避けられない。将来的な増税の可能性を明確にしている。積極財政は無駄な歳出の拡大につながるという批判も存在する。「減税」や「無駄遣いをやめる」という観点からは攻撃される余地を残す。

3つの要点を満たす可能性を持つ候補者

 小泉進次郎氏は増税を志向しているように見える。環境税、カーボンプライシングの導入に前向きな姿勢を示す。過去には子ども保険という構想を打ち出した。子ども保険は保険だから税金ではないと主張した。実質的な国民負担増につながる政策として批判を浴びた経緯がある。ネット上の愛国の文脈では別の問題も浮上する。小泉候補は選択的夫婦別姓の導入に賛成の立場を取る。選択的夫婦別姓は伝統的な家族観を壊すものとして、保守的な層から強い反発を受ける。「夫婦別姓は愛国的ではない」という判断基準がネット上には存在する。小泉氏は愛国という観点から攻撃される可能性が高い。高市氏は減税と無駄遣い停止の点で、小泉氏は増税志向と愛国の点で、新しいメディアでの支持獲得に課題を抱える。

「愛国」「減税」「無駄遣いをやめる」という3つの要点を満たす可能性を持つ候補者がいる。高市候補でも小泉候補でもない。茂木敏充氏だ。茂木氏は、前回の総裁選では「増税ゼロ」を掲げ、減税路線を明確に打ち出し、無駄遣いをなくす姿勢を示す。

連立するしかない自民党の選択肢

 愛国という点では、夫婦別姓に「柔軟な姿勢」ということだが、事実上、慎重な動きだ。安倍政権で外務大臣を務めた実績を持つ。環太平洋パートナーシップ協定、TPP交渉をまとめた経験は高く評価される。経済安全保障を重視する姿勢は愛国の文脈で語ることができる。赤沢亮正氏が不平等な条約を結んで胸を張る姿は情けない。茂木氏の交渉手腕は国益を守る力としてアピールできる。

 下馬評では有力候補としての名前が上がってこないものの、政権樹立からの「新しいメディア」攻略を考えれば、茂木氏が自民党を次の選挙で勝利に導く唯一の道ではないか。茂木氏は、しっかりと自分自身でSNS戦略を実行してきた。再生数や注目度で自民党議員では群を抜いており、急浮上している。

 総裁選挙で各候補がどのような政策を打ち出すかは未知数であるが、現時点において茂木敏充氏は着目すべき有力な選択肢として注目していくべきだ。

 また自民党は目を背けたいだろうが、自民党が勝ち残るためには連立政権という選択肢が現実味を帯びている。とはいえ、今、進次郎氏、菅義偉氏が仕掛けている日本維新の会との連立は得策ではないと思う。

 維新は参議院選挙で議席を減らし、離党者も続出し、勢いを失っている。全国政党化の試みは失敗し、党勢は退潮傾向、瀕死寸前の政党と言える状態にある。

自民党に優れた戦略家がいるならば…

 SNS上でも大きな批判にさらされ、発信力で負けている。人気のない政党と連立を組んでも、自民党は一緒に沈むだけである。自民党と維新が「弱者連合」を組めば、新しいメディア空間で共に敗北することは間違いない。結果として国民民主党や参政党といった他の政党が支持を伸ばすだけになる。自民党はただ小さくなっていく未来しか見えない。維新との連立は勝ち筋が見いだせない選択である。

 自民党に優れた戦略家がいるならば、全く異なる発想の選択肢を検討するはずである。かつての村山富市政権のような大胆な枠組みを構築することである。日本社会党の村山富市委員長を首相に据えた自社さ連立政権は歴史的な出来事だった。

同様に、国民民主党の玉木雄一郎代表を首相にしてしまうという策が考えられる。玉木代表に自由に政策を実行させる。国民民主党は所得税や住民税の減税、歳出削減を政策として掲げている。新しいメディア空間で求められる政策と一致する部分が多い。

批判は玉木首相に、成果は自民党に、という構図

 玉木首相が減税や歳出削減を実行すれば、一定の支持を得る可能性がある。政策実行には痛みが伴う。歳出削減は様々な団体の反発を招く。減税政策は財源の問題を指摘される。政策実行に伴う批判はすべて玉木首相と国民民主党が引き受けることになる。

 自民党は批判の矢面に立たずに済む。自民党の支持母体である各種団体からの反発も、国民民主党の政策であると説明すれば和らげることが可能である。政策が成功し、経済が上向けば、その成果は連立与党である自民党が享受できる。批判は玉木首相に、成果は自民党に、という構図を作り出す。SNSを含めた情報戦で勝利するための極めて効果的な戦略となる可能性がある。

 自民党の総裁選挙において、それぞれの候補者が今後どのような政策を具体的に語るかはまだ分からない。現段階で新しいメディア空間での勝利という観点から見た場合、茂木敏充氏が有力な選択肢であろう。茂木氏は「愛国」「減税」「無駄遣いをやめる」という3つの要点を押さえる可能性を秘めている。

 自民党が本当に選挙に勝ち、政権を維持し続けたいと考えるならば、より大胆な発想が求められる。党内に優れた策士が存在するのであれば、国民民主党の玉木雄一郎代表を首相に据えるという選択肢を真剣に検討するだろう。自民党が主導権を握りながら、批判を巧みにかわし、成果だけを手に入れることができる唯一無二の戦略だ。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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