「そんな馬鹿な」報ステ調査で総裁選票予測でまさか…世間が騒いでも“この首相”でほぼ決まり!求められる「愚策連発、バラマキ、増税」の訣別

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 総裁選でステマ依頼メールに揺れた小泉進次郎陣営。日本テレビの独自調査などでは当初は党員票でも小泉氏の優勢が伝えられていたが、報道が出てからは高市早苗氏に抜かれる形となった。自民党員だけでなく、世間からは小泉氏に厳しい声があがる。小泉政権誕生後には連立も模索されている日本維新の会の前原誠司前共同代表は「小泉氏は(総裁選から)撤退した方がいい」と厳しく批判した。だが、9月29日のテレビ朝日「報道ステーション」が報じた調査によると、自民党支持層では小泉進次郎氏がトップで、2位の高市早苗氏に大差をつけているという。ネットからは「そんな馬鹿な」といった声が挙がるが、経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏は小泉総理の誕生は「ほぼ決まり」と語る。なぜなのか。小倉氏が詳しく解説していくーー。

目次

世間の盛り上がりと政治の世界の動きにズレ

 秋風が永田町を吹き抜ける。自民党の新しいリーダーを選ぶ総裁選は、今まさにピークを迎えている。スマートフォンを開けば、そこには無数の声があふれている。

「高市さんが党員票で勝つ!」「小泉さんのステマ問題は許せない」「林さんが伸びている」。大きく世論は揺れ動き、メディアは毎日違う人を「次の総理だ」と報じる。

 しかし、一歩引いてこの様子を眺めてみると、既視感と、政治の冷たい現実が見えてくる。ネットの世界でどれだけ言葉が燃え上がっても、政治という船が進む方向は、必ずしもその声の通りには決まらない。目に見えない場所で働く力関係、つまり党内の論理が、最終的な行き先を決めるのだ。そしてその論理が指し示しているのは、多くの人々の騒ぎとは反対に、小泉進次郎というたった一人の人物なのである。

 今回の総裁選ほど、世間の盛り上がりと政治の世界の動きにズレがはっきりした選挙はないだろう。多くのメディアの調査では、特に自民党員や一般の人の人気で、高市早苗氏が小泉氏を上回る結果が出ている。新聞やテレビのニュースでは「高市トップ」の文字が躍り、SNSでは「#高市早苗を総理大臣に」といった言葉がトレンドになった。小泉陣営が起こしたと言われる「ステマ」問題は、この流れを加速させ、人々の不信感を決定的なものにした。ネットは小泉氏への厳しい批判と「選挙から降りるべきだ」という声でいっぱいだ。

 ところが、永田町の空気は全く違う。

次の総理大臣は小泉進次郎氏でほぼ決まった

 ニュースが伝える議員たちの動きは、一貫して小泉氏が有利であることを示している。議員たちの間では、国民の怒りやステマ問題は、選挙全体の流れを変えるほどの大きな問題とは考えられていないようだ。彼らが気にしているのは、選挙の後にどうやって党を一つにまとめるか、誰がリーダーなら次の大きな選挙を戦えるか、という極めて現実的なポイントなのだ。

 この大きなズレが意味するものは何だろうか。それは、今の日本の政治が抱える「仕組み」の問題そのものを映し出す鏡だ。国民の目に見える「声」は、政治の決定プロセスに直接つながってはいない。むしろ、人々の不満を外に出すための「ガス抜き」のような役割を果たし、本当の権力争いは、国民には見えない場所で、昔からの力関係によって進んでいく。進次郎氏が自分自身の政策を引っ込め、野党の減税政策に耳を貸す姿は、進次郎陣営がそのゲームのルールをよく知っている証拠だ。私たちが目にしているのは、大きなショーに過ぎないのかもしれない。その台本と結末は、とっくの昔に決まっているのだ。

 どれだけ国民が騒いでも、次の総理大臣は小泉進次郎氏でほぼ決まった。この現実を受け入れるとき、私たちは熱狂から冷静になり、もっと大事なことを考えなければならなくなる。「これから始まる小泉政権に、何を期待し、何を求めるべきか」ということだ。

