ポスト岸田に新星が登場「安倍・菅がタッグで担げる」唯一の人物とは

「新しい資本主義」の実行計画が決まった
岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の実行計画が6月7日に決まった。自ら率いる岸田派の議員と5年前から練り続けた構想を結実させた「形」にはなっている。
国民からは高い支持率を誇る岸田首相であるが、「新しい資本主義」を巡っては、市場関係者が一様に「NO」を唱えた。「新しい資本主義とは社会主義のことではないか」と指摘する関係者もいた。日経CNBCが1月27日から1月31日の期間、「投資家サーベイ」と銘打ち岸田内閣への支持の有無を調査した結果、「いいえ(不支持)」が95.7%と大半を占め、「はい(支持)」はわずか3.0%、「分からない・どちらでもない」は1.3%だった。投資家からの支持率はたった3%だった。
岸田政権は、今回の「新しい資本主義の実行計画」の原稿をつくった木原誠二官房副長官が火消しに走った。野村証券やJPモルガン証券、みずほ証券で講演し、金融所得課税の強化について「考えていません」と強調していた。5月5日、英国・ロンドンの金融街シティーでの講演だ。岸田首相は「インベスト・イン・岸田です」「マーケットの声、現場の声をよく聞き政策を進めていく」として金融所得倍増プランを打ち出した。
「トップダウンからボトムアップへ」と「対症療法から持続可能性へ」
振り返れば「旧・新しい資本主義」の根幹政策だった「金融所得課税」は、著書の冒頭にも、昨年の総裁選の公約でも繰り返し示されていて、「分配」「格差是正」を担うはずだったのだ。しかし、政権発足後、モノの見事に日経平均は下がった。
思いつきのような政策を出しては引っ込める繰り返す岸田政権ではあるが、看板政策である「新しい資本主義」を下ろすわけにはいかない。そこで、市場から支持を受け、党内で最も大きな影響力を持つ派閥の領袖である安倍晋三元首相が提唱した「アベノミクス」を継承しながら、少しだけ分配にも目を配るという立ち位置に、「新しい資本主義」は変貌した。
ここで注意しなければならないのは、今、打ち出されている「新しい資本主義」とは「旧・新しい資本主義」と「アベノミクス」を足して2で割ったようなモノではなく、「旧・新しい資本主義」を「アベノミクス」よりにしたモノでもない。アベノミクスを看板だけ付け替えて、新しい資本主義と言っているようなものなのだ。
事実、金融所得課税は削除、4半期開示の見直しはほぼなし崩し、「令和版所得倍増計画」は「(貯蓄から投資のための)資産所得倍増プラン」に変貌した。
岸田首相は、【岸田文雄季刊誌「翔」・第76号】で、自らを評して「トップダウンからボトムアップへ」と「対症療法から持続可能性へ」と誇らしげに語っているのだ。
デジタル庁がもっと大きな絵を
改めて、いうことでもないのかもしれないが、霞ヶ関・中央官庁の問題は、組織における「縦割り」の蔓延である。例えば、「経済産業省が所管する電力用ダム」や「農水省が所管する農業用水用ダムなど利水ダム」は各省の縦割りの下、あらかじめ水位を下げる事前放流を実施せず、水害対策にほとんど3割を活用してこなかった。これを菅義偉前首相が台風などがきた時は一元的に管理できるようにしたのだ。ボトムアップ型の政策決定を表明する岸田首相が、省庁をまたぐ利害調整などをうまくやることは絶対にできない。例えば、省庁に「横串を入れる」ことを期待された「デジタル庁」の迷走などは象徴的だろう。官邸が強いトップダウンで押さえつけないことには、横串など無理だ。
早速、萩生田光一経済産業大臣は「デジタル庁がもっと大きな絵を描いてくれるかなという気持ちもあったが、今のところそういう動きもない」と1月の記者会見で発言。経産省が独自に社会インフラのデジタル化の工程表をつくると表明した。
参院選を前にして各党が公約を発表
現在、岸田政権の実態は、自分からは課題解決を言わない「対症療法」的態度をとり続けることでメディアからの批判を避け、高い支持率を維持する一方で、自民党内の有力な権力者たちが好き放題言い放つのに対して丸呑みしているだけに過ぎない。岸田首相や首相の側近、木原副長官の動きを見ても、「実」は完全に手放し、「名」だけもらえるよう汗をかいているだけだ。
しかし、対峙するはずの野党に政権担当能力は全くない。参院選を前にして各党の公約が発表されたが、どの政党も相変わらず「ストック(貯金・債券・株・不動産など)課税」(維新)、「金持ち増税」「バラマキ」(全野党)を列挙しただけのものとなった。であるならば、自民党内で力のある政治家に、岸田政権をピリッとさせてもらうしかないということなのか。全国紙政治部デスクはこう期待を込める。