居酒屋便所の”人生訓”に噴飯するフランス哲学者…「国家が老後も保障できぬなら共同体を組む意味がない」

フランス滞在歴が長かった哲学者の福田肇氏は、「フランス人は日本人が有給休暇を取りづらいことを理解できない」という。ヴァカンス好きのフランス人は日本人をどのようにみているのか。フランスと日本の労働観・人生観の違いについて、独自の観点から考察するーー。
24時間戦えますか?…まだその名残が残っている残念な日本
「24時間戦えますか? ビジネスマン、ビジネスマン、ジャパニーズ・ビジネスマン」
これは、1980年代にテレビコマーシャルで頻繁に流れて話題になった、ある栄養ドリンクのCMソングである。当時、「ビジネスマン」を生業としている人たちの中には、残業して22:00退社、電車に揺られて23:00帰宅、夕食をチンして食べて風呂入って寝る(もしくは帰らないで近所のカプセルホテルに宿泊)、なんてサイクルを繰り返している人も少なくなかった。週休2日制もまだ確立していなかった。今であれば「ワーカーホリック」とされると思しき行動が、それを支えると自負する栄養ドリンクの名のもとに、むしろ誇らしい闘志の表現として、ビジネスマンたちのアイデンティティを形成していたのである。
「働き方改革」が提唱されてすでに久しい。こんにち、「24時間戦う」ことを美徳とする風潮はさすがに薄れてきた。とはいえ、日本の社会が、有給を取得したい期間に取得し、それを完全に消化し、毎日定時に帰ることを、労働者の「当然の権利」として実質上認める社会であるかどうかは疑わしい。だいたい日本の有給取得率は50%で、世界最下位である(2017年、旅行会社エクスペディア・ジャパンの調査による。ちなみにフランスのそれは100%)。