東浩紀氏「チームみらい安野世代の台頭で、ReHacQ世代はもう古くなりつつあるのではないか」「日米同盟は大切だが、米国一辺倒には賛成できない」

高市早苗政権の誕生と野党の自滅により、国内政治が歴史的な転換点を迎えた2026年。しかし、激変しているのは国内だけではない。世界情勢もまた、これまでの「グローバリズム」から「ブロック経済」へと大きな揺り戻しの波の中にある。
さらにメディアの世界に目を向ければ、ネット政治番組を牽引してきたコンテンツにも「限界」と「世代交代」の足音が近づいているという。 哲学者で批評家の東浩紀氏は、新たなフェーズに入ったメディア論、躍進した新党のジレンマ、そして「アメリカ一辺倒」の外交姿勢に強い警鐘を鳴らす——。短期連載全3回の第3回。
目次
政治の急速な世代交代と「論破・バトル型メディア」の終焉
——今回の選挙戦でも、YouTubeメディアである「ReHacQ(リハック)」などのネット番組が大きな影響力を持ちました。かつてのテレビに代わる政治メディアとして、現在の立ち位置をどう評価していますか。
東浩紀氏(以下、東):大変大きな影響力があると思います。ただ、ぼくのほうが全然年上なので言い方が難しいんですが、ReHacQの世代は早くも「古くなりつつある」んじゃないかと感じています。ReHacQの中心はアラフォー世代です。プロデューサーの高橋弘樹さんが44歳で、よく出演している社会学者の西田亮介さんが42歳ですね。ReHacQは、彼らとほぼ同世代の石丸伸二さん(43歳)のムーブメントと共に急成長したメディアですが、今回の安野貴博さん(35歳)たちの登場によって、一気に世代交代が起きつつある。
チームみらいはその点では確かに新しくて、これまで「若手」の代表格だった小林鷹之さんや小泉進次郎さん、石丸伸二さんといった世代が、もう世間から見れば「若くない人」になりつつある。これは非常に大きな変化です。
——影響力を持続するためには「若返り」が必要だと。
東:高橋プロデューサーが政治家に鋭く切り込んでいくスタイルは新鮮でしたが、彼はすでに「おじさん」の部類に入ってきている。これからの新しいムーブメントを作っていくには、「ポスト高橋世代」が出てこないと厳しいでしょう。
——かつての「朝まで生テレビ!」のような、激論を戦わせるスタイルの終焉でしょうか。
東:そうかもしれません。最近人文系では「令和人文主義」なるムーブメントがあるのですが、そこでも令和系の若手論客は「戦わない」のが特徴だと言われています。チームみらいもそういう方針を打ち出していますよね。かつて田原総一朗さんが開発したあの「対立を明確にする」スタイルは、1980年代末、昭和の終わりに登場し、平成を通じて影響力を保ち続け、その最終形態としてReHacQが出てきたのだけど、それもまた役割を終えつつあるのかもしれません。今回は、政治の世代交代だけでなく、メディアの空気感も含めて「いろんな時代が終わった」選挙だったと感じています。
チームみらい・安野氏のジレンマと、国民民主党とのまさかの合流シナリオ
——世代交代の象徴として、35歳の安野氏が率いる「チームみらい」が11議席と大躍進しました。この結果はどう見ていますか。
東:これは安野さん本人にとっても「勝ちすぎちゃった」「嘘でしょ?」という状態だと思います。彼は当初、一国会議員として中に入り、日本のデジタル化(DX)を進めたいという思いだったはずです。しかし、ここまで党が大きくなってしまうと「DXだけやっています」というわけにはいかない。
不安なのは、チームみらいが、いまのところ「超エリート階級」の集まりになってしまっていることです。東大出身であるどころか、有名高校の出身者が中心を占めるたいへん同質的な集団になっている。また、いまのままでは「安野さんの個人政党」を超える道筋も見えない。とはいえ、11議席ももってしまうと、安野さんのやりたいことをやる政党であり続けるわけにもいかない。彼自身、本音では「俺がやりたかったことと違ってきたな」と思っているんじゃないでしょうか。
——そこから脱却するための道はあるのでしょうか。
東:一つのシナリオとしてあり得るのが、国民民主党との連携です。チームみらい単独では限界がありますが、例えば「安野党首・玉木副党首」のような形で合流し、玉木さんや榛葉さんといった百戦錬磨のベテランが脇を固めて、安野さんを「神輿」にする。これは世の中の流れに乗って、相当な旋風を巻き起こす可能性があります。それが安野さん本人のやりたいことなのかどうかは分かりませんが。