彼が総理になることが避けられないのなら…

 小泉進次郎という政治家は、何かを変えてくれそうな雰囲気や、話の上手さで期待される一方、政策の中身や考えの深さが足りないといつも批判されている。しかし、彼が総理になることが避けられないのなら、私たちが注目すべきは、彼がこれまでの政権、特に岸田・石破政権の失敗から何を学び、どうやってきっぱりと別れられるかという点だ。

 岸田政権の目玉政策だった「異次元の少子化対策」を思い出してほしい。たくさんのお金が使われ、子育てを助けるための政策が次々と打ち出された。しかし、結果はどうだったか。生まれる子どもの数は増えるどころか、過去最低を更新し続けている。石破茂氏がずっと言い続けてきた「地方創生」も同じだ。お金を配ったが、地方から人が減っていく流れは止まらず、経済は疲弊したままだ。防災庁に至っては愚策の極みだ。日本の防災は今、機能している。やったフリ、やった感、でしかない。

進次郎政権が目指すべき国とは

 これらの政策に共通しているのは、問題解決のためではなく、「対策をやりました」という言い訳作りのために行われている点ではないだろうか。問題があるから対策をする。予算も取った。「これで自分たちの仕事は終わりだ」と言わんばかりだ。

 しかし、その対策に本当に効果があったのか、使った税金に見合う成果が出たのかという一番大事なチェック、つまりデータで確かめる視点が全く足りていない。たとえ良い考えから始まったとしても、結果が出なければ、ただ税金を無駄にし、真面目に働く人々の負担を増やすだけの害にしかならない。それは、お金の無駄遣いだ。得をしたのは、その政策に関わって利益を得た一部の人たちだけで、社会全体は何も良くならない。

 新しいリーダーには、この「やったふり」という悪い習慣から完全に抜け出すことが求められる。政策を考えるときには、他のやり方と比べて、データ的にどれだけ正しいのかを徹底的にチェックする姿勢が絶対に必要だ。有名な学者が勧めるから、世間の雰囲気がそうだから、といった気分で巨額の税金を動かす時代は、もう終わりにしなければならない。

進次郎を利用して自分の考えを実現しようとする人々が集まる

 では、これから始まる進次郎政権が目指すべき国はどんな姿だろうか。総裁選の議論の中で、彼の口から「増税」という言葉が出てこない点には、良い点だと言えるかもしれない。経済が停滞し、国民が苦しんでいる中で、簡単に増税に頼らないという姿勢は、経済のことを考えていると感じさせる。効果があるか分からない政策にお金をばら撒くくらいなら、減税をして民間の力を引き出す方が、よほどまともな経済政策だ。貧しい人を助ける仕組みは最低限必要だが、それ以上のことは、実証データに基づいて慎重に考えるべきだ。

 そしてもう一つ、彼に求められるのは、もっと深く、静かな「愛国心」の現れである。福島でサーフィンをしたり、靖国神社に参拝したりといったアピールは、彼の気持ちを示すものかもしれないが、それだけで国のハンドルを握ることはできない。

 軍事的な圧力を強める中国に対して、どうやってしっかりとした態度を取り、本当に効果のあるブレーキをかけるのか。あるいは、国内で深刻になっている外国人との共存の問題に対し、きれいごとではなく、地域に住む人たちの不安に寄り添った現実的な解決策を行動で示せるのか。

岸田・石破政権と同じ失敗を繰り返さないために

 これらは全て、気分やアピールではなく、冷静なデータ分析と、事実に基づくアプローチが絶対に必要になる。

 彼の周りには、彼を利用して自分の考えを実現しようとする人々が集まってくるだろう。そのうまい話にだまされず、全ての政策を「本当に国民のためになるのか」「実証データの裏付けはあるのか」という一点で判断できるか。事実と真面目に向き合うその姿勢こそ、新しいリーダーに最も必要な力ではないだろうか。

 SNSの騒ぎが静まり、永田町の論理によって新しい総理が生まれる。そのプロセスに、SNSは少しむなしい気持ちになるかもしれない。しかし、選ばれたリーダーをただ批判し、嘆くだけでは何も始まらない。

 私たちは、次の政権が岸田・石破政権と同じ失敗を繰り返さず、データというコンパスを手に、この国の新しい道を作っていくことを強く期待し、そしてその一つ一つの行動を厳しく見守っていく責任がある。国民の声が届かないところで決まったリーダーだからこそ、任された責任の重さを自覚し、本当の意味で何かを変える人になることを願うしかない。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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