ガーシー氏が“YouTubeを始めたこと自体を後悔している”と語るワケ「過去の自分の行動を肯定する気持ちは1ミリもない」

かつてYouTubeでの暴露を武器に社会現象を巻き起こし、参議院選挙で約29万票を獲得して国会議員となったガーシー氏。しかし熱狂の渦中にいた本人は、「自分がすごいとはまったく思っていなかった」と冷静に振り返り、むしろ自身の巨大な影響力に「違和感」すら抱いていたという。
社会現象の裏側で抱いていた本音から国会議員除名の真相、現在の心境、そして「57歳で完全に引退する」と語る今後の人生設計まで、そのすべてを赤裸々に語ってもらった。短期連載全4回の第2回。(取材日:8月14日)
目次
除名ありきで…参院懲罰委員会への疑問「正直イラっとした」
――国会議員として、海外からのリモートでの活動には様々な批判もありました。ご自身では、国会の仕組みについて何か感じていたことはありますか?
そもそも、コロナ禍を経て世の中ではリモートワークが当たり前になったのに、なぜ国会だけがそんなにアナログなんだ、とはずっと思っていました。リモートで十分じゃないか、と。僕は選挙のときから「国会には行かない」と公言して当選しているわけですから、そこを後から「来ない」という理由で責められるのは、正直イラっとしましたね。
懲罰委員会にかけられた理由は「国会に来ないから」という、非常に分かりやすいものでした。でも、本質はそこじゃないでしょう、と。もっと他に本当の理由があるはずです。取ってつけたような、一番国民に説明しやすい理由で僕を排除しようとした。僕はそう見ていました。それくらい、彼らは僕をクビにしたかったんだろうな、と。「帰ってきて謝ったら許してやる」みたいな空気を出していましたけど、あれも裏を返せば「帰ってこい。帰ってきたらどうなるか分かってるよな」という脅しに聞こえましたから。
“官僚支配”の恐るべき実態とは 何も理解せず「ハンコを押すだけ」の政治家たち
国会議員になってみて怖さを感じたのは、国会そのものよりも、各省庁の官僚たちの力です。リモートでの会議にはもちろん参加していましたが、各省庁が「この法案を通します」と持ってくる資料が、もう専門用語だらけで何のことだかさっぱり分からないんです。
一度、通信法か何かの電波塔を建てる関連の法案が来たとき、5Gがどうだとかこうだとか書いてあるんですが、意味がまったく理解できない。だから僕は省庁の担当者に聞いたんです。「すみません、これ、何なんですか? そもそも、この内容を理解している政治家は一人でもいるんですか?」と。
すると担当者は「いや、まあ、皆さんお忙しいので、こういう段取りで法案を通しますからよろしくお願いします、ということでご理解いただいています」と。つまり、ほとんどの議員は中身を理解しないまま、決済印を押しているような状況なわけです。
ガーシー氏が語るこの国の権力の正体「ものすごい恐怖を感じた」
僕は「それならなおさら、小学生でも分かるような言葉に書き換えてくれ。僕は学があるほうじゃないから、こんな難しいことは分からない。分からないものに『いいですよ』とは言えない」と言って、何度も突っぱねました。でも、僕一人が突っぱねたところで、周りはどんどん進んでいってしまう。「もうガーシーさんは放っておこう」という空気で物事が決まっていく。
あのとき、特に年配の国会議員なんて、絶対に1ミリも理解していなかったはずです。訳も分からないまま「眠たいし、もういいよ」ってハンコを押している。そんな中で法案がどんどん通っていく現実に、ものすごい恐怖を感じました。
各省庁が持っている力は絶大です。昔、田中角栄が派閥を作る以上に各省庁を可愛がったと言いますが、その意味がよく分かりました。官僚たちを手足のように動かせれば、法律なんてどんどん作れる。そういう意味で、各省庁を掌握している官僚たちが、この国を実質的に動かしているのかもしれない、と感じましたね。
議員になったのはデメリットのほうが多かった
――国会議員としての日々を振り返ってみて、今どんなことを感じますか?
