“無期雇用”として採用した教員を1年で解雇する東北大の是非……文科省「労働契約法に照らして望ましくない」

日本で研究者の道を歩むためには、多くの場合まず非常勤のポストに就くことを強いられる。政府は研究者の雇用を守るために5年あるいは10年で無期雇用権が得られる法律を制定したが、ジャーナリストの田中圭太郎氏によると、法律を逆手に取って「雇い止め」の材料として使う大学・研究機関も少なくないという。中でも強硬な姿勢を見せ続けているという東北大の現状を、田中氏が明らかにする――。全3回中の3回目。
※本稿は田中圭太郎著『ルポ 大学崩壊』(筑摩書房)から抜粋・編集したものです。
第1回:親族に仕事発注…労基が是正勧告した山梨学院大理事長「質の高い教育だけで給料上がらない」研究者教員は”いらない”
第2回:“故安倍晋三のおひざ元”下関市立大で外国人研究者が市長の一存で突然学長に… 不可解人事と下村博文の影
特定秘密保護法の裏で採決された法案
2012年、それまで1年ごとの契約だった有期雇用の労働者について、同じ事業所で5年以上継続して勤務すれば無期雇用権が得られる改正労働契約法が成立した。首都圏の多くの大学は2018年春までに、5年以上勤務している非常勤職員の無期雇用を認めた。
また参議院本会議では2013年12月、議員立法として提案されたある法案が可決され、成立した。その法律は「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」。
非常に長い名前だが、わかりやすく言うと、大学や研究開発法人で働く有期雇用の研究者や教員については、無期転換申し込み権が発生するまでの期間を、労働契約法で定められている5年から10年とする特例を定めたものだ。
この法律はその後、研究者については「科学技術・イノベーション活性化法」、大学教員などについてはいわゆる「任期法」と一般的には区別されている。