2025年3月期は「増収増益」。豊富な経験と実績を武器に成長し続ける【日本トランスシティ】(9310)

みんかぶ編集室
公開)

 独自の観点で注目企業の価値を分析するMINKABUマトリクス企業分析。今回は、129年の歴史をもつ老舗の総合物流企業、日本トランスシティ(9310)を2025年3月期3Qベースで分析します。

Key Point

  • 129年の歴史がある豊富な経験と実績を持つ総合物流企業
  • 中部地区・四日市港を中心に主要都市主要港に拠点を展開。世界では11か国25か所に拠点を持っており、国際物流の分野でも高い競争力を持つ
  • 化学品や自動車部品などの物流において存在感を発揮。国内外の多種多様なニーズに応える包括的な物流サービスが強み

目次

日本トランスシティってどんな会社?

 日本トランスシティ株式会社は、三重県四日市市に本社を構える1895年創業、中部地区最大手の総合物流企業です。倉庫業、港湾運送業、陸上運送業、国際複合輸送業等、多岐にわたる物流サービスを提供し、国内外の物流ネットワークを活かして成長を続けています。

 多様な機能を有しつつ、専門性の高い分野への対応、グローバル展開、DX(デジタル技術)推進、環境対応の強化により、独自の競争力を発揮しています。

総合物流を“四日市から世界”へ展開

 売上の大部分を占める総合物流事業は、国内外の多様な物流ニーズに応える包括的なサービスを提供しています。
国内では中部地区・四日市港を中心に主要都市主要港に拠点を展開しています。世界では11か国25か所に拠点を持ち、陸・海・空を組み合わせた国際物流の最適化に取り組んでいます。倉庫保管、輸送、通関手続きを一貫して提供し、越境輸送のスムーズな運用を実現。各国の法規制に対応した輸送体制を確立し、国際物流の分野でも高い競争力を持っています。

 昨年末には、タイにある倉庫を増設し、タイの現地法人の機能強化を進めました。このような積極的な海外拠点の機能強化にも取り組んでいます。

“業界特化型”の専門物流が強み

 同社は、化学品・自動車部品・消費財・精密機器といった業界に強みを持ち、それぞれの特性に応じた安全で効率的な物流を実現しています。危険物の適正管理や、必要な量だけを発送する「Just In Time (JIT)方式」への対応により、企業のグローバル・サプライチェーンを最適化し、無駄のない供給体制を構築しています。
特に、化学品物流に強みを持ち、危険物倉庫の運営や専用輸送ルートの確保に注力。厳格な管理基準を満たすことで、業界内での信頼を確立しています。また、精密機器の輸送では、特殊梱包技術や専用輸送ルートの確保により、電子機器や精密部品の安全な輸送を実現しています。

 さらに、AIやLOTを活用した倉庫オペレーションシステムや輸送ルートの最適化により、迅速でコスト効率の高い物流体制を構築。長年培った経験を活かし、機能的な設備と厳格な管理体制のもとで、多様なニーズに対応しています。

 多種多様な貨物を取り扱うノウハウと実績を強みとし、「倉庫」・「港湾」・「陸上輸送」・「国際輸送」の各セグメントの売上高もバランスよく構成されています。

“物流を通じた社会貢献”が会社を成長させる

 昨年「南海トラフ地震臨時情報が発表されたことに伴い、防災関連商材の需要が急増。同社はエッセンシャルワーカーとして、消費財物流センターを緊急体制で稼働し、非常時でも物流を絶やさないことで社会基盤維持に貢献しました。

 同社の理念は“地域とともに生き、広く社会の発展に貢献する”ことを掲げています。それは、中期経営計画にも含まれており、持続的な成長を維持するうえで、社会貢献は欠かせないものと考えています。

日本トランスシティの企業価値を4つの独自視点からチェック!

