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トランプ経済政策に大異変…識者「第一次政権とは全然違う」社会政策・イデオロギーを重要視!超インフレ時代がやってくる

 米大統領選挙は共和党ドナルド・トランプ元大統領の勝利で終わった。もともと拮抗しているいわれた民主党カマラ・ハリス現副大統領との闘いであったが、ふたを開けてみればトランプの圧勝であった。さて、トランプは一体どんなアメリカを目指すのだろうか。それに伴い日本は何をすることになるのだろうか。我々の生活はどう変化していくのか。アメリカの政治情勢に詳しい国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏が全3回にわたって解説していく。第1回は経済政策についてだーー。

目次

社会政策やイデオロギー的な要素が重視される

 トランプ政権の閣僚指名人事を見る限り、経済政策は波乱万丈なものになる可能性が高い。基本路線は共和党の伝統的な規制廃止及び減税・歳出削減を求めるスタンスであるが、アメリカファーストやリバタリアンの色彩がブレンドされた複雑なものになるだろう。

 アメリカファーストの象徴は「関税政策」である。トランプ氏は既に中国、カナダ・メキシコ、そしてBRICs諸国に対して、関税政策による脅しを口にしている。ただし、その理由ついて、麻薬、移民、犯罪、通貨覇権など、実は経済的な動機だけでなく政治的な動機が語られている。また、日本製鉄によるUSスティール買収反対なども打ち出しているが、その根幹は米国の鉄鋼産業に対するノスタルジーであり、経済的合理性に基づく主張ではない。

 つまり、第二次トランプ政権の関税政策の根拠は、社会政策やイデオロギー的な要素が重視されていると言えよう。これは第一次トランプ政権時の関税が安全保障を建前都市、不公正な貿易慣行・知的財産窃盗の是正をメインの主張としていた状況からの大きな変化だ。トランプ氏が指名したスコット・ベッセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、ジェイムソン・グリアUSTR代表、ピーター・ナバロホワイトハウス上級顧問もトランプ関税に賛意を示しているが、今後実務においてどのようなロジックが主張されるか非常に興味深い。いずれにせよ、関税政策に勝者はいない。関税対象国だけでなく、米国の消費者にも負担を強いるとともにインフレ率を再び引き上げる要因となるだろう。

米国に物価上昇圧力をもたらすことに

 また、トランプ氏が1月20日の初日から積極的に進めようとする不法移民対策は、関税政策と同様に米国の労働需給を圧迫するため、やはり米国のインフレ率を高める要素となる。国土安全保障長官に指名されたクリスティー・ノーム・サウスダコタ州知事、国境管理責任者トーマス・ホーマン氏らは、不法移民に対する最強硬派の人物として知られており、トランプ氏の方針を確実に実行するだろう。

 もちろん自国内に不法移民が溢れている現状は明らかにおかしなことであるため、その異常な状態を是正することに何らおかしなことではない。しかし、彼らが米国の農場などで働く過酷かつ安価な労働力となっていることも確かであり、それらを追い出すことはインフレ要因となることは自明だ。

 上述の通り、アメリカファーストに基づく関税政策・不法移民対策は米国に物価上昇圧力をもたらすことになる。仮にトランプ政権が関税政策や不法移民対策を予定通り実行する場合、その他の政策でインフレ対策を同時に実行することは不可欠だ。

 トランプ政権下でのインフレ対策としてはエネルギー開発と政府支出の抑制が注目される。

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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