竹中平蔵「日本人はもっと頑張れ。もっと働ける。人材として劣化している」…これから儲かる職業は何かを徹底解説

みんかぶプレミアム特集「新NISA・新副業で1億円」、第一回は経済学者の竹中平蔵氏が副業の重要性を語る。労働時間が制限され、企業の生産性が上がらない日本ではなかなか給料が上がらない。竹中平蔵氏は「結局、個人事業主になるしかないのが今の日本現状だ」と語る。個人事業主と働く分には労働時間に制限はない。「副業はシェアリング・エコノミーの究極です。人生の幅が広がることにもなるので、すごくいいことだと思います」。低成長社会における日本人の行く伸び方とはーー・
目次
日本人は劣化しています
日本人という人材が劣化しています。例えば海外に留学する人が減っていることをご存じでしょうか。2000年に4万5000人もいた米国大学に通う日本人留学生数は2020年には1万人台まで落ち込みました。
先日、ドバイなど中東地域にいってきましたが、彼らはやがて石油がなくなるということを前提に生きていきます。彼らの生命線である石油がいつかなくなるが故、一生懸命投資をしています。世界中に投資してその収益で将来食べていけるようにしたいというのが彼らの狙いなのですが、もう1つ重要な投資先があります。人です。彼らはもの凄い額の人的資本投資を行っています。
人的資本投資とは国や企業が人材を資本として捉えて、その価値を最大化するための投資のこと。従業員の研修やリスキリングなども含まれます。人への投資が将来的にみて大きなリターンを得られると認識しているからこそ、ドバイなどでは多くの資金を投入しているということです。
日本人は勤勉でも長時間労働をしているわけではない
政府が優秀な人達にポンと金を出して、海外の有名大学で勉強させ、学位をとらせ国に戻す。これが明確な国家戦略になっているのです。残念ながら日本はそれをやっていません。
例え留学経験者が少なくなっても、「日本人は勤勉だ」「マジメさを海外は評価している」「長時間労働している」と主張する人もいるかもしれません。たしかにかつてはそういうイメージも、かつてはあったのでしょう。
しかし、今日本には2000兆円の個人の貯蓄があるとされていますが、アメリカは1京6000兆円です。日本の人口がアメリカの3分の1であるのに対し、資産は8分の1になっています。2000年と比べて日本は約1.4倍なのに対し、米国は約3.2倍なっており、その差は広がる一方です。90年代には日米の人口比よりも貯蓄比の方が低かった時代もありました。
つまり、そういうことです。かつての日本人はたしかに凄かったのです。たくさん働き、たくさん貯蓄を築き上げました。しかし今の日本人は世界的に見ると、長時間働いているわけではありません。OECDの全就業者の平均年間実労働時間(2022年)によると、日本は1607時間に対してアメリカ1811時間、韓国は1901時間でした。そもそも日本は年間16日と祭日も多く、この数字はG7最多です。
健康経営銘柄にみる政府の勘違い
経産省ら主催する、社員の健康の名のもとに労働時間の抑制などに取り組んだ企業を表彰する「健康経営銘柄」を見ても、日本では長い時間働くことをよしとしていません。
かつては日本からたくさんイノベーションも生まれていましたが、今の短い労働時間でイノベーションは生まれるのでしょうか。厳しい言い方かもしれませんが、寝ずに頑張るような人がイノベーションを起こすのではないでしょうか。イノベーションとは簡単に呼び起こせるものではないのです。
経産省は健康経営銘柄を表彰することが「結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます」といいますが、失われた30年を経験した日本が第4産業革命を迎えているなか、今、国として本当にやるべきことなのでしょうか。
日本人の生活が苦しくなっているのは当然のこと
今、日本では実質賃金が17カ月連続で減少しています。つまり物価の上昇に対して、国民の給料がそれに見合う上がり方をしていないということですが、はっきりいってそれは当然のことです。先述した通り、人的資本投資が行われていない(生産性が向上していない)上、労働時間が短いからです。それを根拠に生活が厳しくなっていると主張する人もいます。たしかに大変なのでしょう。円安で物の値段があがっているのですから。
給料を上げるためには生産性を上げるか、労働時間を増やすか、どっちかしかありません。しかし残念なことに今の日本にはどっちもないのです。
では、あなたが自分の給料を上げるにはどうしたらいいのでしょうか。どうやったらこの状況から抜け出せるのでしょうか。
サウジアラビアの軌跡、なぜ超イスラム保守国は急成長を遂げたか
もしあなたが会社員なら、自分の給料を上げるためには会社の生産性を上げないといけません。
そのために、まず国としてできることとしては、「規制を除く」ことです。日本では「あれやったらいかん、これやったらいかん」が多すぎます。それをなくしていくことが一番生産性を上げるのです。
規制緩和が重要だと証明する典型例がサウジアラビアです。サウジアラビアは2016年に女性の雇用拡大を後押しする「ビジョン2030」を発表し、これまで運転免許すらとれなかった女性に多くの権利を与え、女性の労働参加比率を高めました。その結果、同国では所得が増えました。ここ5年でまるで違う国かのような変化を遂げたのです。
ただ、今の岸田政権でそう物事がすぐに動くとは決して思えません。官僚主導の政権ゆえ、どちらかといえば規制は更に増える方向にあるのではないでしょうか。
働きたくても働けない日本でどうすればいいのだ
国が規制緩和に向けて動いていないだけでなく、雇用の流動性が著しく損なわれている日本では、人的資本投資も活発になっていません。これでは、一労働者の立場では、もはやどうすることもできないことかもしれません。企業の生産性が上がらない分、たくさん働こうとしても、それはそれで法律的になかなか難しいのです。
ですので、労働時間に制限のない個人事業主になるしかない、というのが現状です。現状の賃金に不満を持っている会社員は副業などに時間をかける必要がでてきます。
副業はシェアリング・エコノミーの究極です。人生の幅が広がることにもなるので、すごくいいことだと思います。
ではなんの副業を今するべきかのか、竹中平蔵が選ぶ儲かる職業
私も大学を卒業して日本開発銀行に就職したころ、「自分の本を出そう」と決意しました。一冊の本を出すには、400字詰めの原稿用紙で300枚ほど書けば達成します。そうすると、1日3枚書けば100日で本が書けると逆算しました。それからは、上司から飲み会に誘われても、毎日家に帰ってから1日3枚とにかく書きそうやって当初の予定通り100日で自著を完成させました。
いずれにせよ、個人事業主として稼ぐ鍵は、生産性を上げるために勉強といった自己投資をすることです。生産性が上がれば得られるリターンも大きくなります。生きている時間が有限であることを踏まえれば、当然取り掛かるべきでしょう。例えばAIの専門家は今後必要となってくる職業です。お金を払ってでもAIの勉強をすれば、将来的には金銭的リターンが大きくなることが予測されます。サイバーセキュリティ、データサイエンス、アートなどの分野も同様です。
さて、チャリー・チャップリンは「人生に必要なのは、夢と勇気とサムマネー」と言いました。重要なのは、一歩踏み出す勇気で、お金は少しあればいい。ちょっとしたことに不満を持つのではなく、自分を変える勇気を持つことが、豊かな人生を送る鍵なのではないでしょうか。