 次に、日本トランスシティの企業価値について分析していきましょう。評判(価値)、実利(実績)、共感(志向)、姿勢(ESG)の4つの観点からチェックしていきます。

 各分析の結果はこちら。

1、評判価値

・2025年2月18日現在の時価総額は、661億3500万円。個人および中小型株ファンドがターゲットとする時価総額レベル

・PERは10倍以上の13.58倍、PBRは0.77倍(※2025.03.14時点)と1倍を割れと割安水準に

2、実績(業績)価値

・2025年3月期の通期の業績予想では、売上高は1,240億円と1.2%UP。経常利益も78億円と6.1%UPで「増収増益」を想定

3、共感(志向)価値

・明確な中期経営計画とKPIを設定。グローバル総合物流企業として、持続成長に向けた高い可能性が感じられる

4、姿勢(ESG)

・環境面における削減数値をしっかりと開示し、サステナブル経営に前向き

・管理職における女性比率は2.6%となっており、業界特性もあるが改善に期待

 それでは各項目について詳しく見ていきましょう。

PBRは「割安」水準へ。特産品がもらえるユニークな優待制度も

 2025年2月18日現在の時価総額は、661億3500万円と、個人および中小型株ファンドがターゲットとする時価総額レベルにあります。所有者別株式数比率(2024年3月31日)は、個人が37.7%ですが、外国人が6.24%と10%未満になっており想定の範囲内といえます。

 PER(株価収益率)は、13.58倍と10倍超えの数値となっています。また、PBR(株価純資産倍率)は1倍が基準として見られることが多いですが、0.77倍(※2025.03.14時点)と1倍割れの状態に。改善策として、自己株式の取得など、資本コストと株価を意識した企業価値向上に努めていることから回復が期待されます。株価が資産価値より低く評価されているため、「割安」とみることができそうです。

 また、2025年3月期の配当性向は、前期の17.9%から40.5%(予想)へ大幅アップしています。また、株主優待制度では三重県産の特産品などの充実に努めています。

多様な機能を有しつつ、専門性の高い分野にも力を入れた物流サービスの拡大で増収増益

 売上高は941億5400万円で前年同期比1.2%UPの増収。主に、物流センターの安定稼働や、半導体関連材料等の取扱い拡大で「増収」しています。
また、利益のすべてで大幅に「増益」しており、最終利益は23.0%と高い数値になっています。2025年3月期の通期の業績予想でも、売上高は1,240億円と1.2%UP。経常利益も78億円と6.1%UPで「増収増益」を想定しています。

 自己資本比率は50%以上をキープしており、財務の健全性レベルは高いと考えられます。また、中計ではROEは2026年3月期までに6.0%以上を目指していますが、2024年3月期は5.7%となっており、株主資本コスト上回るROEの確保が期待されています。

分かりやすい企業姿勢と、グローバルな視点をもつ明確な事業戦略が強み

 中期経営計画では、「Grow with the Next Value(~価値を育み、新たな高みへ~)」をスローガンにし、明確なKPIを設定しています。売上高を1,225億円(実績)から1,300億円以上、経常利益を73億円(実績)から80億円以上などを目標に、グローバル視点をもって、安定的な物流サービスと、新たな活動分野を広げていく戦略です。

 一部、外的要因として市場動向が不透明な部分もあるものの、中期経営計画で掲げる目標に向け推進中です。

サステナブル経営に積極的。人的資本におけるKPIもしっかり設定

 環境に配慮した事業推進とカーボンニュートラル社会の実現に取り組むとともに、『社会への貢献』を前提とし、地域貢献、環境対策、人的資本の充実などを含めたESG経営を重視。気候変動に対するTCFD提言への賛同を表明しており、環境面における削減数値をしっかりと開示しています。

 管理職における女性比率は、女性が少ない業界特性もあり2.6%と低い数値となっています。しかし、「人的資本」を重要視する経営という面で、将来的に目指す姿に向けて、KPI設定に加え、職場環境の整備や人事制度の見直し等、実際の取組みも進めており、課題解決への積極的な取組姿勢を感じられます。

 社外役員は、12名中7名で58.3%と半数を超えており透明で公平性を担保したガバナンス体制となっています。女性役員が1名で8.3%の状況であるため、人財の多様性の観点から改善が期待されます。企業姿勢自体は、サステナブル経営を推進する意識と実態が伴っているといえそうです。

 グローバル視点をもち、物流サービスを拡大させている日本トランスシティ株式会社(9310)をご紹介しました。

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