フランス哲学者「なぜフランス人は源氏物語を愛してやまないのか」…勝手にスピンオフ版を制作!90年かけて完全新訳版を制作中「光る君へ」

女優の吉高由里子が主演を務める2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』は、『源氏物語』の女流作家・紫式部の生涯の物語。第3話の世帯平均視聴率は12.4%だった。
さてこの『源氏物語』がフランス文化に大きく影響を与えているということはご存じだろうか。フランスと日本の文化的交流は切っても切れないものだが、フランス事情に造詣が深い、フランス哲学者の福田肇氏は「『源氏物語』は、今でも多くのフランスの知識人に評価されている」というーー。
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『源氏物語』の恋愛の機微を読み解くには、厳格な文法訓練が必要だった
「高校生に恋愛なんてわからないからな」。
それが、私が高校時代に履修していた「選択古典」の老教師の口ぐせだった。
じっさい、彼は、授業で生徒をひとりずつ指名し、『源氏物語』–––受講生は一年間、それを読解した–––を一文ずつくぎって朗読させ、仔細な品詞分解と省略された主語の補完と現代語訳だけを命じた。内容にはまったく立ち入らなかった。
「高校生に恋愛はわからない」という持論のもと徹底的な文法解析のみに終始したこの授業が、しかし、私にとってはもっとも想い出に残る名授業のひとつとなった。彼の厳格な文法的修練を経なければ、私は『源氏物語』の難解な文章を解読する力を得ることはできなかっただろうから。そして、老師の指摘が確かならば、私を難儀させた原文の複雑な文法的構成よりも、「恋愛」の機微はいっそう不可解なものなのか、と私は嘆息をもらすことを余儀なくされた。