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円の国際的価値がこの8年で約4割も失われ、かつての発展途上国に爆買いされまくる落ち目の日本…世界中の国家がいま、こぞって金を買い漁っている理由

(c) AdobeStock

 日経平均は58000円台に乗せ、高市自民党の大勝利を市場も好感している。とはいえ、本当にそれは喜ぶべきことなのか。国際的投資家の木戸次郎氏は「円の国際的価値がこの8年で約4割も失われている。そんななかでの株高は決して健全な成長とは呼べない」と指摘するーー。

 みんかぶプレミアム特集「円安・インフレ狂騒曲」第3回。

目次

円の国際的価値がこの8年で約4割も失われた

 歴史的な大勝であった。自民党は単独過半数どころか3分の2を確保し、国会は事実上、数で動く体制に入った。小選挙区では「高市総理を全力で支えます」という言葉が繰り返され、裏金も統一教会も、選挙結果によって禊が済んだことにされた。勝てば禊は成立する。問いは過去に押し流される。選挙とは審判であると同時に、強力な忘却装置でもある。

 しかし、市場に禊はない。

 日経平均は58000円台に乗せた。1989年の38915円を超え、数字だけを見れば壮観である。だがその足元で、10年国債利回りは2%台に上昇し、ドル円は150円台で推移している。そして何よりも重い事実は、円の国際的価値がこの8年で約4割も失われたという現実である。

 他の先進国通貨はどうか。ドルもユーロも、コロナ後の金融引き締め局面を経て2割、3割と価値を戻している。アジアでも円ほど価値を落とした通貨はない。日本だけが、相対的に沈んだ。

債券安、通貨安、株高、この三位一体の成長を、健全な成長とは呼ばない

 債券安、通貨安、株高。

 この三位一体を、私は健全な成長とは呼ばない。通貨は国の値札であり、債券は未来への信頼の価格である。その両方が弱いまま、株だけが強い。これは実力の上昇ではない。価格の再配分である。

 円安はトヨタ自動車や三菱商事、東京エレクトロンの利益を押し上げる。海外で稼いだ収益が円換算で膨らむからだ。しかしそれは企業の体質が劇的に強くなったわけではない。円という物差しが縮んだ結果、名目の数字が大きく見えているに過ぎない。為替が110円であったなら、いまの利益水準はどう映るのか。その問いを忘れてはならない。

 そして円安と低金利は、海外資金にとって理想的な環境をつくっている。円で資金を調達し、日本株と日本不動産を買い漁る。為替はヘッジする。環境が変われば撤退する。出口を持つ資金である。

日本がかつて発展途上国と呼んでいたタイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムからの観光客に爆買いされる日本

 東京の新築マンション平均価格は2021年8239万円から2025年には13600万円台へ跳ね上がった。都心では2億円超も珍しくない。円安は海外から見ればディスカウントだ。日本は自国通貨を安く供給し、その通貨で自国の資産を買われ、その価格上昇をもって復活と語っている。

 これは、自分の尻尾を食べている蛇の姿に似ている。

 食べている間は満腹感がある。株は上がり、不動産も上がる。しかし実際には自分の体を削っている。円の購買力は落ち、輸入物価は上がり、家賃は上がる。東京都の賃料値上げ相談窓口がパンク状態であるという現実は、統計よりも雄弁である。家賃こそ物価である。株価が上がっても、毎月の固定費は軽くならない。

 そしてもう一つの光景がある。かつて我々が発展途上国と呼んでいたタイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムからの旅行者が、日本で爆買いをしている。これは観光立国の成功なのか。違う。購買力の逆転である。

 日本が豊かになったから来ているのではない。日本が安くなったから来ているのである。安い国になったことを観光立国の成果と呼ぶなら、それは静かな貧困の進行を祝っているに等しい。

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この記事の著者
木戸次郎

1965年生まれ。明治大学政治経済学部卒。 地場証券会社を経て投資顧問会社の代表取締役。その後、ベトナム国営バオベト証券バオベトジャパン理事、ベトナム国防省タイソングループ顧問、外資系ファンドの戦略アドバイザーを経て現在はTMI総合法律事務所顧問。著書にベストセラーとなった『修羅場のマネー哲学』(幻冬舎)『修羅場の鉄則』(幻冬舎)、『木戸次郎の大化け株』(宝島社)、『株はあと2年でやめなさい』(第二海援隊)、『常勝の株』(講談社)ほか多数。

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