今だからこそ思うことですが、国会議員になったことで得たメリットよりも、デメリットのほうがはるかに多かったですね。今回の逮捕劇もすべて含めて、まさに出る杭は打たれる、ということだったのかもしれません。もし国会議員になっていなかったら、また違う展開があったかもしれない。
あるいは、当選したあのタイミングで、不逮捕特権などの権利がある中ですぐに帰国していたらどうなっていたんだろう、と考えることはあります。周りの人からは「あのまま帰ってきていれば、今も参議院議員だったんじゃないか」とよく言われます。
ガーシー氏が明かす3度の「帰国未遂」それでも帰らなかった理由
もちろん、あのとき、帰国するという決断をしなかったのは、周りから色々と言われて「帰らないほうがいい」と判断した僕自身の責任です。実は、日本に帰ろうと決意したことは3回ありました。でも、その3回とも周りに止められたんです。「日本の状況が良くないから、帰らないほうがいい」と。海外にいて日本の事情が飲み込めていない中での判断だったので、結果的に帰国しない道を選びました。
最終的には自主的に日本に帰国するという形で逮捕され、4カ月間勾留され、裁判を経て、今は執行猶予という形で社会で反省する機会を与えられています。結果論ですけど、日本に帰ってきて良かったな、と今は思っています。
自分のようなインフルエンサーが議員になるのは絶対に間違い
国会議員というものについて思うのは、やはり「なるべき人」がなるべきだということです。国や国民のために、自分を犠牲にできるほどの志を持った人でなければ務まらない。ただ単に影響力をつけたいとか、世間に認められたいとか、そういうインフルエンサー的な考えの人間やタレントがなるのは、絶対に間違いです。
世の中が平和で景気が良いときはタレント議員が出てきてもいいかもしれない。でも、日本という国が本当に危機に瀕しているときにそんな人間を議員にしたら、国は間違いなく終わります。だって、彼らは国のことや国民のことなんて、自己犠牲を払ってまで考えられませんから。
YouTubeを始めたこと自体を後悔「旧ジャニーズ問題も…」
――現在はご自身の過去の言動について「反省している」と公言されています。一方で、ジャニーズ問題の告発など、結果的に社会を動かした側面もあったかと思いますが、それらも含めて反省すべきだったとお考えなのでしょうか?
はい。僕は、自分がやったことのすべてをひっくるめて「すべきじゃなかった」と思っています。究極的には、YouTubeというものを始めてしまったこと自体を反省しています。
よくジャニーズさんの件で、僕がきっかけだとか、僕がやったみたいに言われますけど、あれは違います。カウアン(カウアン・オカモト氏)が勇気を持って告発したことを、僕は自分のチャンネルという場所を使って彼に語ってもらった、というだけなんです。僕がやったわけじゃない。事実をちゃんと告発したのは彼自身です。彼の勇気ある告発によって救われた元ジャニーズの方々がたくさんいると思いますが、そこに僕は関係ない。僕はそう思っています。
過去の自分の行動を肯定する気持ちは1ミリもない
もちろん、「39日でチャンネル登録者100万人突破」とか「最大同時接続数26万人」とか、いろんなことを言われます。でも、それは結局、良くないことをしたから得られた数字です。僕じゃなくても、ああいうことをやれる人間はいたでしょう。トーク力がどうだとか言われますけど、それでも僕は良くないことをしたからこそ、日本に帰って逮捕され、勾留されたわけです。それを肯定するような気持ちは1ミリもありません。
だから、今SNSをやる上では、誹謗中傷や名誉毀損にあたるようなことは絶対にしません。誰かに対して攻撃的な物言いをすることもない。エンタメとして怒っているフリをすることはあっても、それはあくまでパフォーマンスです。