「なんで木更津!?」移住者急増に苦笑いする木更津高卒タワマン民、船橋・市川民…「お前ら全員千葉県民だろ」の声

「木更津キャッツアイ」に何度も助けられ、何度も苦しめられた……。房総半島南部への心の距離は三浦半島よりも遠い。窓際三等兵の連載「TOKYO探訪」第11話は、最近何故か移住者が増えている木更津が舞台だ。木更津から逃げた人も、木更津に移住した人も、みんながみんな何かを抱えている――。
房総半島に対する陰湿な好奇心
「木更津って初めて来たけど、良いところだね」「でしょ、みんなも東京で消耗してないで引っ越してきなよ!」。バーベキューコンロを囲み盛り上がる大学時代の友人たち。芝生では打ち解けた子供たちが走り回っている。18歳で捨てた故郷が手放しで称賛されている中、僕は一人、黙って下を向いていた。
「木更津に家買ったから、遊びに来てよ!」。ゼミ代表だったケンジからグループLINEが来た時、思わず声に出してしまった。「なんで木更津!?」。同期の皆も同じ気持ちだったようだ。「みんな、家族連れてケンジんちに遊びに行こうよ!」お調子者の原田の投稿からにじみ出る、房総半島に対する陰湿な好奇心。
だだっ広い空、濁った海、煙突から伸びる煙。木更津を出て東京に行く、と決めた20年前から何も変わっていない。ずっと、この街から出たかった。中学ではヤンキーとスポーツ推薦の奴らが偉そうにしていた。多少勉強ができるからと木更津高校に行っても、街では拓大紅陵や木更津総合の不良を避けて歩いた。
高速バスの中で得られた「人生最大の開放感」
社会人野球の選手として活躍し、引退後は君津の製鉄所で働いた父。地元出身で父と結婚後に寿退社し、ジョイフル本田でパートをしていた母。京葉工業地帯のもたらす繁栄を満喫した両親世代は気が付かなかった、一人息子が抱えていた閉塞感を。早稲田に進学し、高速バスの中で得た、人生最大の開放感。
「フルリモートの会社で流行ってるんだよ、木更津移住」。デカイ肉をひっくり返しながら、ケンジが胸を張る。「出社する時は高速バスターミナルに車停めて、東京駅まで1時間だし」。感心する友人たち。コストコ、アウトレット、観覧車。彼らの目に映る、キラキラの木更津。ピカピカの新興住宅街。