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高市自民圧勝に東浩紀氏「『保守vsリベラル』の時代が終わり、『資本家vs労働者』の対立軸がやってくる」「偏差値60以上しか相手にしない」リベラル知識人はいなくなる

(c) AdobeStock

 2026年2月8日に投開票された衆議院選挙は、自民党が単独で316議席を獲得するという、結党以来初となる歴史的な大勝を果たした。一方で、旧立憲民主党は議席を大幅に減らして壊滅状態となり、野党の勢力図も大きく塗り替わった。

 テレビや新聞などのレガシーメディアが実態と乖離した見立てを報じる中、なぜこれほどまでに野党は惨敗したのか。そして、世界情勢が混沌とする中、今回の選挙結果が示す「民意」とは何だったのか。哲学者・批評家の東浩紀氏に、今回の選挙の総括と日本政治の行方についてお話を伺った——。短期連載全3回の第1回。

 みんかぶプレミアム特集「戦後・リベラルの終焉」第1回。

目次

高市首相が仕掛けた「踏み絵」と、まんまと乗せられた野党

——今回の衆院選の結果を受けて、どのような選挙だったと総括されますか。結局のところ、政策論争というよりも「高市さんを支持するかしないか」という一点が争点になった選挙だったように見えました。東さんはどうご覧になっていましたか?

東浩紀氏(以下、東):高市氏が最初の解散の時の記者会見で、そういう風に問題設定をしたわけですよね。本当ならば、野党はそれをズラさなきゃいけなかった。でも結局ズラすことができず、むしろ野党もそのゲームに乗っちゃった。政策上の明確な差というか、政策論争は今回ほとんどなかったと思うんです。だから、高市さんが「私を好きか嫌いかという選挙ですよ」と言った通りに進行してしまった。そこを崩せなかったのは野党の失敗だったと思いますね。

——では、なぜ高市首相はここまで国民的な人気があるのでしょうか? メディアの報道を見ていると、そこまで支持が広がるとは予想しづらい状況でしたが。

:大前提として、憲政史上初の女性首相であることが大きい。しかも、世襲議員ではなく叩き上げです。そこが評価されている。リベラル系のフェミニストは「女性と言っても女性ではないといった屁理屈で叩いていますが、そんな議論は凄く狭いところにしか届いていない。多くの一般市民からしたら、高市さんは女性で叩き上げで、ようやく日本の分厚いガラスの天井を壊してくれた「英雄」でしょう。

 自民党のリベラル系やメディアは小泉進次郎さん推しですが、世の中からしたらそっちの方が全然「古い」。進次郎氏は「男性の世襲議員」の典型です。それなのに、高市氏を「麻生や安倍の延長」としてしか見られない古い専門家たちは、「進次郎の方が新しい」と勘違いしていた。そこがズレていると思いますね。高市氏だけでなく小野田紀美さんや片山さつきさんも世襲ではない。世襲のサラブレッドに期待するメディアやインテリは、世の中の空気から取り残されています。

 それに加えて、就任後の外交パフォーマンスも大きかったと思います。マスコミは日中関係などについての“失言”ばかりを取り上げていますが、国民は別のところも見ている。トランプ氏やイタリアのメローニ首相が来日したときのやりすぎなまでパフォーマンスもマイナスにはなっていない。韓国の李在明(イ・ジェミョン)氏が来日した際のドラムだって、大したもんです。外交って半分はパフォーマンスですから。僕自身も、彼女があれだけ外交をやれるとは思っていなかった。各国首脳と明るく渡り合っている姿は、国民から極めてポジティブに捉えられていると思います。

実態と乖離し続けたマスコミの敗北と「テレビ報道の終焉」

——テレビ報道だけを見ていると、自民党がここまで圧勝するとは到底思えない姿勢でした。ますます国民との乖離が進んでいるように感じます。

:そもそも高市政権は60%〜70%という驚異的な支持率をずっと維持していた。それは事実です。それに対して「理解できない」と言い続けたマスコミの方に問題がある。高市人気を分析しようとしないまま、選挙戦に突入してしまった。もうテレビが国民の世論を誘導できる時代じゃない。選挙後にどこかのテレビ局がデータを出していましたが、今回、10代から50代までが一番参考にしたメディアはSNSです。すでにSNSがメインの情報収集源になっている。

——事前の予測では「立憲民主党が躍進するのでは」という見方もありました。なぜここまで大外ししたのでしょうか。

:今回、立憲民主党は壊滅的な結果になりましたが、決して執行部のせいだけじゃないと思います。彼らが見ていたリベラル系のマスコミ、そしてマスコミに情報を提供していた政治学者や評論家、専門家たちがいろんな数字を出して「勝てる」と見込んでいた。実際、中道発足後には小選挙区で大勝利なんてシミュレーションも出ていた。そういう点では、立憲こそ「高市がこんなに強いわけがない」「自民党が勝てるわけがない」と言っていたマスコミの最大の被害者です。

 昨年秋、自民党総裁選で高市さんが総裁に決まったあと、首相指名選挙までの2週間のあいだ、「玉木総理にしよう」という馬鹿げた熱狂があった。僕は今回の選挙はあの延長線上にあると思っています。あの時、玉木氏は最初から「立憲が変わらないかぎり首相は引き受けない」と言っていた。それなのにテレビや新聞、一部の知識人が「本当はやるだろう」と大騒ぎし続けた。あれもマスコミや知識人の願望が丸出しだっただけで、実態を掴んでいなかった。今回も「立憲に公明の組織票が乗れば小選挙区で大勝する」とか「国民民主も乗るかもしれない」とか、何の実態もない願望ベースの分析ばかりでした。そういった意味で、政治評論や選挙分析の敗北でもあったと思います。

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この記事の著者
東浩紀

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。 著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』、『訂正する力』など。

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