アイドル経済学者が語る「これから日本のおじさんがドハマリするアイドルの正体」…不景気ではアイドルが栄え、好況ではアイドルは衰退するワケ

南沙織、松田聖子、モーニング娘。、SPEED、AKB48グループと、女子アイドルは常にその時代を象徴する存在としてお茶の間をにぎわせてきた。しかし、ここ最近の日本では、そんな「アイドル」の存在が欠けている。『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)などの著書がある経済学者の田中秀臣氏によれば、女子アイドルの盛衰と景気をさかのぼってみると、現在の日本は極めて特殊な状況にあるという。みんかぶプレミアム特集「さよなら、テレビ」第3回。
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不景気ではアイドルが栄え、好況ではアイドルは衰退する
女子アイドルの盛衰と景気は密接に関係している。不景気ではアイドルが栄え、好況ではアイドルは衰退する。現在の日本はコロナ禍を脱出した経済の再起動と、同時に物価高による消費の不振という両方が重なり、景気は微妙な段階にある。ただし実質経済成長率はこの数年高めで推移している。そのためか新しい国民的アイドルが存在するとはいえない。だがアイドルの世界では、新しい動きがある。これらの点について以下で明らかにしていこう。
このアイドル景気循環論について、私はかって『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』(2013年、主婦の友社)で詳しく解説したことがある。同じ問題意識から上野泰也氏(みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)が『トップエコノミストの経済サキ読み術』(2015年、東洋経済新報社)で、アイドル景気循環論を実証的に論じている。私と上野氏は、日本経済に対する見方は異なるが、このアイドル景気循環論については意見を同じくし、対談の場でこの問題を深く議論したこともあった。
なぜ不景気ではアイドルが栄え、好況ではアイドルは衰退するのだろうか? 不況期には、消費意欲が減退して内向きの志向になるのに対して、好況期になると疑似恋愛の対象になるアイドルよりは、生身の人間、リアルな恋人へと関心が向かうというのがひとつの仮説である。